第18話 瀕死
「な!大丈夫か、光莉。心配だ。行かなきゃ。」俺…日野蓮司こと鳳凰院香澄は急いで光莉の元に足を運んだ。ここで死なれたら最悪な事態だ。
「誰か!AEDを持って来てくれ!頼む。」急いで光莉の元に走る。
生存率は一分一分下がっていくらしい。胸骨圧迫を繰り返しても生きられる保証はない。しかし、やるしかねぇだろ。
「光莉、頑張れよ。今助けてやるからな。」女子の身体は力が入りにくい。だけど、そうも言ってられない。大事な仲間をここで死なせるわけには行かないのだ。
周りには生徒が集まってきた。さっきの戦闘を見て先生達は日和見を決め込み、見て見ぬ振りをした。当然、光莉が倒れたことも無かったことにする。最低な連中だ。
「会長、何か手伝いますか?」
「あぁ。頼む。119番に連絡してくれ。くれぐれも警察と間違えないでね。」
これも、俺が悪かったんだ。太陽戦士サンライガーとして戦闘に加われば何も無かったかも知れない。
「光莉、助かってくれよ。」光莉の応答は無かった。
急いで、CPR(心肺蘇生法)を実行する。まずは、気道確保だ。
道場の訓練で二、三度かじったくらいだからな。実戦は初めてだ。やや不安があるが、そうも言ってられない。
光莉の顎を持って上に挙げる。
続いて、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回のサイクルに入る。
「1、2、3、4、5、6…」
これがなかなか辛いんだよな。でも、火事場の馬鹿力とか言うように、全然疲れを感じなかった。
「光莉、まだまだ遊びたいよ。…んっ」平素より胸ポケットに感染防止具を入れていたのが幸いだったよ。流石は鳳凰院だ。用意周到だな。人工呼吸も問題なく出来た。
2サイクル目に突入する時に、AEDが到着した。
「AED持って来ました。」
「ありがとう。」直ぐに本体を開けた。すると電源が勝手についた。凄いよなぁ。このシステム。
俺は、光莉の汗をタオルで拭き取った。そうしなければ、水滴に電流が流れ、危険な事になる。
『パッドを装着し、プラグを挿入して下さい。』
AEDの指示通りに動く。パッドにはどこに貼るか書かれている。
冷静になれば楽勝だ。
『心電図を確認します。手を触れないで下さい。』
「お前ら!離れろ。言う通りにしろ!」あーあ。キレちまったよ。でもそこまで強く言わんと離れやんだろ。
『心電図を確認しました。ショックが必要です。ショックボタンを押して下さい。』
「お前達!触ったら死ぬぜ!」ショックボタンを押す。
『ショックを開始します。手を触れないで下さい。ショックが終了しました。一時中断します。』
すぐ様胸骨圧迫30回と人工呼吸2回のサイクルに入る。
「私にもやらせて下さい!」2名ほど代わりを申し出た人が居た。幸いにも感染防止具は残り二つ。
「よし!胸の中央部にある胸骨をアップするんだ。リズム良くな。」
「会長、私、吹奏楽部ですよ。リズム感には自信があります。」
「私もコーラス部なので、自信はあります。」
「そうか。なら私の手拍子に合わせて胸骨圧迫を頼む。何回やったか忘れないようにな。よし頼むぞ。」
交代して、手を叩いた。事勿れ主義の現代にあってなんと気骨のある二人だろうか。周りに流されず、人を救うとは。俺は感心したよ。
三人でローテーションを組みながら何とか救急車到着まで耐えた。
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