2年2組は合同クラス
第42話 2年生になったよ!
月見ヶ丘小学校には、変わった先生がいる。優しい泣き虫の鈴子先生と、曲がったことは許さない達雄先生だ。毎年、1年1組には、少し訳ありの生徒が入学する。
桜の花が咲く四月、2年生になった珠子ちゃんと、小雪ちゃんは、夏休みの結婚式をあれこれ話し合いながら、一緒に始業式に向かう。
「なぁ? 泣き女と首斬り男の赤ちゃんは、どちらに似るんやろ?」
おませな女の子達は、頭をくっつけて話し合う。それを見ていた河童の九助くんは、雪女と河童の相性は良いのか? 悪いのか? と悩むのだった。
「俺は、猫娘とは相性は最悪なんやぁ……でも、珠子ちゃんが好きやねん」
忠吉くんの秘密の告白に、それは止めとけ! 死ぬで! と言いかけて、口を閉ざした。河童と雪女も、そんなに相性は良くなさそうなのだ。それでも、小雪ちゃんが好きなのは止められない。
「俺は緑ちゃんが好きやねん」
ゴンキツネの銀次郎くんは、ろくろ首の緑ちゃんとなら相性は悪くないとご機嫌だ。でも、緑ちゃんは、力持ちの大介くんに夢中なのにねぇと、九助くんと忠吉くんは肩をすくめた。
「別のクラスになっても、仲良くしような~」
だいだらぼっちの大介くんの言葉に、元1年1組のメンバー全員が頷く。2年生からは、人間の子どもと一緒に勉強するのだ。
「九助くん、プールで足を引っ張ったら、あかんで!」
妖怪の親でも大問題になったのだ。人間の親なら警察ざたになると、元級長の猫娘は注意する。
「わかってるよ~! あっ、銀次郎くん……尻尾でてるで! 気ぃつけなぁ、あかんで!」
銀次郎くんは、慌てて尻尾をしまった。そしたら、耳がピョコンと出てしまう。鼠男の忠吉くんが、とっさに自分の帽子で隠してやる。
「おおきに!」
元1年1組のメンバーは、これからは別々のクラスだけど、お互いに頑張ろうと円陣を組んだ。
「ほな、えいえいお~!」
珠子ちゃんが、音頭をとって、気勢をげる。
「元1年1組、えいえいお~!」
校門で出迎えていた校長先生は、賑やかに登校してくる生徒たちを笑いながら見ていた。妖怪の子ども達を生徒として迎え入れるのには、他の小学校と違う苦労も多い。しかし、こうして成長していく子ども達を見ると、ぽんぽこ腹鼓を打ちたくなるほど嬉しくなるのだ。
「おはようございます!」
今日も賑やかな月見ヶ丘小学校の一日が始まる。新しい1年1組では、妖怪の子どもがキラキラした目で泣き女の鈴子先生の話を聞いている。ピカピカの1年生が、人間の子ども達と一緒に勉強できるように、鈴子先生は一年間で色々と教えなくてはいけないのだ。
「祐一くん、ちゃんと席につかないといけませんよ」
子泣きジジィの祐一くんは、海入道の海斗君の背中にくっついている。もう、新米の泣き虫先生は卒業だ。ばりっと引き離して、席につかす。
「同属の泣き女なのに、厳しいなぁ」
ぼそっと祐一くんは愚痴っていたが、パッと背筋を伸ばして座りなおる。教室の窓から、首斬り男の達雄先生が見ていたのだ。
「もう、達雄先生は体育の授業をしてください」
廊下に顔を出して、鈴子先生は達雄先生を追い払う。
「なぁ、鈴子先生は達雄先生と結婚するんやて!」
ちっちゃなねずみ娘の小春ちゃんが、お兄ちゃんの忠吉くんから聞いた情報を、隣の席の狐火の常子ちゃんに教える。
「ええっ! 鈴子先生が結婚するの!」
興奮した常子ちゃんは、ポッと火を吐いた。
「常子ちゃん、教室で火を吐いたら駄目ですよ!」
「ごめんなさい!」叱られて慌てた常子ちゃんは、ポッポッポッと、狐火を吐く。
鈴子先生が慌てて教室の角に置いてある消火器を取りに行くと、海入道の海斗くんが指の先から水を出して消化していた。達雄先生は、大丈夫かな? と少し不安になったが、田畑校長先生に任せておきなさいと叱られる。
「泣き女の鈴子先生は、すこし優しくて頼りないところもあるけど、子ども達への愛情はたっぷり持ってます。1年1組には、ややこしい訳ありの生徒が集まりますが、その分、皆で助け合ってうまくつきあっていきます」
そういえば、去年の1年1組も問題が多かったと、田畑校長先生はぽんぽこ腹を叩きながら、達雄先生と教室を後にした。
1年1組、妖怪学級からは、元気な子ども達の声が廊下にまで響いている。
おしまい
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