スーサイドダイアリー
川戸 小判
第1話 実話
これは筆者がまだ中学生の頃に体験した実話です。
当時住んでいた家は海沿いにある一軒家でした。
学校まで5kmの道のりを毎日、自転車で通学しておりました。
その日の事はよく覚えております。
まだ衣替えしたばかりの6月のはじめでした。
夜半に降った雨があがり、曇り空の肌寒い日だったと記憶しています。
私は学校へ向かう唯一の道路を必死に自転車を漕いでおりました。
ふと、海側にある松林の方を向いた時に奇妙なものが見えたのです。
150mくらい先になるでしょうか。
そこには普段人などいない場所なのに松の木の下で、白い服を着た人がこちらに向かって手を振っているのです。
私はぎょっとしてしまいました。
朝の7時半にそこに人がいる理由は全くないのです。
というより、その場所に人がいた事は一度もない、そんな人気のない所なのです。
その光景は今でもはっきり頭に焼き付いております。
とても奇妙で何故か恐怖を感じる光景でした。
当時は多感な時期です。
中学生だった筆者も純真な子供でした。
幽霊の存在なんかも信じていた頃でしょう。
私は凄く気になるのに2度見はしませんでした。怖くてできなかった。
幽霊かもしれないと思った私は、自転車を漕ぐ足に一層力を込めて学校を目指しました。
私がその日、学校でどのように過ごしたのか残念ながら記憶にありません。
今から想像するに、友達に幽霊を見たと言い触らして回ったのかもしれません。
覚えてはおりませんが、私は体操部に入っておりましたので、部活が終わってから家に帰ったのでしょう。
暗くなった帰り道はさぞや怖かったと思います。
次に記憶があるのは学校から家に帰って母と話しをした時のことです。
学校から帰ってきた私に、母が開口一番で告げたことは「××の松林で首吊り死体が見つかったそうよ」というものでした。
ええ、そりゃあもう驚きましたとも。
私はその日の朝見た事を母に事細かに説明しました。
母は幽霊の存在をなんとなく信じているような人だったので、すぐに私を玄関に連れて行き、お清めだと言って塩をふり撒きました。
母の独自の解釈では、手を振っていたのは私を黄泉に
以上の事は筆者が中学生の時に体験した紛れもない事実です。
ですが……この話には続きがあります。
実は亡くなられた方というのが、クラスメイトの一人と親戚関係だったらしく、その女子生徒から自殺現場の詳細を聞く事ができたのです。
彼女が言うには、亡くなられた方は重い鬱病を患っておられ、普段から自殺衝動があったそうです。
そして、その方がロープの代わりに使ったのが白い布だったらしいのです。
私が手を振っているように見えたものは実はその布だったのではないか?
今となっては確かめようもない事ですが、それが真相だろうと思っています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます