ゲルデナの雷龍神、その5―ペレデイスの家にて―
雷龍神ハンスは、新たにペレデイスを雷龍戦士に選んだ。ふと、そのことについてリタは疑問を感じた。
(歴史の中では、『ハンスは何か起きた時のために、毎日体を鍛えていた』とあった。ペレデイスにもそんな特徴があるから、ひょっとして彼が雷龍神の生まれ変わりなのかな?)
神殿の呪いを解き、リタ達はゲルデナに戻って来た。
残り一人の龍戦士を捜す準備に入るため、三人の龍戦士は一度、ペレデイスの家に泊まることにした。街に戻って早々、四人の龍戦士はネテリウス族長の屋敷を訪れる。だが、四人が神殿に行く前と同じように、ネテリウス族長はペレデイスが丸太を壊した場所にいた。リタ達の気配を察知して、族長が振り向く。
「リタ、君達には本当に感謝している。君達が神殿に巣くう召喚獣を倒してくれたおかげで、赤い雲も姿を消したようだ」
ネテリウス族長は、空を見上げて言った。
「それで、今日はどうするのだ?」
「今日は、ここに泊まっていきます。私達は雷系魔道師との戦いで、疲れてしまいましたから」
ナンシーが答えた。ネテリウス族長も、その意見には同意している。一日の疲れを取るには、休息のために街に泊まるのが一番だ。リタはそう考えていた。
三人はペレデイスの案内で、再度彼の家を訪れる。彼女達が連れられたのは、一見するとどこにでもありそうな藁葺き屋根の家だった。だが、三人は決して文句は言わない。泊まれる場所があるだけでも、私達は感謝しなければならない。少なくとも、リタはそう思っていた。
家に入ると、絵の具とパレット、そして画面いっぱいに色が塗られたキャンバスを揃えた男性が、椅子に腰掛けている姿が見えた。
「お帰り、ペレデイス。おや、その子達は?」
「ああ、紹介するよ。左にいるのが砂龍族のリタ、真ん中にいるのが火龍族のナンシー、そして右にいるのが水龍族のヨゼフ」
ペレデイスの紹介に続き、三人は軽くお辞儀をする。ペレデイスが、簡単に事情を説明する。
「今日は、我が家に泊まるらしい。それと、父さんに話しておきたいことがあるんだけど、後で良いかな?」
《話しておきたいこと》という言葉に反応してか、ペレデイスの父は急に顔を曇らせる。それはまるで、「話しておきたいことがあるなら、今ここで、ちゃんと言いなさい」と言いたげな顔だった。その表情に、四人は怯んだ。
どことなく近寄れない空気が、部屋中に流れ込む。父親はリタ達を巻き込まないよう、先に部屋に行ってなさい、と言った。
リビングには、ペレデイスと両親の三人だけになった。彼らは、しばらく黙り込む。だが、その沈黙を、ペレデイスが先に破った。
「父さん、俺は明日からリタ達と一緒に旅に出る。彼女達の役に立てるかはわからないけど……」
戸惑いながらではあったが、ペレデイスは自分の気持ちを、親に伝えることができた。父親はペレデイスの方をまっすぐ向き、宥めるような眼差しで彼を見つめる。その様子を、リタ達は二階からこっそりと覗き込んでいた。
(ペレデイスが私達と一緒に? どういう心境の変化だろう)
リタはわからないなりに、雷龍親子の会話を盗み聞きしている。その時、三人は驚異的な言葉を耳にした。
「ペレデイス、お前が新たな雷龍戦士に選ばれたことは、わかっていた。玄関にいた時、鎖鎌がちらっと見えたからな」
父親はまるで、ペレデイスが短期間の旅に出ることを予期していたかのように言った。それを慌てて、母親が制止しようとした。だが、彼女の意見を認めたくないのか、父親は彼女を睨みつける。
「お前は雷龍神ハンスに選ばれたことを、単なる偶然だと思っているかもしれないが、それはお前自身が心の中で願っていたことだ」
父親は、毎日息子が丸太を使って何かをしているのを思い出し、そのうえで思い思いのことを話した。
(俺は確かに、日々強くなりたいとは思ってたけど、それが今回の出来事と、何の関係がある?)
ペレデイスは疑問を持ったが、父親はそれ以上は何も言わなかった。彼は父親が、短期間の旅に出ることを許してくれたのだ、と勝手に解釈していた。その後、彼は自分の部屋に戻った。その通路の途中に、リタ達がいたのに気づき、彼は顔を曇らせる。
「そんな顔しないでよ。これも、あなたのことを思ってのことで……」
ナンシーは、誤魔化すように言った。だが、ペレデイスは怒らなかった――というよりはむしろ、穏やかに言う。
「まあ、父さんが何も言わないってことは、大抵許可するってことだからね。というわけで、明日からよろしくな、リタ」
「もちろんさ。仲間は一人でも多くいた方が良い」
ペレデイスの同行を、三人は迷いもせずに受け入れる。その後、リタ達はペレデイスの家で夕食をとり、一泊した。
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