▼第三章『キャッチャー&フライ』 ♯1

『あ~あ、やっと本番ね! 姉さま方! 散々シミュしてきたから何だか清々するわ!』

『そうかアイシュワリア? 私はまだ不安だがな……なにしろ……』

『そのシミュで上手くいったことが、結局………何回あったのかしら?』

『四隻で行った場合の成功率は72%、20回中14回のシミュで、一応の目的は達成されました……一応はですけど……ユリノ艦長』

『じゃ大体成功するってことじゃないですか姉さま方~!』

『お言葉ですがアイシュワリア艦長、結局工廠外でのオプション装備の物理テストは行えませんでした。

 どんな不具合が発生するかわかりません。

 そうでなくても、これまで行ってきたシミュは、不確定要素が大量に無視されていました…………』

『おやおや心配症だな~キャスリン艦長は……』

『そ~お……?』

『でも……確かに気がかりになることならあるわね…………』

『なに?』

『艦が重い…………』

『それな!』

『そうなの?』

『そうなんですか?』

『こんなにオプション装備つけてるのよ! ユリノ姉さまとアイシュワリア艦長んとこはオリジナルUVD乗っけてるから気にならないでしょうけど!』

『まったくだな……こっちは機関長がUV出力値から目が離せなくてひ~ひ~言ってるよ』

『こちとら主機人造UVDのUV出力にゃ限りってもんがあるんですからねっ、いくら無限にUVエネルギーがくみ出せるからって、こんな無暗やたらに追加装備付けてたら、重たくてせっかくの〈ナガラジャ〉の機動性が活かせないわ!』

『慣性質量の相殺には手間取るでしょうね……』

『ま、慌てて動いて何とかなる状況なんてまれだろうけどな』

『トリ姉様……〈ナガラジャ〉の存在意義を全否定しないで……』

『ああ、それはそうとアイシュワリア艦長…………昨日はパーティにお招き頂きありがとうございました』

『わぉ! キャスリン艦長、お礼なんて言うこと無いわ! だってあなたのとこの工廠内を強引に借りて開催したんだし……』

『そこいらへんの自覚はあったんだな……』

『私からもありがとうね! アイちゃん』

『〈ウィーウィルメック〉からは私とセヴューラしか行けなかったことを申し訳なく思っています……』

『ああああああ別に良いんですよ! それぞれの艦に事情ってもんもあるんでしょうし……』

『私も話してみたかったなぁ、〈ウィーウィルメック〉の他のクルーにもだが、〈じんりゅう〉の新任機関長にも挨拶しておき──』

『わ~! そういえばみんな! ウチのサティがごめんね~! 彼女には悪気は無いのよ~!』

『あ~うん……それは分かってるぞユリノ……ただ、もし次に会う時があったら、多少我々がビクついたとしても……その……気にしないでいてくれると嬉しいな……』

『…………』

『…………』

『おいお前たち、通信状況の確認はその辺にしておけ。

 オプション装備については……あんま好き勝手言って……チーフが気を悪くしても知らんぞ』





 …………そんな艦長同士の会話が交わされた直後、暗闇から飛び出るようにして、巨大な菱形の花弁が六枚の集まることで形作られた巨大な星型、あるいは花のようなシルエットが、金星の夜の面から太陽光の下へと現れ出でた。

 それは花のようなシルエットこそしていたが、当然宇宙に咲く花など存在するわけもなく、花と言うにはあまりにも巨大で、そして花と言うには色合いがいささか華やかさに欠けていた。

 その花びらの色が、漆黒の宇宙空間を背景にすると溶け込んでしまいそうな程に、黒に近い青色であったからだ。 

 しかし、その花びらはただ濃い青というわけでは無かった。

 その花びらの奥に、宇宙の星々を遮り、黒い影となって見えるシルエットが確認できることから、その花びらがいわばサングラスのような半透明であること分かるからだ。

 その巨大宇宙花の前方を進む、〈昇電ⅡSDS〉に乗るクィンティルラとフォムフォムの視力をもってすれば、その六枚の花弁の奥に見えるシルエットが、前方から見た母艦たる〈じんりゅう〉のシルエットであることなど、容易く確認することができた。


「で……どうよ? そっちの調子は?」

『こちらの船体とアケロン六隻には、異常は今の所みられていません。

 クィンティルラさんたちの〈昇電ⅡSDS〉は、全艦金星圏を離脱し次第、予定通、先行偵察と状況観測に努めて下さいとのこと』


 クィンティルラの問いに、ミユミからの通信が答えた。


 ――金星近傍……【ヘリアデス計画】当日……開始2時間前――


 ミユミとの通信直後に、昇電Ⅱの後方にさらに三つの青い花が金星の夜の面から現れ出でるのが目視確認できた。

 それぞれが青い花を艦首に咲かせた〈ファブニル〉〈ナガラジャ〉そして〈ウィーウィルメック〉だ。

 〈じんりゅう〉と同じように、艦首前方を覆うように6枚の花弁で覆ている。

 実際にはミツバチが花の中心部に頭を突っ込むように、各〈じんりゅう〉級の艦首に花の表側が向いており、花はその茎側を進行方向に向けているわけだが、実際に花といわけでもなんでもないので、機能的問題は無かった。

 〈ナガラジャ〉の船体は、完全に花びらに隠れてその姿は透かして見える〈じんりゅう〉よりも歪なシルエットでしか判別できないが、〈ファブニル〉〈とウィーウィルメック〉はそれぞれが特徴的な実体弾投射の砲身が盛大に前方にはみ出ている為、どの花がどの艦かの目視識別は容易だった。

 やがて二列縦陣で進みだした四隻の後方に、さらに数隻の花弁に覆われた艦艇が金星の影より現れた。

 テューラ司令の乗る指揮専用艦〈リグ=ヴェーダ〉とノォバ・チーフが乗る技術支援艦〈ヘファイストス〉だ。

 その二隻も花びらで艦首が隠されていたが、〈じんりゅう〉級四隻のように6枚ではなく四枚だった。

 さらに二枚ずつ花びらを太陽方向にかざしたを補給艦や護衛無人艦が続く。

 これら総勢50隻弱の艦が、今回の【ヘリアデス計画】の実行艦隊だ。

 現在、太陽の黄道面高度8万キロを周回中のオリジナルUVDの数は、予測通りプロミネンスに焙られることで【グォイド光点増援群】の残骸から姿を現し、確認されただけで100柱近い数が確認されている。

 それらを回収するための艦としては、いささか心もとない数値と言えた。

 だが、太陽のごく近距離で行う作業に耐えられる艦が、この数までしか用意できなかったのだ。

 そして、各【ヘリアデス計画】の実行艦を覆う複数枚の青い花びらこそが、ノォバ・チーフが急遽開発した耐太陽輻射オプション装備・強化UVシールド防盾無人艦〈アケロン〉なのだ。





 複雑な理屈ではなかった。

 太陽からの輻射は、直接受け止めるには強大で危険だが、遮るものさえあれば、思いのほか太陽に近くとも恐れることはない。

 それが証拠に金星や水星の影であれば、人類はUVシールド技術を用いらずとも、独自の技術で有人往還を成し遂げることができていた。

 だから太陽に近づきたいのであれば、何がしかの盾を持って行けば良い……というのがシンプルかつ確実な方法のはずであった。

 もちろんUVシールドでも、ただ太陽に近づくだけならば充分以上の効果はあった。

 現に今回も、各〈じんりゅう〉級には【木星事変】【紅き潮流】作戦時に使用されたUVシールド・コンバーターが追加装備されていた。

 が、プロミネンスに焙られる危険がある程の至近距離では、さすがに単純なUVシールドの恩恵だけでは、艦の安全を保障するにはまだ不安があった。

 避けたい事態ではあるが、グォイドとのオリジナルUVD争奪戦闘の可能性も十分にありうる。

 防御力は、ただ太陽輻射に耐えられるだけでは足りないかもしれない。

 故に、各〈じんりゅう〉級および【ヘリアデス計画】実行艦隊の耐太陽輻射対策の責任者たるノォバ・チーフは、今回の任務に合わせた新たなオプション装備の開発を急いだのであった。



 新造オプション装備のたたき台となる航宙艦ならば、すでに存在していた。

 〈じんりゅう〉級四番艦・VS‐804〈ナガラジャ〉旗下、〈ヘリアンサス〉級遠隔無人シールド艦である。

 【ケレス沖会戦】の最終盤に、〈じんりゅう〉に援護に駆け付け活躍した艦の一つであった。

 〈ラパナス〉級無人駆逐艦の艦首に、まるでヒマワリの花のようなUVシールド・ディフレクターを装備することで、他の艦の防御に特化した無人艦というコンセプトを、ノォバ・チーフは最新の技術でアップデートすることで活かすことにしたのだという。

 だが、基本グォイドとの戦闘を想定し、艦首方向への防御に特化した〈ヘリアンサス〉の設計をそのまま使うわけにはいかない。

 決して動くことは無い太陽という光源に対し、〈じんりゅう〉をはじめとする【ヘリアデス計画】実働艦艇は、艦首をどこに向け行動する必要に迫られるか分かったものではないからだ。

 つまり、今回の【ヘリアデス計画】で求められるのは、自由自在に防御の方向を変えられる強力なUVシールド発生専門の無人艦ということになる。

 難題ではあったが、実現不可能な問題でも無かった。

 ノォバ・チーフは、すでにこの問題解決のヒントとなる装備を、自ら開発し実用化していたからだ。

 〈じんりゅう〉が土星圏グォイド本拠地を偵察する羽目になった【サートゥルヌス計画】時に生み出した、簡易ステルス膜〈ケーキ&クレープ〉の技術だ。

 〈ケーキ&クレープ〉は、流体金属を利用した即席ステルス膜だったが、その際に培った流体金属制御技術を活かすことにしたのだ。

 UVシールドは強力だが、それに加えて流体金属製の実体膜を展開すれば、太陽輻射の遮断により効果があると考えたのだ。

 そうして〈ヘリアンサス〉のコンセプトと、〈ケーキ&クレープ〉の技術を組み合わせて生まれたのが、強化UVシールド無人防盾艦〈アケロン〉なのである。



 駆逐艦の補助エンジンに使用される、人類の生み出せる最小モデルの人造UVD二基を主機とし、というよりに全長80m近いサイズの双胴の主船体から、自在に動く可動軸を介して前後左右に骨組みを伸ばし、その骨の間に流体金属膜とUVシールドを同時展開させっることで、全長300m・全幅180mとなる菱形の盾を形成し、太陽輻射を遮る。

 自在に動く可動軸で主船体と盾は繋がれている為、菱形の盾の向きを太陽方向に維持したまま、自在に主船体を傾けることが可能であり、メインスラスターを任意の方向に向け噴射することが可能だ。

 もちろん、場合によっては盾がある方向に艦尾を向け噴射をかけねばならないシチュエーションも考えられるが、その時は部分的に流体金属製の膜を解除し、骨組みの間からその穴を通して噴射を逃せばよい。

 これで一応の急造無人防盾艦としての形はなった。

 目的の機能を発揮し、既存の技術用いることで生産性も良好である。

 が、この太古の亀の名を授けられた艦の真価は、これだけでは無かった。

 太陽に近づくという行いを安全に行うには、まだこれだけでは足りないとも言える。


 大気など熱を伝達する物が存在しない真空宇宙において、一度受け取ってしまった熱を、自然に冷めるのを待つことは自殺行為に等しい。

 熱の権化たる太陽に近づくならばなおさらだ。

 人類の航宙艦は、この問題に対し放熱翼を備えることで解決してきた。

 古代魚のヒレのような放熱翼から、熱を赤外線に転換して放出することで、船体の熱を逃がすのである。

 しかし、太陽の近くでは、放熱翼それ自体もまた太陽からの輻射に焙られてしまうため、熱の放出は叶わない。

 だが、無人防盾艦〈アケロン〉は二隻一組となることで、この問題の一応の解決を成し遂げている。

 防御対象艦一隻につき、二隻の無人防盾艦〈アケロン〉を組ませ、防御対象の発生させる卵状に形成されたUVシールドの眉に張り付くようにして、常に太陽・無人防盾艦〈アケロン〉α・防衛対象艦・無人防盾艦〈アケロン〉βと並ぶようにする。

 防衛対象艦を二隻で挟んだ上で、常に太陽に対し一列に並ぶようにするのだ。

 それにより、一隻が太陽の輻射を受け止め、蓄えられていく熱を防衛対象艦の発生させるUVシールドを介してもう一隻の無人防盾艦に伝達し、その配置となることで太陽の影にいるはずの二隻目の無人防盾艦が、影の中で流体金属製の放熱翼を形成し、熱を放出するのだ。

 二隻一組となることで、防御対象の艦艇に降り注ぐはずの太陽輻射を、受け止めさせるのではなく反対側へ素通りさせると言えば良いのかもしれない。

 それでも、無人防盾艦〈アケロン〉には相当な負荷がかかるはずであり、連続使用によって早期の耐久限界を迎えることが予測されていた。

 が、それは〈アケロン〉自体を可能な限り量産し、複数装備することで対処することにしていた。

 その結果が、〈じんりゅう〉級一隻につき六隻の〈アケロン〉の花が守る状態なのである。




「ま、アイシュワリアの嘆きももっともだと思うがね……」

「フォムフォム…………」


 HMDヘルメット・マウント・ディスプレイの後方映像に映るヘリアデス艦隊を見ながら、クィンティルラが呟くと〈昇電ⅡSDS〉後席のフォムフォムが頷いた。

 クィンティルラ達が駆る新たな昇電もまた、【ヘリアデス計画】

仕様に改修され、さまざまなオプション装備がこれでもかと取り付けられいた。

 そうでなくても、クィンティルラとフォムフォムが、この半年の間に人類圏を探し回り、月でようやく発見した新たな昇電は、まだ機体のクセを掴み切れていないところがある。

 以前の昇電は、『黙示録アポカリプスキャンセルデイ』の直前に、土星圏【ザ・ウォール】での対トータス・グォイド戦闘で、遠隔操作で出撃させ、そのまま喪失してしまったいた。

 意義のある犠牲だったので悔いはなかったが、それはそれとして、新たな機体が必要であることには変わりなく、クィンティルラとフォムフォムは、今の時代急激に廃れつつある有人飛宙戦闘機・昇電の新たな機体を探し回ったのである。

 月で発見した昇電は、機体というより骨組みであったが、今の時代図面とプリンタがあればレストアは不可能ではなく、ノォバ・チーフのチームに無理を言ってレストアしてもらったのだ。

 レストアついでに可能な限りのアップデートが施されたことで、昇電Ⅱと名付けられたこの機体は、搭乗テストを行う間もなく〈イシュティアル〉工廠で【ヘリアデス計画】仕様への追加装備がなされた。

 基本的に追加されたのは、〈じんりゅう〉級他の艦艇に装備された無人防盾艦〈アケロン〉と同種の装備の小型版だ。




 昇電Ⅱの放熱版と武装プラットフォーム、および姿勢制御スラスターの支持架を兼ねた主翼の先端に、一対の前後に長いレールをピッチ回転できるよう取り付け、さらにそのレールに巨大な一つのリング状レール・ジンバルを接続し、そのジンバルにUVシールド発生器と一体となった菱形防盾を二枚、昇電Ⅱを挟むように取り付けられている。

 ようするにレールとジンバルを介することで、全長100m弱の菱形盾二枚が、昇電Ⅱの周囲を自在に移動し、守ってくれるようになっているはずであった。

 だが、UVキャパシタしか搭載していな昇電Ⅱが、そんな装備を用いれば、瞬く間に限られたキャパシタ内のUVエネルギーは尽きてしまう。

 そこで昇電Ⅱの機尾には、人造UVDを内蔵したブースターが接続されていた。

 これにより、昇電ⅡはUVエネルギーの残量を気にすることなく菱形盾と推力を使えるようになったのである。

 だがそのやたら高級なブースターも、二枚の菱形盾に隠され、外側からは全く見えなくなっていた。

 最終的に昇電Ⅱは、菱形の盾二枚に挟まれ、青くて細長い新種の二枚貝じみた姿となっていた。

 武装として対艦UV弾頭ミサイル二基と、対宙レーザー砲は備えられていたが、主な搭載目的はパイロットの精神的気休めの為である。

 ノォバ・チーフは便宜上、この【ヘリアデス計画】仕様の昇電Ⅱのことを〈昇電Ⅱ・S(Sun)D(Dive)S(Speciall)〉と名付けた……そのまんまなネーミングだ。

 この仕様のお陰で昇電Ⅱは、その全長を5倍にまで増していた。

 よく考えなくても無茶な仕様である。

 だがそれは同時に、それほどまでに作戦環境たる太陽表層が険しい場所だということなのだろう。

 元々昇電という機体が、激化する対グォイド戦闘の中で、多数のオプション装備を行うことを前提にアップデートされてきた機種であり、もはやではなくであったが、限られた期間内で目的の機能を発揮する機体を調達しようと考えた場合、他に手段が無かったのだろう。

 機体重量が一気に10倍近くました為に、昇電Ⅱの機動性は著しく落ちていた。

 いかに推力が増しても、機体の重量を制御するのに必要な推力もまた増しているためだ。

 ゆえにクィンティルラは、同じく【ヘリアデス計画】仕様となった〈ナガラジャ〉のアイシュワリア艦長が、重量増加で機動性が低下したことを嘆く気持ちがよく分かった。

 アイシュワリア艦長は自ら舵を握ることもあるのだからなおさらだ。

 オリジナルUVDの無限の出力を有する母艦、〈じんりゅう〉の操舵士フィニィさえも、そのオプション装備の重量増加に、艦の挙動が激変してひ~ひ~言っているのだ。

 〈ナガラジャ〉や〈ファブニル〉の操舵担当の苦労が偲ばれる。

 当然ながら〈昇電ⅡSDS〉はサイズ的に母艦たる〈じんりゅう〉には格納できず、人造UVDで得た無限の推力を利用して、〈イシュティアル〉工廠から直接作戦宙域に移動し、作戦後はそのまま〈イシュティアル〉工廠に帰投するか、装備をパージしてコンパクトになってから〈じんりゅう〉に帰還する手はずになっている。


『【ヘリアデス計画】実行艦隊各艦へ、本計画の指揮官テューラ・ヒュラだ。

 〈リグ=ヴェーダ〉|作戦指揮所MCより最終ブリーフィングを始める』


 クィンティルラの回想を、テューラ司令の通信音声が遮った。


『今計画は参加してくれた諸君らの尽力により、いよいよ実行段階となった……まずは参加してくれた全航宙士ならびに各AI、その他の存在に、まずは感謝の意を表したいと思う。

 今計画の最終目的であるオリジナルUVD改修は、大きくわけて五つのフェイスからなる。

 送信中の映像データを合わせて、今一度確認してもらいたい』


 その言葉に合わせ、文字と映像とが合わさった作戦シミュレーション映像が、クィンティルラのHMDにも届いた。




▼フェイズ1・【グォイド光点増援群】残骸を観察し、回収すべきオリジナルUVDを選別する。



 映像内を、ほぼ巨大な円弧の一部しか映らな太陽の表層を、かつて【グォイド光点増援群】だったものが周回する光景が、太陽北天方向から描かれた。

 その残骸の外側を、〈昇電ⅡSDS〉率いる偵察無人機部隊が間隔の長い単縦陣で通過していく。

 通過の際に観測し、残骸からオリジナルUVDを探し出し、回収が容易そうなオリジナルUVDを選別するのだ。



「さ~て、やっとこさ退屈の時間から解放されるな!」


 クィンティルラはつい先刻、アイシュワリア艦長が発したのと同じような内容を、我知らず独り言にしては大きな声で呟くと、後席でフォムフォムが「フォムフォム……」と答えた。





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