030_2000 彼らが邪術士と呼ばれる理由Ⅰ~【前菜】硝煙白刃~
住宅地を周回しながら、《
【チョコマカと……!】
対して《バーゲスト》は後輪を滑らせ振り返り、斜め後方に走りながら、弾丸を
そして無反動砲を展開し、《真神》に向けて発射した。使うのは装甲貫通能力だけでなく、大量に破片をばら撒く殺傷能力も
しかし《真神》は走りながら、縁石の出っ張りを使い、同時にスピードとサスペンションとタイヤの空気圧を操る。
すなわち、跳んだ。小馬鹿にするようにオートバイは走りながら宙返りをする。回避された砲弾は、
無反動砲は軽車両を一撃で破壊可能だが、連射はできない。身軽な《真神》に当てるには、工夫が必要だった。
汎用機関銃は連射できるが、戦闘車両にとっては一発の破壊力は知れている。ならば強固な鎧がなくとも盾があれば、《バーゲスト》には充分だった。
【ドテッ腹に風穴
だから
【そう簡単に決着ついては、面白くないでしょう?】
だから
直接 《
二輪車の不安定さをあえて活用し、転倒寸前まで車体を傾けて車高を低くし、スピンしながら相手の攻撃予測線を回避すると同時に、《Quantum-electrodynamics THEL(量子電磁力学レーザー砲)》の高出力自由電子レーザー光線を放つ。
だが二条の熱線は互いの
【
《バーゲスト》とは、西欧の伝承に登場する、
【フフ……】
《真神》とは、人々に
【本気を出すのは久しぶりです! 楽しいですよ、《バーゲスト》!】
【だったら絶頂したまま破壊されなさい! 《真神》!】
車体名称とは似ても似つかぬロボット・ビークルたちは、四肢の代わりに二輪のタイヤで疾走し、牙の代わりに銃火器と《魔法》を応酬しあう。
△▼△▼△▼△▼
それに
民家に飛び移り、屋根の上を走り、
《魔法》を付与させて変形する銃弾――いわば『魔弾』を放つ。それが十路の本当の、《
『まさかこの程度じゃないよなぁ!?』
対する
防御のみならず、その合間合間で市ヶ谷は槍を振り回す。《
(
非常識な銃撃戦に、十路は走りながら感想を抱く。
市ヶ谷は《
ならば南十星を瞬殺することも、可能だったはず。
(なとせの件だけでなく、俺と
挑発を無視して思考が
《氷撃》による音速の固体空気が次々と屋根で
しかし稼げた時間は一秒ほど。
意図を
そして
直後に壮絶な火花と撃音が発生する。一合二合四合八合一六合三二合六四合。強化した筋肉で、人間離れした速度で鎌槍と
手する《杖》は武器の形をした電子機器。扱うのは《魔法》という名の超最先端科学技術。《魔法使い》と呼ばれる者たちは、十に満たない時間に百を超える攻防を行い、通称とは異質の激突を繰り広げる。
『ははっ、やっぱ一筋縄じゃいかねぇか!』
距離を開いた《真神》の車上で、市ヶ谷は陽気に、邪悪に笑う。
『楽しいなぁ……堤十路』
「殺し合いを楽しむような神経なんて、俺は持ち合わせてない。お前たちと一緒にするな」
向けられたシールド越しの餓狼の笑みに、十路はヘルメットの中で冷淡に返すと、なぜか一転し、市ヶ谷の声に薄い怒りが混じった。
『こんなくだらねぇ事、そう思ってないとやってられないだろうが……!』
まともな思考回路を持っている男なのだと、十路は意外に思うと同時に納得もする。
一般人の多くが誤解しているが、軍事心理学的には兵士といえど、敵を殺せないのが当然とされている。戦闘行為で明確な殺意を持って敵を殺せる、本当の意味で『戦える兵士』は全体の二パーセントほどしか存在しない。
そして軍事的な《
正当な理由で敵を殺したときでさえ、人はトラウマを抱える。そんな戦闘ストレス障害から逃れるために、きっと市ヶ谷はそういう意識を作り上げている。
そして。
(賭け、成功するか?)
ただでさえ危うい
【あなたの《
冷たい声でイクセスが口を挟むと、市ヶ谷の足下でカームが応じる。
【私たち《
だから《
彼らは半径一キロの範囲を周回しつつ、戦闘を中断して悠長に会話しているわけではない。十路は初弾を
『堤さん!』
状況を変えたのは、コゼットからの無線だった。打ち合わせ通りの準備と、
そして封鎖地域内を周回するコースを、先導する《真神》が取ろうとしたが、それより先に《
その程度では《
『なに考えてやがる……ッ!?』
進路を封じられ、攻撃回避の必要により、進行方向を変えざるをえなくなったことに、風に乗って市ヶ谷のうめき声が届く。
「さぁな! なにも考えてないだけかもな!」
市ヶ谷の問いに、十路はヘルメットの中で不敵に笑い、発砲を続けて追い立てる。
進路の先に突入時の消火剤で白く染まった、自衛隊車両があった。十路たちが突破した封鎖線の隅には、ワイヤーで拘束されて目隠しをされた、自衛隊員と警察官が地面に転がっている。
その
二人の《
「堤さん!」
ただ、コゼットが身元を隠すために借りて着ていたコートを、十路に返すために放り投げて。
そして、腕を精一杯伸ばして、装飾杖を掲げた。
風に乗って届いた片手でコートを受け取り、十路も応じて小銃を片手持ちで掲げて。
「「リンク!」」
声と《
金属音を響かせて触れ合うと、十路の脳内に新たな回線が確立された信号が
そしてベストの
二人と二台は、戦いの場を移そうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます