第43話 ひょっとして三角関係!?

 とりあえず信号機トリオさんたちは、罪に問われることなく開放されました。

 良かった、良かった。


「アマンダ」

「なに?」


 でも帰り際に、信号機トリオのうちの一人、ちょっとポッチャリしているイエローさんが立ち止まってアマンダさんに声をかける。

 もしかして、アマンダさんと仲のいい人なのかな?


「その……父が来ているみたいだから、大丈夫かなって思って」

「あなたが気にしなくても大丈夫よ」


 アマンダさんは困ったように言うけど、イエローさんは軽く目を伏せる。


「でも、僕が君の話を父にしなければ――」

「もうっ。あなたのせいじゃないでしょ。いつまでも気にしないで」

「う、うん。でも何かあったら力になるから……」

「ありがとう、ランスリー」

「じゃあ、また」

「ええ」


 そう言ってぽっちゃりイエローさんは去っていった。


 むむむ。何やら訳アリの様子ですね。

 でも、下手に首を突っこんじゃダメだしね。ここは、知らんぷりが正解です。


 そう思って、抱っこしたノアールをモフモフしていたら、苦笑したアマンダさんが説明してくれる。


「彼はね、レーニエ伯爵の息子なの」


 ええええっ。

 あの腹黒タヌキおじさんの?


 でも、凄く人の良さそうな顔をしてたよ。全然似てなーい。


「そしてね、私の学生時代の先輩でパートナーなの」

「パートナーですか?」


 アマンダさんの説明によると、このアレス王国には王立の学園があるんだって。そしてその学園は騎士科と魔法科に分かれていて、貴族の男子は必ずその学園に通う決まりになっている。


 もちろん貴族の女子も学園に通えるんだけど、王都から遠い家の場合は家で家庭教師から勉強を教えてもらうみたい。


 学園には貴族だけじゃなくて裕福な商人の子供も通えるから、それでアマンダさんも通ってたんだって。


「ええ。学園では必ず上級生と下級生がペアを組むの。本当なら同性同士でペアを組むんだけど、学園に通う女子は多くないから、私たちみたいに男女のペアができるのよ」


 なるほど。そっかぁ。


 アマンダさんとレーニエ伯爵の息子のぽっちゃりイエローさんがペアを組んでたから、それでお父さんのほうに目をつけられちゃったんだ。

 確かにそれは自分のせいだって責めちゃうよねぇ。


「しかもね。ランスリーが私の前にペアを組んでたのはゲオルグなのよ。残念ながら私と入れ違いに卒業しちゃったんだけどね。それで、ゲオルグを慕ってランスリーがイゼル砦に来て、そのランスリーに誘われた私がここに来たってわけ。だから、本来なら出会うはずのなかったゲオルグと私がこうしてイゼル砦で出会ったのは、絶対に運命だと思わない?」


 手を組んでうっとりと頬を染めるアマンダさんは、どこからどう見ても恋する乙女だ。


 でも、うーん?

 なんかちょっと、ひっかかるなぁ。


 だってね。アマンダさんって、ゲオルグさんのことが凄く好きじゃない? こーんなに美人で性格のいいアマンダさんに迫られても相手にしないゲオルグさんって、好みの女性のタイプがアマンダさんとは全然違うからなのかな、って思ってたの。


 でもそれにしてはクッションを作ってあげたりとか、カーテンを縫ってあげたりとか。アマンダさんの部屋って、ゲオルグさんの手作りの物がたーくさんあるんだよね。


 それって、好きだから作ってあげてるんじゃないのかな、と思うんだけど、アマンダさんの告白は断ってるっていうし……。


 それが凄く謎だったんだけど……。


 こ、これって、もしかして、もしかすると……。

 三角関係なのぉぉぉぉ!?


 アマンダさんとゲオルグさんは、本当は両想いなんだけど、ゲオルグさんが仲の良い後輩のぽっちゃりイエローくんに遠慮して告白を断ってるとか。


 そしてアマンダさんはぽっちゃりイエローさんの思いに全然気がついてないとか。


 ぽっちゃりイエローさんは、アマンダさんの恋を応援したいけど自分も好きだからできなくて、そうしているうちに自分の父親がアマンダさんを後妻にしたいと言い出したとか。


 うわぁ。なんだかドラマみたいですよ!


「学園を卒業したら、たとえ貴族の後継ぎでも、最低二年間は騎士団に所属しないといけないんだけど、普通、貴族の嫡子は辺境騎士団じゃなくて王都の騎士団か近衛騎士団を希望するのよね。だからまさか、ランスリーがイゼル砦を希望すると思わなかったわ。でもそのおかげでゲオルグを紹介してもらえたんだから、やっぱり私とゲオルグは運命によって結ばれているのよ!」


 そっか。ぽっちゃりイエローさんが、アマンダさんにゲオルグさんを紹介したんだ。

 もし本当にぽっちゃりイエローさんがアマンダさんのことを好きなんだとしたら、複雑だろうなぁ。


 そんなことを考えていたら、フランクさんにお説教をしていたアルにーさまが私の横にきた。


「ユーリはもう屋台を回ったのかい?」

「まだです」

「じゃあ僕も一緒に回っていいかな?」

「もちろんです! わーい、嬉しい」

「あっちにおいしい砂糖菓子の屋台があったよ」


 さ、砂糖菓子!?

 食べたいです~!

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