第五十六話 魔導の塔のキャットシー

「ようこそだニャン」

確かにしゃべっていた。


「うわ、猫がしゃべった!」

「しぇべってるなァ」

「しゃべってるわね」

「にゃあにゃあかわいい、こっちおいでぇ」

猫が喋っても動じないメンバーであった。一人だけちょっと違うが。

ここはモンスターがしゃべる世界観なんだっけ?

そういえば人としか話してないから随分忘れてた。確か来た当初、モンスターがしゃべっていた気がする。あと、ジージ師匠も人語をしゃべるモンスターが出るって言ってたような。


「ご主人さまにいわれて様子をみに来たニャン」

「おお!親切!」

親切にも、挨拶に来てくれた、ということだろうか。

本当に大魔導師がいるのかどうかは、実際のところわからなかったので、少し安心した。


「ようこそ、戦士たちニャン、この魔導の塔を楽しんでいって欲しいニャン」

「ここの最上家に魔導師様がいるというのはほんとですか?」

率直に僕は聞いてみた。


「ほんとだニャン、僕のご主人さまニャン」

「やっぱりいるのか、やる気出てきた。」

確認できて、ますますやる気が出た。


「さきに説明しとくニャン、この塔は10階15階20階25階にボスが出てくるニャン」

と人語をしゃべる猫は教えてくれた。


「親切だ。」

「親切だナァ」

「親切だわ」

「にゃぁにゃぁ、こっちおいでにゃぁにゃぁ」

ミコルちゃん以外の全員が同じ突っ込みをした。


「ミコルちゃん、このにゃぁにゃぁ、は結構な上級な精霊だよ、多分。キャットシーっていう上級の精霊だよ!」

「にゃぁにゃぁはにゃぁにゃぁなの!」

ミコルちゃんに怒られた。


「よく知ってるな、人間。そう我こそはキャットシーにゃん」

「もしかして、キャットシーさん倒さなきゃいけないんですか?」

倒すのは大変そうだから、説明だけで通してくれると助かる。


「そんなことないニャン、ここは説明が終わったら通れるニャン。そこから一言だけ大魔導師様からの伝令にゃん。ずるは良くない!」

「やっぱり見てたんですね!わかりました!」


「というわけで、ここは単なる説明階にゃん」

どうどうと胸を張ってキャットシーは言った。


「自分で言っちゃたよ。」

「自分で言ったなァ。」

「自分で言ってるわね。」

「にゃぁにゃぁ、遊ぼう。にゃぁにゃぁ」

ミコルちゃんは猫に夢中だった。


「というわけで行っていいにゃん。」

「さっき言ったとおり、いい感じにボスが出てくるから、みんなで頑張って倒すといいにゃぁ。」

「いいかんじに・・・」

「適当だなァ」

「適当だわ」

「にゃぁにゃぁ、遊ぼう。にゃぁにゃぁ」

猫に夢中なミコルちゃんを抱きかかえて、五回を抜けた。


そして、だれもいなくなった5階で

「生きて帰れるとよいにゃぁ」

ボソッと猫の精霊は言った。

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