第151話
「じゃあ。もう学校でおれとかかわらなければ、いじめられることもずっとないから」
それが理事長の孫である矢野が私に対してしているいじめにとって、一番有効な解決策だと丹波は考えているのだろう。そういって立ち去ろうとする。
「待って」
私はいった。
「ん?」
おだやかな声で丹波はいう。歩き始めてすぐ足をとめて振り返る。
「丹波、私を守ってくれたでしょ」
私はいつまでも手に残るヴィクトリノックスを丹波のほうに伸ばしながらいった。
「それなら、今度は私の番」
なぜだろう。理由はわからない。だが、そんなことを口走っていた。
「もし丹波が狙われているんなら、私が守る。お返しに。お礼に。丹波のこと、私、ぶっちゃったし、ひどいこともいっぱいいっちゃったし」
なにいってるんだこいつって顔で丹波は私を見つめる。
私としてはただの貧乏性の性格が顔をだしただけかもしれない。
借りをつくったままにしたくない。そう思っただけだから、守れるなんて根拠はなかった。自信もなかった。だけど、思っていることはつたえたいと思った。
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