第337話 翔さんより先に (叶・桜)
ショーが城に訪問する当日。
カナタとサクラは朝、早めに起きて準備をしていた。
「よし、じゃあ行こうね」
「うん」
そして、準備を終えた二人は互いの手をとり、瞬間移動を使って城の前まで飛び、顔パスで城内に入った。
カナタとサクラはショーよりも先に城に行くことにしていた。前日のうちに、デイスなどに城に行くとは伝えている。
城に着いた二人はデイスに来たということを伝えた後に、とりあえず、あの愚王が酷いことをしてないかなどを確かめるため、キリアンとクルーセルがいる場所を探知で探すことにさた。
どうやら、それぞれの所属している団の練習場にいるようであった。
「サクラ、透視してみて」
「ん」
サクラは城内から外の練習場を覗き、彼らの姿を確認する。キリアンもクルーセルも、普通に兵士達の練習を見ているようだった。
「心配する必要はなかったみたい」
「そうね」
ローキスの性格上、キリアンとクルーセルに何か度が過ぎた罰などを与えるのではないかと危惧していたカナタとサクラは安心し、デイスにメッセージで伝えてから、玉座の間に行く。
尚、ローキスは本来、二人が想像していた通りのことをしようとしていたが、この国の大臣や宰相達らが反対したため、行われなかったのだった。
玉座の間に来た二人は、ローキスに迎えられる。
「ど、どうした、賢者達よ。デイスから訪ねてくることは聞いていたが…な、何の用だ? 城の生活に戻りたくなったか」
そう言っているローキスの声はすこしビクビクしているようである。彼にとって二人が強くなりすぎたことは、すこしトラウマになっていた。
「いえ、違いますよ」
「そ、そうか。なら何の用だ? 今日はある行事があってな、僕はあと1時間ほどしたら、用事があるのだ。用件があるなら早く言え」
「そのことについてなんですよ」
ローキスは訳が分からないような顔を一瞬だけ浮かべた。すぐに真顔に戻り、カナタが言ったことについて問う。
「どういうことだ? 今日来るのは、えーっと…たしか………おい、お前」
側にいたメイドの一人を一睨みする。
そのメイドは無言でぺこりとお辞儀だけを返す。
実際は、そのメイドからメッセージで内容を聞き出したのだが。
ローキスは、さも、きちんとわかっていたかのように振る舞いし直す。
「そう、レッドイヤーとかいうクソダサい名前のチームの、ショーとその獣人の奴隷の2人を……えーっと……そう、SSランクであると認める儀式があるのだが」
「はい、その、ショーという人についてなんですよ。ちょっと聞いて欲しいことがありまして」
「ほう、なんだ」
カナタはサクラより一歩だけ前にでて語りだす。
「あの、ローキスさん。いえ、この場に居る誰かでも良いです。俺達が皆さんに初めてお会いした時、『もうひとり居る』と、言ったのを覚えてる方は居ますか?」
「言ってたか、そんなこと?」
1番近くで聞いていた本人は何も覚えていないようだ。仕方なしに、それについてはデイスが答えた。
「ホー、そう言っていたのは気にはなると、ローキス様、あの日、おっしゃってたではありませんかの?」
「お、おおう? そ、そうだったな! つまり…そうか、まさか!」
ローキスは椅子から立ち上がり、誰にでも予想がつくようなことを、自慢気な顔でこう言った。
「そのもう一人というのがショーという男のことなのだな!」
それに対して、カナタは冷静に答える。
「はい、そうです!」
「そうかそうか、そう言うことか。だが、ちょっと待て、おいデイス」
ローキスはまた座る前に、玉座の横に立っているローキスを睨みつけ、そして胸ぐらを掴んだ。
「お前…賢者は2人だと言っていたよな?」
「……申し訳ございませぬ」
「そうだな。このことに関しては後に処罰する。…しかし、そうか、だがこの間言っていた方の予言は当たりか……ふん」
「……ッ」
ローキスの胸ぐら掴んでいない方の手である左手が、デイスの白っぽい肌をした顔面を思いっきり殴る。
デイスはそれを黙って受け、壁まで吹っ飛んだ。
ローキスは玉座に座り直した。
サクラは瞬時にその場から、デイスに回復魔法をかけていた。
そして、ローキスに抗議しようとしたが、カナタはそれを呈した。
何もなかったかのように、ローキスは話を進める。
「なあ、カナタ。つまり、ショーも賢者だということで良いのだな?」
「ッ……はい、そうです」
「そうか、それならば予定よりももてなしてやろうではないか、なあ?」
ローキスはメイドや使用人らの方を、意味あり気に見た。彼らはそれが何を示すかを察し、急いでその場から離れていった。
残ったのはカナタとサクラと、数名の兵士と、壁際でぐったりとしているデイス、そしてローキスだけとなった。
「お前ら、重要な報告を感謝しよう。ゆえに、お前らもSSランクの認証式に参加すると良い。……軽いものだがな。残りの時間は…お前らが泊まっていた部屋をそのままにしてあるから、そこでイチャついてると良い。では、去れ」
「はい…」
カナタとサクラはその言葉通り、デイスを気にしつつも自分らにあてがわれていた部屋に行った。
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