ディスティニー・アンダーグラウンド

羽村びおら

1の1

 時計が0時をまわった。




 「俺達の魔法がとけちゃったね…」




 麻也(まや)がそう言うと、諒(りょう)は答えに困ったようだったが、




シャンパンのグラスをガラスのテーブルの上に置くと、




「ああ、まあね。」




と彼らしくもない歯切れの悪い返事をした。




 イギリス系の血も流れている、研ぎ出されたような美貌と眼力がずば抜けた、カリスマボーカリストの諒。




 そしてその横に立ち、彼の恋人としてステージもプライベートも助け合ってきた中性的な美貌のギタリストの麻也…




 今夜はグラマラスな二人のロックバンド「ディスティニー・アンダーグラウンド」の東京ドームでの解散コンサートの夜だった。




 一次会だけの打ち上げもすませ、2人は今、すっかり疲れてしまって、スーツ姿のまま、ドームホテルのスイートルームのソファの上で脱力していた。




 麻也はぼんやりと諒の茶色の短い髪を眺め、諒は麻也の肩までかかるふわふわの黒髪を見ていた。



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