第125話
息をのむ。
歯の根があわない。がたがたと小きざみな音を立てている。
勇気をだしてここから声をかけよう。
階段からげた箱まではそれでもわずかな距離がある。しかも相手はうわばきを履いていない。もし、追いかけてくるにしてもすぐには動けないはずだ。ましてや距離があれば、声をかけて返事がわりにいきなり殴られるなんていう最悪のパターンだってさけられる。
「うん」
そうだ。
そうに違いない。
無茶な理屈で自分で自分に気合いをいれる。
「すう……」
息を吸った。
「矢……」
声をだそうとした。
瞬間。
うしろから、いきなり口を押さえられた。
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