第283話 大きな穴 (翔)

「なあ…リル。ありゃー、俺が知ってる限りだったら…ダンジョンだな」

「だ…ダンジョンかな? 何かが落ちてきた跡っていう可能性も」

「あるよな…とりあえず見てくる」

「ち、ちょっと待って。私が____」



 リルは待てと言ったが、待つとどっちが穴を見に行くかで話し合いになりそうだから、悪いとは思いながらも無視してそれを見に近づいた。



「…御主人!」


 

 結局、リルもついてきちまったがな。

 俺はその穴を覗き込む。俺に続いてリルも覗き込んだ。

 中はまるで大理石で出来ているような床や、不自然な配置の飛び出てる岩などが見える。



「ダンジョンだったな…」

「まさかこんな所にダンジョンがあるなんて。………ど…どうしようか、御主人」



 マジでどーすっかな…。正直言うと、入ってみてえ。

 こういうのって案外、ワクワクする。

 しかしだな…今、俺達は遭難中だからな…。



「リルはどうしたい?」

「私は…御主人が言った通りにするよ」

「そうか。だがなんにせよ、選択肢は…入るか、無視するかのどっちかしかない」



 俺達は今、ほんの少しだがこの遭難生活に余裕はある。生活自体にはな。それだけを見ると入っても良いかも…なんてな。



「……入るか? 無理っぽかったら退出すれば良いんだし、入ってみるだけ損じゃねぇ。それに俺は既にBランクは倒せる。Aランクもおそらく、なんとかなるだろうから……」

「わふぅ! なら入ろうよ御主人。ダンジョンひとつクリアするだけで大金持ちだよ!」



 大金持ちか…。

 確かにダンジョンを出て、この森からも出られれば大金持ちになれるだろうな。

 決まりだ。これはもう入るしかねーだろ。



「よし…リル! 入ろう」

「わかったよ、御主人」



 俺達はダンジョンについての知識はほとんどねぇ。

 だから今できるだけの準備は不十分かもしれない。

 それでもしっかり準備はした。

 道具の準備も心の準備もな。



「入るぞ…」



 俺とリルはそのダンジョンへと続く階段に足をつけた。

 降り、大理石できてるみてーな地面に着く。その途端、頭の中にメッセージが浮かんできた。

 


【ユーダリルの谷底の「哀しみ」のダンジョン に 入りました】



 こういうの出てくると…いよいよって感じがするな。

 

 面白い事に、中がまるでどっかの宮殿みたいになっている。主に大理石でできている床に…天井には豪華な鷲の絵。俺達を吹き飛ばしたヤツに似てる気がする。

 あとステンドグラスもあり、そこから光が射している…地中なのにな。


 んで、大きな入り口みてーのが5つと、入ってきた場所から正面に門のような扉がひとつ。


 ひとつひとつの入り口の上にはいろんな色の宝石みたいな物が埋め込まれている一方、扉の上には何もねぇ…いや、黒く濁っている5つ何かがある。

 さらに扉の中央にもなんか埋め込まれてるみたいだが、それも黒ずんでてよくわかんね。


 今気付いたが、天井の鷲の絵の下。つまりこの宮殿みたいな場所の中央にもタイルか…大理石かはわかんねーけど、模様みたいななのがでかでかと存在している。


 こりゃあ…あれだな、5つの部屋に入っていって、そこにいるヤツを倒したりミッション的なのをクリアしていくことで、でかい扉の上のが満たされていき……全部の部屋をクリアしたあかつきにはアレが開いてボスと戦える……て、感じかもな。雰囲気的に。


 隠しルートとかもあるかもしれねーし、注意深く散策しないとな。

 

 ……探知は使えないみたいだな。



「リル、あの5つの部屋の奥になんか居たりするかもしれない。どれから見ていく?」

「……」

「おい、リル?」



 なんか上を見たまま固まってる。

 その顔が綺麗な物を眺めてるみたいなんだ。

 もしかしてステンドグラスを初めてみたりしたのか?


 とりあえず、肩を叩いてみる。



「わふうっ!? あ、御主人か。ごめんなさい、なんかちょっと綺麗でね…あの…色のついたガラスとか」

「ああ、確かにそうだな。で、おそらくあの5つの部屋の奥になんか居るんだが…どれから入る? はっきり言ってどれでもいいんだぜ」

「そうか…なら、良い方法があるよ!」



 そう言うとリルは宮殿の真ん中まで歩き、そこで何かを取り出した。……棒切れだ。



「なにをするだ?」

「この棒に行き先を決めて貰うんだよ。この真ん中にこの棒を立てて倒れた方に行くのさ」



 なんつー原始的な方法だ。

 しかし…まあ最善だな。



「じゃあ倒してみてくれ」

「うんっ」



 リルはその棒を倒した。

 なんか紫色の宝石がついてる入り口の方を向いている。



「よし、あそこだよ。御主人!」

「ああ、行こう」



 俺とリルはそこへ入った。

 

 その先は装飾品の類が一切ない殺風景な部屋。

 光源がどこにも無い筈なのに、なぜか明るい。


 そして部屋の真ん中には、1匹の魔物が居た。

 

 


#######



午前12時にもう一話投稿した後、明日の夕方から通常投稿となります!

ありがとうございました!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る