外伝 戦場 10

「……あは」


 セイレンの笑みが深くなる。

 少年。

 つまり未知の要素がかなりある。

 そんなサンプルが目の前にいる。

 拳銃を向けながら彼女は問い掛ける。


「ねえ、君。死ぬかパイロットになるか、どっちか選びなさい」

「言われなくても後者を選びますよ。死にたくないですし」


 少年はひどく冷静な様子で返す。

 年齢離れをした落ち着きにこちらが逆に動揺しそうになる。

 しかし、これくらいの特殊性はあるはずだ。

 この少年は次々とルード軍の人間を殺しているのだ。

 ジャスティスさえ壊している。

 初めて乗った機体のはずなのに。


「……面白いわー」


 他人に興味を持たないセイレンが、初めてそう思った。

 夫でさえ自分が産んだ子供がどういう風になるか、という道具にしか見ていなかった彼女が――娘ですら結局興味が持てずに途中で放棄した彼女が――初めて、個人に興味を持った。

 彼女は少年に問う。


「ねえ、少年。名前を教えて」

「コンテニュー、です」


 コンテニュー。

 ルード語で『続く』という意味を持つ単語。


「これからよろしくねー」


 にっこりと、セイレンは笑い掛けた。

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