第104話 エピローグ 03
◆
コズエ。
その少女の死は『正義の破壊者』の面々に深い傷を残した。
ただの少女ではなかった。
テレパシーを使えたが、そういう意味ではない。
少女の心は、普通ではなかった。
年の割に達観した少女だった。
このグループの密かなブレインだった。
とても賢い少女だった。
あらゆるものごとが良く見えて。
あらゆる気遣いが出来て。
あらゆる不幸を感じさせない、良い子だった。
そんな彼女のおかげで、振り切った人間がいる。
一人はカズマ。
彼は復讐対象であるジャスティスに搭乗することを決めた。
その未来に、自分の命が失われようとも。
妹の為に復讐に身を落とすことを決めた。
そしてもう一人。
それはクロードだった。
彼女との会話は心地よかった。
彼女と過ごしていると、自分を理解してもらえているようで嬉しかった。
そんな感情すらあったかもしれない。
だから夜の岩場で時折コズエと語っていたのだ。
だが――それは甘さだ。
捨てたはずの心地よさに浸ってしまっていた。
自分自身の甘さが、彼女の死を招いたのは事実だ。
彼女がクロードの役に立つために単身先行したのは知っていた。
彼女と親しくしなければ起こり得なかった結果である。
挙句の果てに、密かに助けに行こうともしていた。
甘さの極みである。
自分が彼らに突き付けた四項目目。
四つ、時には非情になること。場合によってはここにいる仲間でさえ見捨てろ。
自分自身が出来ていなかった。
今回はカズマの暴走で助かったが、もしかしたらブラッドの策に嵌っていたかもしれない。結果的にあっさりと海軍ジャスティスを倒せたのも、カズマがブラッドを倒して混乱している所を派手な形で襲撃したからである。
これは大いなる反省だ。
大いなる犠牲の上での、貴重な反省だ。
目的のためには犠牲をいとわない。
――非情になる。
そう決意した彼は、いつも抱いていたぬいぐるみと共に横たわっているコズエの遺体を一瞥して、
「さようなら、コズエ」
短く、別れの挨拶を口にして、その場を去った。
2章 完
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