第3話

俺は、森の中を彼女の名前を呼びながら歩き続けた。

二日目の夕方近くになって、俺はようやく彼女の姿をみつけた。




「エリーズ!ど、どうしたんだ!?」




斜面を滑り落ちたらしく、彼女は身体中泥まみれで傷だらけになっていた。

足を痛めたようだったが、幸いなことにそれは致命的な怪我ではなかった。

その時に荷物もすべて落としてしまったらしく、俺は彼女の傷の手当てをし、いやがる彼女を無理におぶって町まで戻った。

そんなことがあって以来、彼女は少しずつ、俺に心を開いてくれた。

そのうち、俺を相棒として認めてくれたのか、一緒に組んでお宝探しに行くようになった。

だけど、どんなに口説いても彼女は俺には特別な感情はないと言うばかりで、彼女の素性についてすら何も教えてはくれない。

気がつけば、彼女と出会ってから二年の月日が流れていた。

これだけ頑張っても相棒以上になれないのなら、俺もいいかげん諦めるべきかと観念し、彼女の誕生日に俺は宝石を贈ると共に、これが最後だと考えて彼女を口説いた。




「エリーズ、誕生日おめでとう。」


「ありがとう、ステファン。」


「なぁ、エリーズ…

俺達、知り合ってもう二年だよな?」


「そうだったかしら?」


「……相変わらず冷たいな。

エリーズ、俺…こうしてあんたと一緒にお宝探しが出来るのは嬉しいんだけど…

それだけっていうのは…やっぱり寂しいんだ。

俺の気持ちはわかってるだろう?

初めてあんたを見た時から、俺はずっとあんたにぞっこんだってこと…わかってんだろ?」


彼女はその言葉にただ微笑むだけで、なにも言ってくれなかった。




「……今でも俺を男としては見られないか?

結婚を前提にして、俺とつきあってはもらえないか?」


こんな真面目臭い口説き文句を言ったのは初めてだったから、言った後で俺はものすごく恥ずかしくなった。

彼女が今更OKする筈もない。

後悔した俺が、今のは冗談だと誤魔化そうとした時、奇跡が起きた。

彼女が小さく頷いたんだ。




「ほ、本当なのか!?」


「……あんたには負けたわ。」


信じられないその返事に、俺は歓声を上げ、エリーズの身体をきつく抱き締めた。

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