テスト小説

博多市

怪奇!ちくわの恐怖

PHPerにあらずんば人にあらず

‏長芋の煮物には巻かれろ‏

 星の少ない夜だ。私は首を戻して、屋上から見渡す街の風景に目を移した。

 心は驚くほど澄んでいた。欄干から体を突き出し、校舎の縁から真下を見下ろすと、そびえる壁から突き出した玄関口が、街灯の光を反射してキラリと光った。

 本能的な恐怖が、脊椎からにじみ出るように体を侵す。だがそれももうすぐ終わりだ。この欄干を乗り越えてひと思いに飛び降りれば、それでもう何も感じなくなる。

 月が街を照らす17歳の夜、神無月めぐみは自らが通う高校の校舎で自殺を試みようとしていた。

 死にたい、と思うような理由は何一つなかった。ただ、と思った。試験勉強は大変だが、それを苦に命を断つほどではない。クラスの同調圧力は鬱陶しいが、それだけで人生やめたくなるほどじゃない。かなで

 奏が薬を飲んで死んだと聞いたとき、不思議と悲しみは生まれなかった。かわりに罪悪感があった。奏が絶望して見捨てたこの世界に、何食わぬ顔で生き続けることが何より苦しかった。奏がいないことではなく、という事実によってめぐみは苦しんだ。

 もう一度、空を見上げた。

 都会の星空はくすんだような灰色で、思い出したようにところどころ光る星が小さく寂しそうに瞬いている。綺麗というよりも何かおどろおどろしい化物が住んでいそうな、きたない闇がめぐみの天上に広がっていた。

 ふと思った。人が死んだら星になるなら、星空は人類の共同墓地だろうか。

 皮肉なことだ。

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