第174話

 そのカフェで雨宿りをして、おしゃべりをしたり、先ほど見つけたバイトの求人をまとめたりしているうちに夕方になった。


 窓から見える景色の変化に気がついたということは、雨があがったということだった。


「よかった」


 丹波の洋服も店内のエアコンのおかげでほぼ乾いているらしい。綺麗な金髪がお風呂あがりみたいに、ぼさぼさになっていたのがおもしろかった。


「さて」


 あたりが暗くなってくるころ、からになったコーヒーカップを持って丹波が立ちあがる。


「メインイベント、いこうか」


 私はイスに座ったまま丹波を見あげてたずねた。


「メインイベント?」


「そう」


 丹波はいう。


「どこに」


 私がきくと、にやっと笑う。たくらんでいるような、はしゃいでいるようなそんな顔を見せた。


「とっておき」


 それから「いいから、いいから」と私をせかしてカフェをでた。


 私は傘を忘れないよう、ぎゅっとにぎった。

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