第22話 実験

時間を数時間戻そう。海桜女子高校で月野光莉が奮戦し倒れた時、人目のつかない校舎裏で電話をしていた奴がいた。

『もしもし。どうや?殺ったか。』ドスの効いた低い声で、その男の声は聞こえた。

「えぇ。奴は倒れましたが、とある女が救命救急をしておりますわ。どうです?殺りますか。」メガネをかけたインテリヤクザ風の男は答える。

『まぁ、ええやろ。今回はこんなものでな。そんで、あの毒牙は刺したんか?』

「勿論です。仮にあいつが目え覚ましても、既に悪魔に呪われていますからね。もう手遅れよ。」


『それにこの学校はえぇ女子の匂いがするわいのぉ。俺達は性欲の依代だからな。ここは聖地や。』

「秘密の花園はいい場所ですが、人に見つかると大変です。どうかもう少し遅い時間帯に襲うことは出来ませんか?」

『そうか。そうだな。検討してみるか。では、早いとこ戻って来い。』

「分かりました。身の危険も感じますのでそれでは失礼します。」インテリヤクザ風のその男は、時計のボタンを押すと一瞬で消えた。


一方その頃、某暴力団事務所では毒牙の作成が行われていた。

毒牙に刺されたものは、化物となる力を身に付ける。斬られない限りは。

「それでどうなんや?あの、月野光莉を焚き付けて攻めさせる相手は見つかったんか?時間稼ぎの為の。」

小太りの男は煙草を吸いながら言った。

「龍剛高校の等々力とどろき双磨そうまが一案です。あの男は女に対して凄い敵意を感じています。毒牙が入れば、その女嫌いから、きっとあの海桜女子高校を震撼させるでしょう。」

執事風の男が彼に言った。

「確か、龍剛の虎の異名を持つ男だったな。天月連合を壊滅まで追い込んだ伝説の男だ。一時は夜も眠れんかったな。」


天月連合…一時期、物凄い勢いを保っていた暴走族で昼も夜も問わず暴れ回っていた。警察が捕まえても捕まえてもまた暴走行為が行われるほどの規模を誇っていた。


双磨が天月連合を壊滅させた理由は、当時の総長にあったのだ。

彼は元々真面目な人であったが、女子から受けた虐めが原因で、中学校の時に不良と化したのだ。

そして当時、総長が付き合っていた彼女がそいつで、しかも総長自らが気に食わない双磨自身を潰す為に根回しをしていたのだ。


双磨は当時の総長を全力で殴りつけ、組織の解散を命じた。

同時に本来は退学及び傷害罪で少年院送りになるところを心神喪失によって無罪となった。

今は、高校2年で落ち着いて生活しているようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る