第166話 苦心 02

    ◆



「何があったのか。詳しく話してくれ」


 時はアレインの死の知らせを受けてから二日後。

 ウルジス国に出向いていたクロードは空軍元帥ヨモツとの戦闘の場であったガエル国ハーレイ領に行っていた面々と、ルード国の息が掛かっていない、とある村にて合流した。

 その村の空き家の一室――ではなく、クロードの能力でひっそりと森の中に立てた持ち運びのコテージ内のクロードの部屋に、中枢メンバー四人だけが集まっていた。


 クロード。

 ミューズ。

 ライトウ。

 カズマ。


 その中で、先の言葉を投げたのはクロードだ。

 投げた先は二人の少年。


 ライトウ。

 カズマ。


 ガエル国に出向いていた二人だ。

 しかし行きは三人であった。


 アレイン。

 現在、彼女はいなかった。


 何があったのか。

 クロードはそう訊ねたが、概ね事実は把握していた。

 だけど敢えて問うたのだ。


 カズマは至って変わらない様子だ。

 そのこと自体も異様と言えば異様なのだが、しかし――ライトウ。

 彼の様相は、ガエル国に向かった前後で大きく変貌していた。


 服装は変わっていない。同じだ。

 だが――人相が別人かと思うくらい変わっている。

 目の鋭さは一層増し、眼光だけで人を射殺せそうだ。

 表情も硬く、口は先程から真一文字に結ばれている。

 触れれば腰の刀で切られる。

 ――そんな剣呑な雰囲気を醸し出していた。


「僕が話そうか?」


 カズマはそんな彼にそう問い掛ける。


「……いや、いい」


 ライトウはゆっくりと首を横に振り、低く嗄れた声でクロードの目を見る。


 その目に映っているのは、虚ろ、虚空、虚無――


 何があったのか。――彼の言葉で聞かなければならない。

 彼の言葉を、真正面から受け止めなくてはならない。

 例えどんな言葉が言われようとも。

 貫き通さなくてはいけないことがある。



 ――そんな思いと彼から受入れの言葉を堪えるために、クロードの腹部にグッと力が入った所で、ライトウはゆっくりと語り始めた。

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