もう七年も前なのか その5


 俺が揺れる騎馬の背にトロワの奴を括りつけ、走り出してからしばらくたった。

なんだかんだ、アニーゼと別れてから既に数刻が経過してしまっている。最初は解散した場所で合流するつもりだったのだが、今向こうはどうなっていることやら。

最悪、本家に仲介を頼めば合流自体は難しくないだろうが……。


「……おい、トロワ。こっちで本当に間違い無いんだろうな」


 いまいち要領を得ない説明でイメージし辛いのだが、どうやらこの魔王、一度接触したことの有る相手ならある程度の範囲をサーチする事ができるらしい。

自称「ちょっとした呪術」らしいが、どうなのやら。まぁ、魔導家の連中もやって出来ないことは無いのだろうが……タロットとかいう呪術道具も怪しいもんだ。

当のトロワはと言えば、今は縄も解かれ、俺の背にしなだれかかって馬に振り落とされないよう懸命に抱きついていた。

普段ならその柔らかさや甘い匂いに少しはドキっとするのだろうが、今は不思議なほどにそういう気持ちが湧いてこない。


「言う゛っていっだぁぁぁ……言っだのに゛ぃぃぃ……」

「あーもううるせーな悪かったよ! いや、ていうかお前が悪いことしたんだからな!? この程度ですませてやっただけありがたいって思えよホントは!」


 ……それというのも、こうしてグシャグシャの涙と鼻水を俺の一張羅に擦り付けられている感触が有るからなのだが。

流石のトロワも、走る騎馬に手足を縛られた状態で乗っけられ、飛んだり跳ねたり顔が地面すれすれになったりするのは非常に心臓に悪かったらしい。

掴みどころのないキャラを気取っているようだが、存外精神的に脆いなぁこいつ。

キャラ変えるようにアドバイスしてやるべきなのか?


「うぅぅ……うつ伏せで俵積みだったからまだお腹がシクシクする……女の子の下腹部を傷つけて、子供が産めなくなったらどうすんだよぅ」

「そりゃ人類にとっては平和になるな。んで、このまま真っ直ぐで良いのか? そも、真っ直ぐ進めてんのか?」

「あー……まぁ、気持ちちょい左めだよ、セメントおじさんめ……」


 その一言に合わせて馬体を高く跳ねさせると、キャーキャー叫びながら背中のがひっついてきた。

道の前に木の根っ子が張り出していたからであり、別に他意はないはずである。

しかしこんにゃろう、やっぱり反省の色が見えねーな。もうちょっと鼻の穴が広がるまで俵にし続けてやるべきだったか。


「……で? 何でまたこんな事しやがった。デュティの能力、ありゃ何だ? いや、そもそもお前、何が目的なんだ」

「ぐすっ……ちゃんと答えるから、言葉を一気に浴びせかけないでくれ……えっと、まぁ短い方から順に行くと、デュオーティちゃんの黒いエンチャント――あれは本来、彼女の持っていた可能性があった"ものチート"さ」

「あんだとぉ?」


 チートっつーのは俺達が「勇者」の血を引いてる証明であり、1人に1つだけの宝もんだ。

当然、なんか妙にヤバい代物があらわれたりしないか、常に膝つき合わせて全員分把握してる。

光刃貴剣エンチャントノーヴル】だの【十中八駆ベタートリガー】だの妙に小っ恥ずかしいネーミングだって、いちいち当代【設定辞書データブック】の奴に命名されなきゃいけねーんだぞ。

なのにそれを……いや、そもそも、【設定辞書】ですら把握してない事をなんでお前が知っている?


「この事に限っては、僕は誓って嘘をついてないよ。まぁ、強いて言えば肯定して上げただけさ。どうやら、憎しみを強い意志で心の奥底に沈めていたようだから……その可能性を、ちょちょいとね」

「お前なぁ」

「まぁ、ま、とりあえず次の回答に行こう。どうしてこんな事したかだけど――それはもう、タイミングが今しか無かったからさ」


 露骨に話題を逸らされたことは分かったが、質問したのも俺自身である。

とりあえず、一通り話を聞き終えるまでは大人しくしておこう。タイミングとはいったい何のことだ?


「知っての通り、僕は兄に命を狙われてる立場だ。そこはフカシじゃないよ? 本気で兄は僕を殺そうとしているだろうし、僕が死んだら人類ピンチだ。覚えといてくれ。……で、その上で言うけど、兄に付き従ってる人材だって別に畑で採れる存在じゃあない。僕が勇者の子孫たちに保護されたと報告があれば、一旦引きあげ、改めて手を考えるくらいはするだろう」

「……無闇な消耗は避ける、と?」

「人類圏に紛れ込めるルートも、人員も、決してタダじゃないしね。今こっちにきてるのは実質捨て駒さ。万が一襲われても、そのくらいなら多分どうにかなる」


 ……まぁ、それも道理か。

保護下になければ常に命の危機に晒されるコイツが、俺達に保護されたことによって僅かなタイムラグが生まれた。

その隙をついたと言えばそうなんだが、ひょっとしてコイツ、案外実力は有るのか?


「当然だろ? これでも僕は、魔王の依代に指定されるくらいには魔力を生み出せるわけだよ? 他にも色々と出来ることはあるし……『意外と』って位には強いよ、本業は詩人だけどね」

「その割に、不意打ちには対応できてなかったけどな」

「仕方ないさ。所詮箱入りのお嬢様だもん、暗殺は怖い。"だから今だ"」


 なるほどな、俺達もちょいとトロワを人畜無害だと誤解しすぎていたのかも知れん。

腐っても次期魔王な以上、人にタカるだけの生き物じゃあないと考えるべきだった。


「最後に、何が目的かだが……前にも言ったよ? 、僕は」

「……そうだな、それは確かに聞いた。デュティがとんでもない原石だってのもな」


 だが、それが意味する所はなんだ?

アイドル的に輝かせるというのなら以前やっていたが、その割には今の低迷にはさほど拘っていないように見える。

というか、それならわざわざ闇堕ちさせる意味も無い。以前のデュオーティと今のデュオーティ、どちらが美しいかと聞かれたら大半が以前のものを指差すだろう。


「……まさかお前、美しい物を汚した時が最も尊いとかいうヴァンダリズム主義者か?」

「おいおい! そんな捻くれた性癖と一緒にしないでくれ。僕は至ってノーマルだ」


 どうだろうな。だが、トロワにとって心外であることは間違いないらしい。

だからと言って信用する訳じゃ無いが……こいつが、自身のポリシーに嘘をつくのもちょっと考え難いな。


「くそ、だったらとっとと何を企んでるのか説明しやがれ! あんまり焦らすんなら、場合によっては……」

「しっ。そろそろなんだ、馬の足を抑えて静かにしててくれ。もう少しで僕が一番見たかったシーンが見れる……それが終わったらいくらでも説明するから」


 こちらが声を荒らげようとした時、トロワの白く細い手が俺の口元へと回り、声を抑えつけた。

鞍上が動揺したせいか、急停止をかけられた馬が前半身を上げて嘶く。

……幸い、俺もトロワも落下する事はなかったが。抗議の声を上げようとする俺を、トロワが微笑で包み込み。

そして唐突に、夜の森に剣戟の音が鳴り響いた。



 ……

 …………

 ………………



 ――デュオーティが、嬲られている。


「……くぁ……ふ、ええいもう……憎たらしい……!」

「憎たらしくなるのはこっちなの。ほーんと、おねえちゃんってば頑張るのね」


 相手にしているのは、ゾンビやスケルトンなど。

束になってるとは言え、普段のあいつなら敵や障害とすら呼べないレベルの相手の筈だ。

だが、今のデュティはしばたたく眼を必死にこすり、意識の糸を手放す寸前でどうにかそいつらを相手取っている。

見覚えのある金髪娘にはめられたのか。中には重い鈍器のような物を持った上位ゾンビもおり、ふらつく彼女の身体を強かに打ち付けていた。


「が、ふ……くそっ……【鐚怨ジンコート】ッ……!」


 ……だが、決してデュティもやられてばかりではない。

片手槍に松明のように灯るその黒炎を一振りすると、霊的な何かしらを喰らい尽くされたアンデッドたちが、次々と物言わぬ死体へと帰っていく。


「あー、もう! 見た目真っ黒な癖に対アンデッド即死とかなんなのそれ! 死体が残るから補充は聞くけど……霊を取り憑かせるのだって精神力要るのよ!?」

「はっ、そりゃ良いことを聞いたわね……アナタがまいるのが先か、ワタシが寝るのが先か、我慢比べといこうじゃないの……!」


 どうやら、メリーが取り憑かせた雑霊のエネルギーをデュティが吸収することによって、ギリギリの線の上で保っているらしい。

だが見るからにこれはマズいと、ここから【十中八駆】で狙い撃とうとした時、沈黙を保っていたトロワが俺の首に腕を回した。


「……おい、何のつもりだ」

「観客はマナーを守るものだよ、アジンド。こうして特等席に連れて来てあげただけで満足してくれないかい?」

「だから手を出すなってか? ふざけんじゃねえ。お前の命令を聞く筋合いはねえし、あんなんでも年下の家族なんだ」

「分かってるよ。だからコレは懇願だ。ね? 『』」

「あ……」


 甘く漂う林檎の芳香。耳元を柔く食む瑞々しい唇。

しまった、と思った時には手遅れだった。後は引き金を引くだけだった筈の指が、梃子でも動きそうにない。

あれだけ警戒し直そうし直そうと考えておいて、まだ俺は油断していたらしい。

……いや、俺じゃ警戒させてすら貰えなかったのか。本当に厄介だよ、悪魔って奴ぁ。


「て、めぇ……」

「なんだかんだ、僕としては君を良い友人だと思ってるんだ。実際に触れ合った期間は僅かだが……うん、もう少し歳が若ければ、君でも良かったのかも知れないな」

「何の、話だ」

「素晴らしい話さ。王道で、熱血で、誰もが憧れるような。そう例えば……」


 照準の向こうでは、今まさに翼を鈍器で打ちのめされたデュティが、地面にうつ伏せに倒された所であった。

メリー自身は、決して彼女の射程内に入ろうとはしない。あくまでもアンデッド共に指示し、じわじわと削り落とすつもりのようであった。

あるいは、何か時間を稼いでいるのか。どちらにせよ、勝機はデュティには無いように見える。


「そう、例えば。君は『巨人』が好きな方かい? アジンド」

「……巨人? サイクロプスか?」


 何がおかしいというのか、後頭部に顎を乗せたトロワがクスクスと笑う気配がした。

かたやデュティは、崩れ落ち、膝をつき、地に這うように移動するようになってなお煌々と黒い輝きを増している。

影色の輝きなどと矛盾したように聞こえるかも知れないが、他にどんな例え方をすればいいやら。

とにかくその黒刃エンチャントには、傷ついてますます人を圧倒する凄みが備わってきていた。


「く、そっ……なんで、このワタシが……ッ!」


 だが相変わらず四肢の力は弱々しく、瞼も瞬いて今にも閉じられそうな。

誇る双槍は連結され、今は一振りの両刃槍として彼女の杖代わりだ。

しかしその中で、その眼、その輝きだけはともすれば普段よりもずっと強く辺りを支配している。

憎悪の力、そして魂吸収のエンチャントだったか。酷く剣呑なはずのその黒光が、いやに気高く見える程に。


「しぶといの」


 その、有り様を。彼女があくまで龍で在る様を、畏怖を持って見ていたのはきっと俺だけでは無い。

呪いの眠気に苛まれながらも、打ちのめされては這い上がる彼女の姿を、何よりメリーが震えるように見下ろしていた。


「なんでまだ動けるのかしら。なんでそんなに、安らかな眠りを否定するの? 痛くて、憎くて、悔しいんでしょう? だったらさっさと夢に閉じこもってしまえば良いのに……!」

「……そんなのは、気に喰わない。他ならぬプライドが、そんな生き様を許容できないのよ。例え憎悪に飲まれようと、このワタシが背を向ける姿など憎々しくてたまらない!」


 デュティが振るう剣閃は黒く、夜闇の中でなお黒く。

だが彼女が黒一色に染まるほど、その濁った決意を抱くほど、不思議とその中に気高さのような物が見える気がするのは、何故なのだろうか。

……先に限界が訪れたのは、メリーの方だ。瞳に怯えの色を混じらせながら、必死の形相で切り札ジョーカーを切る。


「あーもう、だったらそのプライドを抱えたまま死んじゃえなの! おいで、メリーの最高の『おともだち』っ!」


 そして大きな地響きとともに、咆哮音が高らかに響いた。

森の地面を食い破り、鎌首をもたげる「」の全長は10メートル。

鋼よりも硬い鱗でその全身を覆い、分厚い皮膚の下では、ゲル状の脂が脈動してうねりを大地に与え続けている。


「――ドレイクモールッ!? があっ……」


 未だ身体のキレが戻らぬデュオーティは、こうして容易く人を飲み込むであろう嘴に挟み込まれてしまう。

翼も足も一咥えにされ、辛うじて両刃槍で左右からの咀嚼を抑え続けているだけだ。

その頼りない支えが外れれば、肉体強化の無い身体がどうなるかなど考えるまでも無い。


(おい、トロワ)

(……まだだ)


 見るからの窮地に俺は視線で訴えかけるが、同じく軽いジェスチャーによって静止された。

だが、デュティにあれ以上何ができるって言うんだ? あの様子、おそらくあのドレイクモールはアンデッドでは無い。

いくら【黒刃鐚怨エンチャントジンコート】でも、あの図体では生物本来の魂を即座に奪い尽くせる訳では無いらしい。

あれがアンデッドに特効だったのは、あくまで後から憑けた弱い魂だからなのだろう。

その点、ドレイクモールは違っている。あいつは多分、メリーの術によって魔族領から誘導され、そのまま人里近くで眠らされた生身の個体だ。


「ふふふ、どう? 大きくてたくましくて、とってもステキなおともだちなの。モンスターと言っても所詮は獣、夢で操るのだって簡単なんだから」


 ピンと伸ばした指先を口元にあて、メリーは蠱惑的に唇を尖らせる。

……今になって、俺は最初の街で倒した同種のドレイクモールの事を思い出した。なるほど奴め、そうやってこの地域のあちこちに都市災害級Bランクを埋め込んでいやがったのか。

目が覚めたドレイクモールは、同時にほぼ飢餓めいて気が荒く、人の抵抗があろうと構わず食い散らす。

森を、畑を、やがては街ごと喰らい尽くす「土地殺し」だ。この付近の街もそうやって、同じ様に混乱させるつもりだったか。


「おねーちゃんに眠る気が無いならもう知らないの。残念ね、折角その誇りとやらを捨て去ってまで力を手に入れたのに! うふふふっ」


 それを夢遊病状態で引っ張り出してきたのは、メリーにとっても切り札の筈。

だが冷静に指摘した所で、何か手が出る訳でもない。風前の灯火となったデュティを見て、やっとメリーは残虐に笑った。


「あなたが守りたかった民は、すぐにあなたに飽きて、ブロマイドを燃やし始めるわ。あなたが尊敬するおババ様とやらは、あなたを選ばなくて正解だったとホッとするでしょうね!」


 軋む槍柄を懸命に支え、歯を食いしばるデュティに喜々として罵声を浴びせかける。

それは相手の心を折るための意味も多少あるが、ほとんどはメリー個人の趣向によるものだろう。

幼いながらも美しく整った顔が三日月に歪む。そうして出てくる心の淀みが、何よりの馳走だとでも言うように。


「そう、あなたはもう誰からも見放されたの。いくらあなたが頑張ってたところで、やがては誰もが顔も名前も忘れ去るの! そして憎しみに染まったあなたを、メリーがお人形として生まれ変わらせてあげる! 恩知らずな村や街を、他ならぬあなたが焼き滅ぼすのよ。素敵でしょう?」

「……キャアキャアピイピイと、さえずって……」


 そして、メリーがダメ押しと言わんばかりに腕を高らかに掲げた。

デュティの持つ槍は今にもへし折れそうなほどにしなり、ミシミシと頼りない悲鳴を上げている。

彼女の肢体が魔物の口腔へ飲み込まれる――その瞬間、デュオーティの暗紫の瞳が、嘲笑するように輝いた。



「……アナタ如きが、本気でワタシに『』貰えると思って?」



 灯火程度だった彼女の光刃が、ドレイクモールという巨大な円筒を支柱に、燭台のように真っ黒に燃え上がった。

闇を照らすのではなく、より深い闇へと沈める様に。もはや月の光も通らぬほど黒く、冷たい。


「ワタシは、龍よ。誇り高きドラゴンの末裔……そんな八つ当たりじみた真似を、するわけが無いでしょう」

「な、何……? 何をしてるのおともだち! そいつを早く噛み砕くのよ!」


 もはや俺からじゃ状況も見えない中、メリーの焦り声がカン高く響く。

溢れ出る漆黒はなおも勢いを止めず、少し離れた俺達すらも陰すら生まれぬ闇の中へ引きずり込む。

パァン、と俺の隣から手を打つ音が響いた。トロワが興奮しだしたか。あいつめ、俺は身動きできないように縛っておいて。


「この誇りの中にドス黒い心があると信じたくなくて、ワタシはずっと見ないふりを続けていた。あるいは世を拗ね、ただ憎しみを垂れ流すだけの存在になれればそんな苦労からも開放されると思ってた。……上手く行かないはずよね。結局そんなの、逃げてることには変わりないのだから」


 ドレイクモールの苦しげな呻き声。ここからでも僅かに気怠くなるほどのソウルドレインを、直に食らっているのだ。

……【鐚怨ジンコート】のオーラは、吸収だけだった。そのエネルギーは、どこにも、何にも、行き着く事がなかった。

アニーゼが勝てるはずだ。吸えば吸うだけ腹の中にパンパンに詰まっていくのなら、やがてどこかに限界は生まれる。


「この憎しみ黒怨は、ワタシが勇者を目指したから。この誇り白銀は、ワタシが勇者を目指すから。今分かった、2つは最初からカードの順逆だった。ワタシの芯にある、たった1つの思いの『表れ方』に過ぎなかったッ!」


 迷い、苦しみ、そして決意を抱くことが少年少女の特権なら、俺からも祝報の1つでも届けてやるべきだろうか。

きっと、彼女はもう逃げない。勇者に憧れたことも、勇者になれないことも、全て受け止め――やがて、真に『勇者』と呼ばれる日が来るのだろう。


「ワタシの夢。ワタシの誇り。ワタシの失望。ワタシの嘘。全て繋がれ、旗を織れ! この黒くおぞましい憎悪の上に立つ、白銀しろがねの旗をッ!」


 ズンと、身体が重くなっていくのを感じる。黒い黒い帳の中に、白光の龍のシルエットが生まれる。


 ――その下に、眩い輝きを放ちながら少女が立っていた。


 白銀の翼と黒い髪をなびかせ、凛と。ああ、トロワはこれを見たかったのかと、思わず納得しちまうくらい。

誇り高く。嫉妬深く。そして……何よりも美しい姿で。アイサダ・デルフィニィ・デュオーティは、自身の双槍を振り下ろした。



「エンチャント――アマルガァァァムッ!」



 彼女の生み出す龍の吐息ブレスは、ドレイクモールの巨体を苦もなく飲み込み……

その前半身を完全に消滅させた所で、星光を隠す雲に大きな風穴を開けた。

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