分散

第106話 分散 01


 ――話は海戦直後まで遡る。


 コズエを弔った後、『正義の破壊者』は、彼女を殺されたという大義名分を抱え、ジャスティスへの破壊活動を驚くべきスピードで実行していった。

 続々と領土侵攻していたルード国の足を止めるどころか解放すら行っており、今や正確な所は誰も知らないが、ルード国の領土はジャスティス導入開始時とほぼ同等と見られていた。

 かといって、その分だけもう一つの大国、ウルジスが拡大しているかと言えば、そういうことではない。

 誰の領土でもない、自立国。

 公式上はそうなっている。

 だが、実情は違う。


『正義の破壊者』の領土。


 彼らが占拠したというわけではないが、ジャスティスを破壊尽くした後、ほぼその国の国民全員が『正義の破壊者』に入っていた。勿論、その際には儀式として赤い液体を飲むという行為は続けられていた。それ故に犯罪思想を持っていた場合や、犯罪を起こす人間が絶命する仕組みも継続してあったため、治安の良さにも一役買っていた。

 もっとも、ジャスティスに対して恨みを持つ者、という縛りは実質無くなっているに等しいモノではあったが。

 そのような経緯もあって『正義の破壊者』の所属人数は右肩上がりだった。



 そしてそこから幾ばくかの時が過ぎ――


 今やその正確な人数は誰も把握していなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る