第106話 競売最終日

 競売最終日。


 最終日というだけあり、競売会場に集まる人は5日間の中で一番多い。集まる品も品質が良い物が揃う。この最終日だけに参加するという人もいるくらいだ。


「いやぁ、一仕事したなぁ」


「マスター、結果は上々で?」


「うん。あれはだいぶ反感持たれてたみたい。あの人も殺っちゃっていいよ?バレないように」


「了解しました」


 いやぁ、好色家の事調べたけどだいぶ酷いね。異種族趣味の色情魔。奴隷を買っては使い潰し、売り払う。売られた奴隷はその後その方面では売れないから奴隷としての価値がほぼ無くなり、誰にも買い取られずにいる、らしい。


 本当かどうか確かめに奴隷商に行ってみれば、かなりの格安で異種族の女性が売られていた。奴隷商の親方は少し金を握らせれば簡単に口を開き、好色家についてペラペラと話してくれた。


 一応貴族で、権力があり金も潤沢に持っているため高値の奴隷も買ってくれるが、売ってくる奴隷の事を考えると経営が厳しくなっているらしい。買い取らなければいいのでは?と思ったが相手は貴族。そんな事をすれば経営すら出来なくなるんだとか。


 まあつまり厄介な貴族様って事らしい。


 今日だけはミアには暗闇の中にいてもらう事にしている。申し訳ないけど安全の為に一応ね。


「どうもテツジョウ殿。今日はお互い良い物が手に入れられるといいですなぁ?」


 なんかニヤニヤした好色家が僕の方に来た。多分、ミアがこの場にいないからエバーさんが仕事したと思ってるんだろうね。


「そうですね〜」


「では私はこれで失礼しますぞ」


 あーあー、あんなにニヤニヤしちゃって。自分がしましたよって言ってるようなもんじゃん。分かってますけどねぇ。


「じゃ、行こうか」


「はい」





「お集まりの皆さん!とうとう最終日でございます!最終日は特に力の入った作品が多くなっております!買い取れるよう頑張って下さい!それでは始めましょう!」


 司会の言により競売が開始される。


「エバーからの連絡が無いのが不安だが奴の近くに妻はいなかった。作戦は成功しているはずだ。通告もエバーがしているはず。これでシークレットは私のものだ」


 商品リストにめぼしい物はない。少し気になるのは奴隷だが、容姿次第であろう。

 国王様が手にしようとしていた物が手に入れられる。もし国王様が望むなら渡してやってもいいが、研究、複製などをしてからだな。クックックッ。





「とか考えてそうだよね」


「マスターを甘く見過ぎですね」


「ご主人は強いんだぞー!」


「まあそう思っててくれた方がいいよ。さてさて、何が出てくるかな」


 今回はシークレット一点狙いだ。お金もクロのおかげでかなりある。まあ大丈夫でしょうね。最終日に何が出てくるか……。




 シークレット以外の商品はそれなりに落札されていた。シークレットは取れないと思っての事だろうね。多分、僕と好色家が競ると思ってるんでしょう。まあ、間違いじゃない。


「さあ!シークレットのお時間です!最終日のシークレットはこの商品!」


 布が取り払われる。そこから出てきた物は、『十字架に悪魔と鎌』が付いていた。リンの刀、そしてクロの足にあるマークに反応を示している。本物だ。


「あれは……何?」


「見た目はどうやら鍵のようですが……。マーク付きの物は性能の判断が見た目で出てきませんから」


「ご主人が調べてみればー?」


『鑑定の魔眼』で見てみても鍵としか表示されない。効果も分からないし、なんだこれ。


「クロの方は?」


「鍵としか。マスターの方もそうなのですね。何に使用するのかさっぱりですね」


 あの占い師なら知ってるだろうし、落札して出てきたら聞いてみようか。


「さて、100金から始めましょう!皆様どうぞ!」


 司会が初期金額を言うとそこかしこから札を上げて値段を吊り上げていく客達。これは僕が雇ったキャストだ。ある程度値段を吊り上げて欲しかったのと、好色家に僕以外にも敵はいるぞって牽制みたいなのしときたかった。まあ吊り上げは700金くらいまでって言ってあるんだけどね。ちゃんとした依頼として報酬前出しでやってるからみんなちゃんと仕事をしてくれる。しなかったら冒険者としての経歴に傷が付くからね。あ、報酬は武器とかね。


 途中で僕も吊り上げに参加しつつ好色家を見ればそこまで慌てた様子はない。まあ値段が上がるのは予想してただろうからね。


 そして700金まで来たところで吊り上げをしてもらったみんなは徐々に引いていく。


「さあ今回の競売もお二方の対決となりました!どちらが競り落とすのでしょうか?」


 僕は800まで吊り上げる。好色家も負けじと900まで吊り上げてくる。


「マスター、金策完了致しました。1500までいけます」


「ありがと。1000」


 僕が1000まで上げれば好色家は顔が歪む。多分、そこが限界なんだろうね。こっちはクロにダンジョンで稼がせたり作ったものを売らせたりしてたからね。僕が竜を倒せるんだから当然クロだって倒せる。竜の素材は貴重だからかなり売れる。


「ぐっ……1100」


「1200」


「1300っ!1300ならどうだ!」


「1400」


 1400に上げた途端、好色家は放心した。多分、もう無理なんだろう。


「他にあげる方はいませんね?決まりました。最終日シークレットを見事落札です!」


 よしよし。無事ゲット出来たね。まああの好色家にとってはこの後が大変だろうけどね。

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