第50話 燃える街
ダンジョンから出ると、街は燃えていた。
「なっ……。いったいどうなってるんだ!?」
街のあらゆる場所から火の手が上がり、瓦礫が散乱していたり建物が焼け崩れたりと酷い有様だった。
「……そんな!?アンシア!!」
リンが一人走り出す。方向的にギルドがあった方だ。僕も隼人達やミアが無事か確かめたい……。だけど、ここでリンを一人にしてしまって何かあったら大変だ。
「リン待って!一人は危ない!」
結果、リンについて行く事にした。この火の街を作り出したのが誰だかわからないが、リンか僕、仲間を狙った奴が仕掛けたものだと思う。可能性が高いのがリン、次点で王女って所かな。リンは今回の件の被害者で、王女は前回の被害者だし。仲間の方にはアンヨドのギルド長がいるはずだ。きっと大丈夫だと信じるしかない。
「……アンシアぁ、アンシアぁ」
「こんな状況じゃあ、気配探知も意味をなさないか……」
リンが必死にアンシアさんを探す中、僕は気配探知をしてみたが、個人を特定出来るようなものではなかった。火災により沢山の人が逃げ惑い、我先にと走り出している状態だ。当然、人は集中し気配も集まる。
「まだ、避難も出来てない……。それに混乱もしている……。火が上がってからそれほど時間は経っていない?」
ここにもギルドはあり、冒険者はいるはずだ。今は火災だから解除されているかもしれないが、出入り禁止だったのだから。ならその中に水魔法のスキルを持っているやつはいなかったのか?ここはダンジョンがある街だ。最低1人2人はいるはずだ。ならどうして消していない?どうして……
「……アンシア!アンシア!大丈夫!?」
「うっ……この声は…リン、ですね?よかった……無事、だったのですね」
僕が思考している間にリンがアンシアさんを発見したようだ。しかし、怪我が酷い。身体の至る所に切り傷があり、左腕が肩から無くなっている状態だ。血も相当量出ているはず。早くしないと手遅れになる。
「リン!回復魔法が使える人の所までアンシアさんを連れて行くよ!」
「……うん!」
確実なのは仲原さんの所まで連れて行く事だ。それには見つけなければいけないのが…………あった。ミアの気配だ。周りに人数分の気配もある。みんな無事か。
「こっちだ。アンシアさんになるべく刺激を与えないようにして!」
ミア達がいたのは街の中央だ。みんなで円形になって周囲を警戒しているようだ。
「ミア!それにみんなお待たせ!」
「テツ君!」
「鉄!」
「鉄条君!」
声をあげたのはミアと隼人と仲原さんだ。他のみんなも声には出さないまでもホッとしているような感じだった。
「仲原さん、頼みがあるんだ!回復魔法をお願い!」
「……アンシアを助けてっ」
後ろからついてきたリンが抱えていたアンシアを見て驚愕し、すぐに回復魔法をかけ始めてくれる。
問題解決とはいかないが、少し余裕が出来たか。
「隼人、いったい何があったの?」
「そうだな……。ついさっきか。俺たちは宿の中にずっといたから気付くのが遅れたが、誰かが火を放ったらしい。それも魔法のだ」
「魔法、だって?」
「ああ。犯人はわからず、見た人は凄い遠距離から火球が飛んできたって話だ」
遠距離からか……。しかし魔法にも射程距離というものは存在する。あまりにも離れ過ぎていると当たらない。
「でもそれだけならなんでこんな風に?放火されたなら消火すればいいじゃないか」
「気づいた人はみんなやろうとしたらしい。だけどな、やろうとした人達全員に火球が飛んできて、邪魔をされたんだ」
なるほど。だからこんな状況になっているわけか。でもそれなら
「誰かが消火する時に火球から守る役割がいれば出来るんじゃないの?」
「それは俺たちがやろうとしたんだけどな。そしたら今度は火球が全方位から襲って来たんでこれは無理だってなったんだ」
全方位からの火球?しかもそれも遠距離だったのだろう……。いったいどんな風にすればそんか精密さ、正確さが出せるんだ。
「その全方位火球で怪我は?」
「それについては大丈夫だ。レオンさんが助けてくれた」
レオンさんっていうとアンヨドのギルド長か。ちゃんと依頼は守ってくれてるわけだね。
さて、いったい誰が火球を放っているんだ?アンシアさんの怪我もある。2人、もしくは近接も出来るかなり強い1人って事になるか?いや、数はもっと多いかもしれないな。全方位火球はタイミングを合わせて複数人で出した可能性もある。
こっちには今の所手がない状態か。せめてアンシアさんの治療が終わって話せるようにならないと動けない。
(魔力把握を外に向けてやればわかるんじゃないか?火球と同じ魔力を感じとればいいんだからな)
それだとまた誰かが怪我する可能性が出てくるでしょ。
(お前がやればいいんだよ。把握しながら自分の身を守る。出来るだろ?)
出来なくはない、かな。じゃあやってみるか。
「隼人、ちょっと離れるから周囲の警戒はしといてね」
「どうせ無茶してくるのは分かってるが……。ミアさんは連れて行け。こっちよりそっちのが絶対に安全だろ」
ミアを?……危ないだろうからなぁ……。レオンさんの近くの方が守ってもらえそうな気がするが……。
「連れてってください!私だって役に立ちたいです!」
…………。しょうがないか……。
「わかったよ。連れて行く。だけど、怪我だけはしないでね。絶対に」
「はい!」
さて、どうしたものかな……。
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