第20話二人の王子

「妻候補?セリナ、この人達は知り合いか?」


「ええっと、一応面識はありますよ?」


「なんで疑問系なんだよ…」


「おいそこのフードを被ったガキ、その方をこちらに渡せ!」


 鎧をきた6人内のリーダーのような男は、俺を指差してそう言い放った。


「礼儀の悪いやつだなぁ、いきなりやって来て名乗りもせずに渡せだと?」


「っち、我々はラグナードより遣わされた騎士である、私はこの隊の隊長を任されているポルナードだ、そちらのセリナ様をお迎えにあがった。理解したらさっさとこちらに渡せ!」


「て言ってるけどどうするセリナ?」


「わたし行きたくないです…」


 セリナは俺の背中に隠れて怯えている様だった。


「だそうだ、諦めて帰ってくれないか?」


「そちらの意見は聞いてない。もういい、お前達拘束しろ」


 ポルナードの後ろにいた5人の騎士は、俺達に剣を向けてきた。


「これは王命だ、事情を知らなかったとはいえ、逆らえば反逆罪に処すぞ」


 また国に追われそうな雰囲気だなぁ。

 別に渡してもいいんだが、何か訳ありっぽいしなぁ。


「はぁ、仕方ない。ラグナードでの用事が終わったらすぐ次の国に行けばいいか」


「何を言っているんだ貴様」


「悪いがセリナが嫌がってる以上、お前達に渡すわけにはいかないな」


「リデルちゃん…」


「心配するなセリナ、この程度の人数ならどうとでもなる」


「貴様…あまり我々を舐めない方がいい、ガキだからといって容赦せんぞ!」


「別に戦いたい訳じゃ無いんだけどなぁ、詳しい話も聞かずに判断は出来ないから、今はまだ渡せない」


「そちらの意見は聞いてないと言っているんだ!お前達!そいつは反逆者だ、遠慮せずにやれ!」


「「ハッ!」」


 剣を構えていた騎士達は、俺に向かって斬りかかってきた。

 俺は斬りかかってきた騎士達の攻撃を捌いて弾いた。


「抜刀術スキル弐の太刀『花月』」


 そして、弾いた時の一瞬の間に、俺は抜刀術スキルの花月で騎士達の剣を全てへし折った。


「まだやるか?」


「き、貴様!!覚えていろ、反逆者として貴様は国から終われることになるぞ!」


 そして、ポルナード達はそのまま帰っていった。


「はぁ、また終われるのか」


「ごめんなさいリデルちゃん、わたしのせいで…」


「いや、気にしなくていいよ。それより、街に着いたら詳しい話を聞かせてくれないか?」


「分かりました…」


 関所から最寄りの街のマリニーヌに到着し、宿を取ってから俺はセリナから話を聞くのだった。


「ラグナード国には、2人の兄弟の王子がいるんです、そしてどちらかが時期国王になると言われています。わたしは昔オンシィーンで弟の方の王子セルジュ様と出会って恋に落ちました。」


 セリナは顔を少し赤らめ、俺に嬉しそうに話した。


「セルジュ様はいつか国王になったらわたしを迎えに来ると言ってくださいました、ですが─」


 そこでセリナの表情は、先程の嬉しそうな顔から一変して暗く悲しそうな顔に変わってしまった。


「─先日わたしの元にポルナードが来て、「我々と共にラグナードに来てレオナルド様と婚約してもらう」と言いました。レオナルド様はセルジュ様のお兄様です、そして自分より優れる弟に嫉妬しているようで、弟の愛した人を無理矢理にでも奪おうとしたんだと思います」


「そうか…」


「わたしは家族に迷惑が掛かってしまうと思いましたが、急いで家から逃げ出しました。そして、昔オンシィーンでセルジュ様と会ったとき、セルジュ様のお友達として紹介していただいた人物に、セルジュ様に取り次いでいただこうと思いオンシィーンに向かっていたんです」


「そうか、でもオンシィーンのセルジュ様のお友達も、セリナがラグナードに居ることが知られてしまっているなら、既にレオナルドの部下にマークされてるんじゃないか?」


「あ!そ、そうかもしれないです、どうしましょう!?」


「それじゃあ直接セルジュ様に会いに行けばいいんじゃないか?」


「な、なに言ってるんですか!相手は王子様ですよ?それにレオナルド様もいらっしゃるんですから、先程の騎士達のとは比べ物にならない程の人数の騎士がいるんですよ?」


「ラグナードまで行けたら流石にレオナルドも手を出して来ないんじゃないか?」


「表立っては手を出してこないかもしれないですけど、どんな手段で襲われるか分からないですよ?」


 レオナルドって奴はどこまで弟に嫌がらせしたいんだよ…


「それじゃあ、さっきのポルナードって奴等より早くラグナードに行けば、俺達が襲われることは無いんじゃないか?」


「そんな速度で移動できる馬車は借りれないと思いますよ?」


「ん?なんで馬車?」


「え?普通は街から街へ移動するなら馬車を借りるものじゃないんですか?」


「へー、知らなかった」


「まあコンビナートでは道が整備されていないこともあって、あまりやってないですからね」


「なるほど。まあ今回は馬車は使わない」

「何か他に移動手段があるんですか?」


「ああ、俺に任せとけ!」


 後で騒ぎになるだろうけどね。


 そして翌日、朝早くに宿を出発し、俺とセリナは街道から外れた人目のつかない所に向かったのだった。


「あの、リデルちゃん?どこに向かってるんですか?」


「人目につかない場所ー」


「え!?リ、リデルちゃん?人目につかない所でなにするんですか…?」


「なんか変なこと考えてないか?まあここら辺でいいか」


「ふぇ!は、初めてなので優しくしてくださいね?」


「ああそうだな、優しくするよ」


 俺はにやりと笑い、セリナの方を向いて近付いて行くのだった。


「まさかリデルちゃんがそっちの人だったなんて…でも助けてもらってるし少し位なら、あーでもわたしにはセルジュ様が…」


 俺は何か1人でぶつぶつ言っているセリナに近付くと、セリナをお姫さま抱っこして空中に飛び上がった。


「え!?きゃぁぁああああ!」


「こいグリルドー」


 ある程度の高さまで飛び上がると、俺はペットのグリルドを召喚した。


「むやみに呼ぶと騒ぎになると言ったのに、結構な頻度で呼ぶのだな主よ」


「一応必要な時にしか呼んでないんだぞ?」


「きゅ、急にドラゴンがー!それに喋ってるー!?」


「後処理をするのは主だから構わぬが、それと今回はその娘も乗せるのか?」


「ああ、そのつもりだけど嫌か?」


「嫌ではない。しかし、主は異常だが、普通の人間が我に乗るのは中々難しいことだぞ?」


「大丈夫大丈夫、俺が抱えておくから」


「寒さや風圧それに急に気圧が変われば、それだけで人体に影響が出る。普通の人間ならばな」


「グリルド、お前って頭良いんだな…」


「元々こんぴゅーたーと言うものから産み出されたのだ、我に関わってくる知識は授けられておる。まあいい、普通の人間が耐えられる高度と速度で飛ぼう」


「ああ、頼むよ、ありがとう」


「だが、後処理はしっかりするのだぞ」


 そう言った後、グリルドはラグナードに向けて飛び立ったのだった。


「この速度なら夕方には着くかなぁ。ん?おーいセリナ?」


 いま気付いたが、セリナは俺の腕の中で硬直してしまっているようだ。


「おーい」


「ひゃい!」


 俺の2度目の呼び掛けに、セリナは勢いよく頭を動かした事により、セリナを抱えていた俺の顔にセリナの後頭部が直撃した。


「ぶふぁっ!」


「痛っ!?って、ごめんなさいリデルちゃん!」


「ひや、だいじょうふだ、あー、気にしなくていいよ」


「あの、このドラゴンはなんなんですか?」


「ペット」


「へ?」


「こいつは俺のペットのグリルドだよ」


「ドラゴンがペット?」


「まあそうだな」


「ふぇぇ、凄いですね…でも、こんな大きなドラゴンが街の近くを飛んでたら騒ぎになるんじゃ…」


「まあ…それは後で何とかするよ多分…」


「リデルちゃん、多分って…そう言う事はちゃんとしないと─」


「グリルド!セリナは大丈夫そうだからもう少しスピードアップだ!」


 説教が始まりそうな雰囲気だったので、俺はグリルドにスピードアップを命じた。

 俺の命令に従い、グリルドは飛行速度を上昇させた。


「ひゃ!だ、大丈夫じゃないです!きゃぁぁああああ!リデルちゃん待って、速度落としてぇぇえええ!?」


────────────────────


 その日の夕方には無事にラグナード国の国の名を冠するラグナードの街に到着したのだが、何故かセリナが頬を膨らませてふて腐れている。


「どうしたんだセリナ?」


「どうしたんだじゃないですよ!なんで途中で速度あげちゃうんですか!」


「元気そうだったから大丈夫かなって」


「大丈夫じゃないって言ったじゃないですか!リデルちゃんのおに!」


「まあまあ、とりあえず王城に向かわないか?」


 俺は可愛らしく怒っているセリナに、話題を変えて先程の事を無かったことにしようと試みるのだった。


「そうですね。でも、後でさっきの事はきちんと怒りますからね?」


「っち」


「なんで舌打ちしてるんですか!誤魔化されませんからね!」


 俺達はそのまま歩いて街の中で一番大きく目立っているラグナード城に向かうのだった。


「なあ…城の周りってこんなに警備兵多いもんなのか?」


「そんなわけないじゃないですか、なんでこんなに警備の人が…」


 俺達がラグナード城に到着すると、城の周りには警備兵が大量に溢れかえっていた。


「おい、お前達そこで何をしている?」


「あ…」


「ん?お前達は…あ、おい!反逆者がここに居たぞー!」


「逃げるぞセリナ!」


 警備兵の1人が叫ぶと、周りにいた兵士達が砂糖に群がる蟻の様に集まってきたのだった。


「リ、リデルちゃん、このままじゃ…」


「大丈夫だ、とりあえず走ってくれ!」


 俺達は走って逃げるが、段々兵士達の数は増えていき、次第に距離も近付いていった。

 そして、リデル達が逃げた着いた先は、逃げ場のない路地裏だった。


「あ…行き止まり…ど、どうしましょうリデルちゃん…」


「さあ観念しろ反逆者め!」


「セリナ、跳ぶぞ」


 俺はセリナの耳元で小声でそう囁いた。

 その後、俺はセリナを小脇に抱えて、後ろにある壁を飛び越えた。


「ひぃっ、やああああ」


「今日はよく叫ぶなぁ」


「誰のせいですか!」


 俺が飛び越えた壁の先には、俺達の目的地のラグナード城があったのだった。


「知ってる道と同じで助かったな、今なら兵士達が正門に戻るのも時間が掛かるだろうから、少しは手薄のはずだ」


「凄い、そこまで計算してたんですね!」


「まあ思い付きだけどね」


 俺は着地した後、セリナを降ろさずそのまま走り出した。


「リデルちゃん!?」


「あー、ここからは道も分からないし、少なからず兵士もいるだろうから駆け抜ける為にもう少しだけ我慢してくれ」


「いや、あの、速いぃいいい!」


 ラグナード城の庭を駆け抜け、城の壁まで到着すると、壁を烈破でぶち抜いて城の中に浸入したのだった。


「て言うか何処に向かえばいいんだ?」


「何も考えて無かったんですか!?」


「だって、セルジュって人の顔すら知らないしなぁ。とりあえず1階から登っていくか」


「これって完全に犯罪者なんじゃ…」


「仕方ないんじゃないか?普通に会う前に捕まっちゃったらどうしようもないし。それに俺は普通に捕まったら処刑だろ…」


「わたしのせいで…ごめんなさい…」


「別に良いよ。用事はすぐに終わらせて他の国に逃げるし」


「でも関所なんかも通れなくなりますよ?」


「顔も見られてないし、それにグリルドも居るしね」


「あー、そうですね…」


「む?」


 俺達は喋りながら走り続け、大広間に出た時、大量の兵士が待ち構えてり、階段の上にはいかにも偉そうな人物が佇んでいた。


「侵入者よ、貴様らはどこの手の者だ!何の為にこの城に浸入したのだ、答えよ!」


「どこの手の者でもないんですけどね。目的はセルジュ様に会いに来た?でいいのかな?」


「私の息子のセルジュに何の用だ」


「あれ?セルジュ様に用じゃなくて、レオナルドに追われて逃げてきたからセルジュ様に会いたいがいいのかな?」


「何を言っておるのだ?確かに今日はレオナルドが兵士を動かしておったが…」


「とりあえずセルジュ様を呼んでもらっても良いですか?」


「貴様、城に浸入しておいてただで済むと思っておるのか?」


「俺はこの子をセルジュ様に渡した後はすぐに去るのでお構い無く」


「話にならん、侵入者を排除せよ」


「え!?なんでそうなるのんだよ!」


「普通そうなりますよぉおおお!」


「セリナ!とりあえず俺の後ろに」


 俺の予定では国王かセルジュに会ったらそこで終わると思っていたのに、まさか襲われるとは…

 とりあえずこれ以上めんどくさい事になるのは御免なので、こちらから攻撃はしないでおくか。


 俺は開けた場所から少し下がって通路に入り、通路にセリナを下げて前から襲って来る兵士達との戦闘を開始した。


「なんて奴だ…城の兵士達の攻撃を全て凌ぐか…」


 俺は襲い来る兵士達の攻撃を全て弾いて行く。

 最近、多対1の戦闘が多いなぁ。

 まあ国と戦ってるから仕方ないんだけども…


「別にラグナード国に反逆したいんじゃないんだって!とりあえずセルジュ様を連れてきてくれ!」


 俺は襲って来た兵士達を返り討ちにし、やられて気絶した兵士達は山のように積み上がっていくのだった。


「っく…こうなれば対軍隊用の兵器を…」


「先程からの騒ぎは何ですかお父様!」


「おお、セルジュにレオナルド!今お主に会いたいと喚く城への侵入者が居ってだな」


「僕にですか?」


 国王の後ろから2人の人物がやって来て、その人物の顔を見てセリナは大声で叫んだ。


「セルジュ様!」


「君は!セリナ!?」


「む?知り合いかセルジュ」


「はい、僕がこの世で一番愛している女性です」


「なんと…」


「セリナ、なぜ君がここに!」


「えっと、レオナルド様に婚約の為にと呼ばれたので」


「なに?兄さんそれは本当なのかい?」


「はっ、馬鹿な!なんでこの私がそんな田舎臭いガキと婚約なんかを」


「セリナを馬鹿にするのは兄さんでも許さないぞ!」


「っち、兄に生意気な口を!それに証拠も何もないじゃないか!」


「じゃあ、セリナを呼びに来たポルナードを連れてきてもらえばいいんじゃないか?」


「ふん、ポルナードは今─」


「まあ、まだ戻ってきてはいないだろうけどね」


 俺がレオナルドが喋っている途中に口を挟むと、国王様が俺に話し掛けてきた。


「なんで貴様が知っておるのだ?」


「昨日、俺達の所にやって来たからです。ポルナード以外の騎士は剣が折れていると思いますよ?」


「ふむ、確認させよ。それが本当であれば貴様らの事を信用しようではないか。しかし、それまでの間フードの貴様は拘束させてもらうぞ?もし嘘であれば…分かっておるな?」


「まあ、良いですけど。でも、そこのレオナルドって言う人が隠蔽工作しないか確証がないと、俺も流石に命を掛けるわけには行かないなぁ」


「良かろう、我の直属の部下に監視させておこう」


「じゃあ一応、信じて拘束されますよ」


 俺は刀を納刀した後、両手を挙げて近付いて来た兵士に拘束されたのだった。


「リデルちゃん…」


「大丈夫、何も嘘はついてないから心配ないさ」


「では、連れていけ」


「セリナは安全に保護してもらえるんですよね?」


「リデルちゃんでいいかな?セリナはこのセルジュ=ラグナードが責任をもって預からせてもらうよ」


「お願いします。まあ、俺の物じゃなくどちらかと言うと貴方の物ですけどね」


「ぼ、僕の…」


 王子様はピュアなようで、顔を赤らめていた。

 そして、俺はそのまま連れていかれたのだった。


「お父様!あんな下民の言うことを信じる必要はありません!あんな下民、今すぐ処刑に致しましょう!」


「それはならん!それに、信じるかどうかは時期に分かる。その間はレオナルドよ、変なことは起こすでないぞ」


「何故この私が!あの様な汚ならしいガキに!」


「分かっておるのか?貴様が今この城に危機的状況を招いていることに」


「何だって?」


「あの者は、戦えない人物を連れてここまで浸入しておるのだぞ?それに、あの者はまだ本気ではない。我の今まで培ってきた経験があの者を本気にさせてはいけないと言っておるのだ」


「そんな危険な奴は拘束している今こそ!殺してしまえばいいのだ!」


「はぁ、レオナルドよ、貴様はそこまで頭の悪い人間であったか?」


「この俺が頭が悪いだと!では、言わせてもらおう!あなたは老いて臆病になったのだ!コンビナート国が何かしていてもどっしり待つだと?笑わせるな!あんな国此方から攻め滅ぼせば済む話なのだ!」


「おい、誰かこの愚か者を牢に連れていけ」


「なっ!?」


「弟への嫉妬でそこまで狂ってしまっていたとは、それは我のせいでもあるかもしれぬな…レオナルド、貴様は道を誤った、今回の事が事実であれば貴様との縁は切らせてもらう。その場合時期国王はセルジュに任せよう」


「ふざけるなぁあああ!あんなガキのせいで俺の人生が狂わされてたまるか!俺が王だ!この国は全て俺の物なんだよぉおおおお!」


「狂わせたのは貴様自身だ、この愚か者を連れていけ!」


「離せ!俺を誰だと思ってる!」


「黙らせよ!そいつはもはや王族ではない!」


 その後、レオナルドは牢に連れていかれた。

 翌朝にポルナード達がラグナードに到着し、騎士達の剣が折れている事が確認され、俺は無事に解放された。

 俺は解放された後国王様に呼ばれ、呼ばれた場所に行くと、国王様とセルジュ王子とセリナが居たのだった。


「リデル殿、この度は愚息がご迷惑を掛けた、すまない」


「いえ、事情があったとはいえ、城に浸入したことは事実ですから…普通に処罰されると思いましたよ」


「そんな事僕がさせませんよ、セリナがもし兄さんに奪われていたらと思うと、貴女には感謝してもし足りませんよ」


「本当にありがとうございます、リデルちゃん!」


「良かったなセリナ、これでセルジュ王子は国王になることが確定したんだろ?」


「我もそろそろ隠居したいのでな、セルジュに少しずつ引き継いでいこうと思う」


「僕が国王になれば正式にセリナにプロポーズしようと思ってます」


 言った方のセルジュも、言われた方のセリナも、どちらも俯いて顔を真っ赤に染めていた。


「じゃあ俺はそろそろ行くよ」


「ふむ、リデル殿良ければ騎士に取り立てるがいかがかな?」


「いや、騎士はやめておくよ」


「何故だ?騎士は冒険者憧れだと聞いていたんだが」


 なんかデジャブだな。


「俺は何者にも縛られず、自由に生きる冒険者ですから」


「そうか、では、去らばだ。それと今回の件は他言無用で頼む」


「分かりました、約束しますよ」


「ありがとうございましたリデルちゃん、また会いましょうね!」


「色々ご迷惑をお掛けしましたリデルさん」


「ああ、末長くお幸せにな!」


 そして、俺は3人に見送られながらラグナード城から飛び出していったのだった。

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