▼第四章『ふしぎの海のバトイディア』 ♯4
間近に迫るバトイディアは、まさに眼下に広がる夜の摩天楼、わずかに波打ちながら移動する海底都市とでも呼ぶべき様相であった。
アイシュワリア艦長が、宝石箱をぶちまけたような場違いな輝きに、『こんなにUV光を出しちゃって、海上からグォイドに見つからないのかしら』と呟くと、アストリッド艦長が、バトイディア上空には、薄いステルス膜として展開したバトイディアと同面積のIDNが浮かんで隠しているのだと説明した。
バトイディアの街並みは、高さは最大で数百メートルほどしか無いが、そのかわりおそろしく平べったく、その広い街の後端へと、〈じんりゅう〉と〈ナガラジャ〉はどこか意気揚々とした〈ファブニル〉の後をついていきながら接近していた。
そして近づくにつれ、元は異星文明の航宙艦であった街並みの中に、一匹、また一匹と、異星航宙艦の残骸でできた凹凸の間を泳ぐ巨大ウナギのようなIDNの姿を発見することができた。
『今やIDNの方々にとって、バトイディアが唯一にして最後の安心して住める場所なようです……』
ケイジが見ているものに気づいたかのようにサティが告げた。
『ここには今約200名ほどのIDNさんが住んでいるそうです。
海面はあぶないですからね、IDNさんもグォイドに見つかったら資源として捕まってしまいますし、【ジグラッツ】もいます。
ここでバトイディアからもたらされるUVエネルギーを摂取しつつ繁殖したIDNさんは、ここから【インナーオーシャン】に出て肉体を構成する為の物質を探して回っているそうです。
UVエネルギーは活動源であって、それとは別に肉体を構成する資源を調達しないといけませんからね』
『その結果……あなたは〈ナガラジャ〉を喰いかけた……と』
アイシュワリア艦長が若干沈んだ声で呟くように言うと、サティは『アハハハ……それは触れないで下さいよぉ~』とごまかした。
だが一応は罪悪感をもってはいるらしい。
IDNは、グォイドによって【インナーオーシャン】内の資源と安全を奪われた結果、殴り込みをかけてきた異星航宙艦のAIと共生するに至り、今のような生態になった……。
その結果、【インナーオーシャン】に落ちた〈じんりゅう〉級は、資源や新しい航宙艦の残骸を求めて遠出していたIDNに見つかり、九死に一生を得たということらしい。
ケイジは聞こえてきたその会話に苦笑する一方で、泳ぎ回るIDNの中に大小さまざまなサイズがが存在することに気づいた。
サティしか同じような存在を知らないケイジにとって、それは不思議な光景に思えた。
「あのさサティ……」
ケイジはそう呼びかけたところで、見ていたIDNの内の小ぶりな個体数匹が、〈じんりゅう〉へと猛烈な速度で接近し、巨大なIDNの眉に包まれた〈じんりゅう〉の周囲をらせん状に泳ぎはじめたのを見て言葉を失った。
その光景は幻想的といえば幻想的だった。
鈍い虹色のUVエネルギー光を放つウナギ的生物が、まるでファンタジー世界に紛れ込んだ旅人を迎える妖精のようにも見えないこともなかった。
……もしくは獲物に襲い掛かる寸前の、極彩色の肉食生物と受け取れないこともなかったが……。
「……………」
『大丈夫ですよ~ケイジさ~ん、その子達はIDNの方々の幼体です。
憧れの〈じんりゅう〉がやってきて大はしゃぎしてるみたいですね』
「…………ふぁい?」
サティがのどかに言ってきたが、ケイジはしばし彼女の言っている意味が理解できなかった。
IDNの幼体?
憧れの〈じんりゅう〉?
聞き捨てならないワードがあった気がする。
そういえば、先刻サティはさらりとIDNが繁殖するとかどうとか言ってやしなかっただろうか……。
そしてサティは、自分の発言がケイジ達にけっこうな衝撃をもたらしたことに、すぐに気づいたようだった。
『え~と話せば長くなるのですが、ワタクシがIDNの方に食べられてから自我を取り戻すまでに三日間の間にですね……ワタクシが同化されると同時にIDNの記憶を得たように、ワタクシの有する記憶もまたIDNの方と同化されたわけでして、その記憶がテレパシーを通じて他のIDNの方々にも伝わったみたいなんです』
「………………そ……それで?」
ケイジは嫌な予感しかしなかったが、聞かなずにもいられなかった。
『ワタクシを同化するまで、IDNの方々はサバイバルにのみ知性を特化させてきた種でした。
あくまで生き延びる為だけにグォイドに対処し、異星文明の航宙艦の残骸を取り込んだりしてるいるうちに、異星文明の航宙艦AIと半共生関係を築くに至ったわけなんですが…………。
ワタクシの記憶や知識を取り込んでしまった結果ぁ…………なんと言いますかぁ…………』
「はよ言ってくれ……」
『ワタクシの記憶を共有した結果、それまでとは別の、サバイバルとは関係ない価値観や知識を得たIDNさん達に、自我と個体差と呼べるものが生まれてしまったようなのです。
中でも特に、IDNさん達はワタクシの記憶の中のみなさんの乗る〈じんりゅう〉の記憶や、ワタクシの大好きなアニメ『VS』の中の〈じんりゅう〉の活躍に深く感銘をうけたようでして…………その……』
「…………おぉおぉぉ?……」
ケイジはサティの言っている意味を、〈じんりゅう〉の周りをはしゃぐように泳ぎ回る小ぶりなIDN……(といってもクジラくらいのサイズがある)……が、自分達に見せつけるようにして、その姿をぐにゃりと〈じんりゅう〉の姿に変化させたのを見て理解した。
サティ自身がそうであったように、IDNもまた〈じんりゅう〉ファンになっちゃった……と彼女は言いたいらしい。
しかも幼体(子供)に大人気!!
生物としてごく当たり前のことなのだが、ケイジはIDNが繁殖して幼体が存在することにも驚いた。
そして繁殖することに憧れをを持つサティが、その事実についてどういった見解をもったのか気になった。
が、今は尋ねてる場合じゃないとその疑問は飲み込んでおいた。
『特に迷惑をかけるような事態にはならないと思いますが…………なにしろ数億年も変化がなかった生態が、この三日間で激変して〈じんりゅう〉にドハマリしちゃったものでして、ファンとしての距離間やマナーについて、まだよく分かってないかもしれませんねぇ……。
それに、IDNの方々あフィクションという概念もまだ分かってないみたいでして……アニメの〈じんりゅう〉と、本物の〈じんりゅう〉の区別もよくついていないみたいです』
「あ~……ソナンダ~……」
ケイジは考えるのを諦めて力なく相槌だけうっておいた。
サティは少なくとも数億年は変化もせず、ただ同じ生活様式を繰り返していたはずのIDNに、たった三日程目を離した隙に、とんでもない影響を与えてしまったらしい。
ケイジはただひたすら、それが不幸を呼ばないことを祈ることしかできなかった。
『なるほどなぁ……それでこの|連中《IDN》は〈ファブニル〉にやたら友好的だったのかもしれんなぁ……』
サティの話に、アストリッド艦長だけがしみじみと納得していた。
艦首がまるまる実体弾の砲身になっているとはいえ、一応は〈じんりゅう〉とよく似た〈じんりゅう〉級の一隻を見つけたIDNは、資源として回収しようと思ったタイミングで、サティの『VS』に関する記憶が流入し、より〈ファブニル〉に対し友好的に接したのかもしれない。
ケイジには雲をつかむような話に聞こえたが、〈じんりゅう〉の周囲を小さな……ただし極彩色に光り輝く〈じんりゅう〉群団が楽し気に泳ぎ回っているのを見ると、そういうものなのかも……と無理やり納得することにした。
『……それでアストリッド姉さま、バトイディアのどこで何をするんですって?』
『うむ、他に良いアイディアがあるなら話は別だが、バトイディアの後端部分に、〈ファブニル〉の修理回収をしてもらった異星航宙艦用のドックがある。
〈じんりゅう〉と〈ナガラジャ〉は、とりあえずここでウチらのように修理・改修してもらうのが良いと思う……それから増えた選択肢を元に今後の方針を決めようじゃないか……と思うのだが……どうだろう?』
『…………』
「…………」
アイシュワリア艦長の問いに、アストリッド艦長がそう提案すると、ケイジは様々な葛藤を覚えつつも、否定も肯定もできなかった。
おそらアイシュワリア艦長も同じなのだろう。
困ったことに、アストリッド艦長の提案以上の良案など浮かばなったし、アストリッド艦長はアイシュワリア艦長と階級が同じでも先任の中佐であるため、その気になって主張すれば、彼女は〈じんりゅう〉と〈ナガラジャ〉を指揮する権限を持つ。
だから……というわけではないが、アイシュワリア艦長と同様に、ケイジはアストリッド艦長の提案に従う道を選ぶしかなかった。
『私らが最初のここへ連れてこられた時も、そらぁ怖かったもんさ。
だが結果オーライだった。
恐れることはないさ、意外と話が分かる連中だよ』
『その……アストリッド姉さまを疑ってるわけじゃないんですよ……ただ……その……』
アイシュワリア艦長はアストリッド艦長に、今のこの感覚を伝えようと試みていたが言語化には苦戦していた。
薄い虹色のベールで覆われた街並みは、もう目前に迫っており今さら引き返すことなど現実的ではなく、引き返したところで向かうあても無かった。
前方を注視すれば、いつの間に街並みの端にある恐ろしく横に長いシャッターのようなものが待ち構えており、ゆっくりと上方へと開いていくところであった。
どうやらそれが件の異星航宙艦ドックらしい。
『そう!
どんな方々なんですか? その異星文明のAIの方々は?』
アイシュワリア艦長は様々な本能的恐怖や、不安に関する逃避欲求を諦めると、前向きな質問に切り替えた。
『そうだなぁ……【ANESYS】でコンタクトした限りじゃ、基本AIだからやっぱり杓子定規だった。
だがその分、理をもって解けば話の分かるヤツらだよ。
大丈夫、私らの【ANESYS】で、問題無くコミュニケーションがとれるだけの翻訳プログラムが作ってある。
普通に会話が可能だ』
アストリッド艦長のその説明で、ふ~んそうなんだとはケイジはなれなかった。
その代わり、大口を開けて待ち構えるシャッターの中へと、〈じんりゅう〉が抗いようもなく入っていくのを、ただ身体を強張らせて耐えるだけだった。
――とうとうこんな所に…………――
すでにグォイドと〈太陽系の
今更第三第四の異星文明に遭遇したところで何なのだ! ……などと思えたら良かったのだが……。
ケイジが頭上を越える航宙艦ドックの天井を見上げながら、しみじみ感慨にふける中、〈じんりゅう〉は名残惜し気なチビ〈じんりゅう〉群を外に残してドック内に進入した。
〈じんりゅう〉級三隻が入ったシャッターの奥は、内部が空となった複数の異星文明の航宙艦の、巨大かつ前後に長い船殻を並べて、仕切り壁及び骨組みがわりにして、上下を硬質化したIDNの肉体で包んだような構造をしていた。
言ってみればそれは、〈じんりゅう〉がすっぽり収まる程の航宙艦の残骸の廃物利用だったのだが、【インナーオーシャン】の海底の水圧に耐えていることから、見ためからは想像もできない程の機能を有していると思われた。
正確には、ケイジには異星航宙艦が思いのほか人類の製造した航宙艦と似ている印象を受けたのだが、それが自分の観察眼の無さ故かもしれないと、自分の観察眼に自信がもてなかった。
[…………けいじヨ、めっちゃせんしんぐサレテルゾ]
「なに? なんだって!?」
異星航宙艦ドックに入るなり、狼狽えたようなエクスプリカの突然の報告に、ケイジはすぐ訊き返したが返答は戻ってこなかった。
ドック内のセンサーによって、入念に〈じんりゅう〉の船体が調べられているらしい。
エクスプリカはそう告げたきりケイジには答えず、ただ単眼カメラに灯る赤い光を明滅させるだけだった。
[申し訳ありません。
入港審査のつもりでアクセスしたところ、驚かせてしまったようですね……]
恐ろしく無機質でありながら、同時に中性的かつ滑らか極まる音声が突然バトル・ブリッジに響き、ケイジは艦長席から飛び上がりかけた。
[私はバトイディアの管理・統括担当にして、【オリオン文明グォイド被害者の会・同盟艦隊】の代表AI……便宜上の名は“デリゲイト”です。
VS‐802〈じんりゅう〉、VS‐805〈ナガラジャ〉とそのクルーの皆さま、それからサティさん……歓迎いたします。
それからおかえりなさい〈ファブニル〉、僚艦との合流おめでとうございます]
『おう、ただいいまぁ~』
異星AIの言葉に、アストリッド艦長だけが元気に答えた。
声の主がメインビュワーの彼方に現れ、ケイジもアイシュワリア艦長も声が出てこなかったからだ。
それはホログラムの類に違いなかった。
おそらく、無断でバトル・ブリッジ内にホログラムで登場することを控えた結果、〈じんりゅう〉と〈ナガラジャ〉の外の、艦橋構造物のセンサー前にホログラムで現れたのだろう。
それを船外のカメラでとらえた結果、外景ビュワーにどアップでデリゲイトらしき物体が映ることになったのだ。
ケイジの知識の中で似ているものをあげるならば、それは月のSSDF戦略AI〈メーティス〉が、人間と直接対話する際の立体化されたSSDFアイコンに似ている。
つまりその姿は人間でもなければ、いかなる生物にも似ておらず、デリゲイトとやらのバックボーンをうかがい知ることはできなかった。
[……少シ……びっくりシタ……]
やっと目覚めたエクスプリカが、微かに震えながらそうこぼした。
バトイディアに入る〈じんりゅう〉が、バトイディアに対し危険な存在ではないか臨検したことが、エクスプリカにはかなりの恐怖だったようだ。
『【オリオン文明グォイド被害者の会・同盟艦隊】て……』
『〈ファブニル〉によりもたらされた皆様の言語を用いて翻訳するとそうなります』
あまりにもあんまりな集団名に呆れるアイシュワリア艦長に、デリゲイトと名乗った声が答えた。
『皆さまがいらした太陽系を含め、当バトイディアは銀河系中心部からオリオン椀にかけてよりいらした複数の文明の航宙艦により構成されていることから、そう便宜上そう名乗ることにしたのです』
デリゲイトは、そう語りながら自身のアイコンを北天方向から見下ろした銀河系へと変化させると、オリオン椀を拡大させ、銀河中心部から、いくつもの中継点を経て太陽系へと繋がる光る直線を描き出した。
どうやらその中継点が、異星文明のあった位置らしいが、ケイジの知識では、そこが太陽系からどの距離と位置にあたるのかまでは分からなかった。
『皆さまが【
その過程で、反撃を試みた文明のいくつかが、ここへの攻撃にいたりましたが、目的達成は叶わず、ご存知の通り攻撃部隊の航宙艦は、【インナーオーシャン】へと沈んだわけです。
残念ながら、ここにいらした航宙艦のクルーの方に、現在に至る生存者はおりません。
墜落時に生存者がいた例もあり、その方々が冷凍睡眠により、未来の事態好転に期待した例もありますが、冷凍睡眠の耐用年数の限界から、現在、ここバトイディア内には皆さま以外に生存している方はいません。
ですが、今もなお個々の航宙艦の一部の中では、我々搭載AIが機能しており、我々を製造したそれぞれの文明より託されたグォイドを倒すという使命に従った結果、ここで機能の全てを失っていない航宙艦同士で協力し、バトイディアを構築し、使命を果たすチャンスをうかがうことにしたのです。
その過程でIDNの方々との共生関係を築けたのは幸運でした……』
淀みなく説明するデリゲイトに、しばしケイジ達は圧倒されて言葉が出てこなかった。
再会直後に聞いたアストリッド艦長の言葉を信じていなかったわけではないが、あらためて説明を受けると、信じ難くも信じるしかないと認めるしかなかった。
同時に、異なる複数の文明の遺物である航宙艦が、こうして協力し合いバトイディアなる移動都市を築けたのか、少し納得した。
宇宙に進出し、破れたとはいえグォイドと戦うことができるレベルの文明になれば、必然的にAI技術が発達し、それに頼った航宙艦が投入されるということだ。
そして航宙艦のクルーではなく、論理で動くAIが残ったからこそ、異なった文明の航宙艦が協力しあいバトイディアが生まれたのだとケイジは思った。
なぜなら、もしAIではなく、ケイジ達が直接異星文明人に出会ったならば、偏見や恐怖で協力しあうどころでは無かっただろうと思ったからだ。
異星文明が人類と似たような歴史や思考を持っていた場合、人類同士で歴史の大半を争ってきたことを考えると、それが論理的だからとすんなり協力しあえるとは思えなかった。
『私は皆さまを歓迎いたします。
もちろん、断る権利は尊重しますし、自由になさって構いませんが、ここで皆さまの航宙艦を、我々が修理・改修・補給をする見返りとして、皆様に我々の目的達成のために協力していただけたら幸いだと考えます』
『まぁ、そうくるなとは思ってたわ……』
デリゲイトの言葉に、アイシュワリア艦長がようやくそう口を開いた。
『我々は、ここ【
どうかそれを検討して欲しいのです』
『…………き……聞かせてもらおうじゃないのよっ』
アイシュワリア艦長は、大きくため息をつくとそう言った。
『私を構成する各異星文明のAIは、ここ【
『んん? 供与? 供与ってどこのだれから?』
『皆さまが【他文明救助要請プロトコル】と呼ぶプログラムからです』
「……………………それって…………………………アビーのことか!?」
デリゲイトの言う【他文明救助要請プロトコル】に対し、アイシュワリア艦長はすぐに思い至らなかったは、ケイジはすぐに気づいた。
『やはり…………みなさまもコンタクトを受けていたようですね……』
デリゲイトはそう呟くと、ビュワーの彼方で謎のアイコン状態から、ケイジの知る〈ウィーウィルメック〉の
『今〈ファブニル〉よりアビーさんに関する情報供与を受けましたので、この姿でお話させて頂きます。
こちらの方が情報伝達がスムーズだと判断しました』
「…………」
デリゲイトに対し、ケイジもアイシュワリア艦長も何も言えなかった。
アストリッド艦長も同じ会話を聞いていてるはずだが、何も言わないのは不服がないからだろう。
変化したデリゲイトは、ケイジの知るアビーとは、顔は似ていれども、服装がパールホワイトの薄い貝殻みたいな輝きを放つドレスのようであった。
その違いこそが、デリゲイトをアビーと誤認させないためのなのか、単にデリゲイトの個性なのかは分からなかった。
『私を構成する文明の殆どが、皆さまがアビーと呼ぶ【他文明救助要請プロトコル】からの何らかの形による情報供与と警告を受けた上で、グォイドとの戦闘状態に突入しました。
そして【
それはここに眠る数々の航宙艦の残骸が証明しています。
ですが、希望がまったく無いわけでもありません。
数々の文明の航宙艦が、ここに攻撃を仕掛けては敗れた過程で、蓄積された新たな情報もあります。
それらは私の中に存在するアビーによって集約され、そして新たな可能性が見いだされました』
そこまでデリゲイトは告げると、ビュワーの彼方で自身を新たなホロ映像に変えた。
巨大なガスに包まれた円筒……【
ただし、投影された【
『【
各異星文明の位置と、グォイド襲来の時間経過を考えた場合、【
逆に言えば、【
ホロ投影された【
『これまでここへ攻撃を試みた各文明の攻撃艦隊は、【
ですが、ワープゲイトを通じて直接【
『…………ンな無茶な……どうやってワープゲイトを開けと……』
『アイシュワリア艦長……仰る通りです。
ワープゲイトの形成は、ある条件をクリアせねばなりません』
アイシュワリア艦長の言葉に、デリゲイトは告げた。
『ワープゲイトの形成には、ワープゲイトのシステムを生み出した〈太陽系の
しかし、これまでの経験から〈太陽系の
〈太陽系の
〈太陽系の
ですから……………』
『私達に〈太陽系の
『いいえアイシュワリア艦長、少々違います。
すでに〈太陽系の
そちらの〈じんりゅう〉のクルーの方々によってです』
『………』
「…………」
それはデリゲイトのその話を途中まで聞いた時点で、ケイジにはある程度予測できた内容であった。
〈じんりゅう〉のユリノ艦長以下が【ANESYS】から目覚めないのは、【
『私が望むのは、〈じんりゅう〉クルーの〈太陽系の
「守る?」
『残念ながら【
高い確率でここは近い未来に戦場となります。
それまでにどうか〈じんりゅう〉クルーのコンタクトを成功させて、【
そこまで言うと、再び現れたアビーによく似た少女のホログラム
は俯いたまま沈黙した。
『な……………………………んですってぇ?』
アイシュワリア艦長が各〈じんりゅう〉級のクルーを代表するようにそうこぼした。
アイシュワリア艦長は『少し考える時間をもらえる?』と、やっとそれだけデリゲイトに尋ねると、彼女は素直に受け入れた。
そしてケイジ達太陽系人類だけで、しばし話し合う時間を設けることとなった。
『いやはや……盛り上がってきたもんだね……』
各〈じんりゅう〉級の船体の補修が始められる中、通信用ホログラムでバトル・ブリッジ内に現れたアストリッド艦長が、そうぼやくと艦長帽を抜いて頭を掻いた。
まったく意図していなところで、〈じんりゅう〉級のクルー達は人類どころかこの宇宙に住まう異星文明の希望になってしまったのだ。
簡単に受け入れられるわけがなかった。
自分達の判断一つに、バトイディアとIDNの命運がかかっているのだ。
ケイジもまた、自分なりにその重責に押しつぶされそうな感覚を覚えていた。
とはいえ、自分には階級的にどうせ判断する立場は無いと思っていたが…………。
がしかし、
『あのぉ…………皆さん、大変な問題を考えていらっしゃる最中に申し訳ないのですが、一つどうしても気になったことがあるんですけどぉ……』
体内に取り込んだ短距離通信機で、ドックの外で待つサティがごく遠慮がちに話しかけてきた。
『構わんよ、なにか意見があるのかい?』
『いいから早く言いなさいな』
『はぁ……今の事態とはあまり関係ないのですが……』
「言っていいってばさサティ」
アストリッド艦長とアイシュワリア艦長に促されてもまだ渋るサティに、ケイジは苛立ちを隠すよう努力しながら告げると、ようやく彼女は答えた。
『あの~……ぶっちゃけ今はどうでも良い話かもしれませんけどぉ~…………。
ハイ! 今すぐ言います!
あの~………………いつの間にケイジさんはアミ一曹からケイジ一曹になっていたんでしょうかぁ?』
まったく予想もしてなかった……というより頭からすっかり抜けていたサティの問いに、ケイジはフリーズした
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