【ふー3】 信仰は儚き幻想のためにぃ
未知道乃照 亥の上刻
二時二十二分。全エリアの六十九パーセントのスキャンに成功。引き続き更新のための処理を行う。第三次元と第四次元を第七次元への変換とバックアップは現在ほぼ完了。まもなく正式の稼働させて終了する。試験稼働によるエラーのデバックも完了しており、問題はない、と、おも、われ。
「あーあ、まただめじゃん。ちゃんとしてよ、しっかりしないとだめじゃん。なにがかんぺきよしっぱいじゃない。でばくしてでばく。ほら、はやくはやく」
「こうはこうでよけいなことしてくれてるからなぁ。ほんとかみさまっていそがしいわぁ」
人間にとって神様ってどんな存在なんだろうね。崇める対象? 畏怖の象徴? 祀り上げてご機嫌取り? 初詣のみのお付き合い? それとも困ったときの頼みの綱かな?
人間が十人十色いるように神様だって八百万神八百万色あるんだよ。照の場合は祭ってくれれば、私を神だと人間が認識してさえいればいいんだ。それだけでよかったんだ。だって人間に神様が普段どんなことをしているのかって知る由もないでしょ?
神のみぞ知るってね。
そう。悪いのは人間。
叶いもしない願いを神に押し付けて殺到させてお願いするだけしていれば良かったんだ。叶えるつもりなんて毛頭ないから初めから無駄にしかならない愚行を繰り返してればよかったんだ。叶えてほしければもっと御利益のある神社に行くんだね。
愚者がぐしゃぐしゃになるまで鈴ならしてればそれで互いの無益な利害関係は成りったっていたんだから。
信仰は儚き幻想のためにぃ。それだけのためにぃ。
「なにしてるの・・・なにを、いったいなにを・・・」
神明神社は一夜にして取り壊されていった。経営がどうだこうだああだこれだと勝手に祀っては勝手に放り出された神社はそれでも地元の人に愛されていた。集めた情報からは新しく大きな神社が移転してくるというのでそこに吸収合併されるということだった。
でも真実は違う。神に嘘など通用しない。人の心を読むことは神の権利でありながら義務だ。ここに祀られるのは三大開拓神で移転してくるのは札幌神宮だ。名称を北海道神宮と変えるそうだがどうでもいい。神主も参拝者もいない神社はもはやただの廃屋。さら地にすることに彼らに躊躇いはなかった。
齢二百三十五年の神は追い出された。
「わたしは、しぬの?」
神は信仰がなければ神として存在できない。忘れ去られて消えてしまえばそれは同時に“死”を意味する。ニーチェの言うとおりに死んでいく。
だから形だけでも参拝が必要なのだ。それがなくとも神主に儀式を執り行ってもらっても、そちらの禊ぎを手伝うのでも構わない。
神は神として認めもらって初めて神になれるのだから最も愛される存在でなければいけないんだ。
「しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくない」
そんな時だよ。沓形恒を見つけたのは。揺れて弱っている心を見つけるのはとても簡単な事だったから操作も案の定、容易かったよ。
「みんなにあいされなくてもいいんだ。だれかひとりでもあたしを、あたいを、わらわをかみとしてみとめてくれればそれでいいんじゃないか」
別にこの世界である必要はないからどうせなら、と新天地を開拓。彼に違和感を与えないように世界をコピーしてペースト。さらには似たような境遇かつ彼の求めるものを与えてくれる人間をリスポーンして作り上げた。
彼は認めたから私の存在は立証された。未知道乃照神再誕!
でも人間はやっぱり面倒くさかった。たった一人でも、一人だけでも、沓形恒だけでもいつの間にか手からすり抜ける。交わした約束を守りながらもその間をすり抜けていく。
「こうのばか」
まあ、いい。沓形恒はすでに私のものなのだから。
「さて、たきかわあきとはどうするのかな。恒ちゃん♪」
噂をすれば彼からの電話じゃないですか。どれどれ。
「はいはい、こちらぴちぴちのみちみちのてらですよ。どちらさまですか」
「神として死にたくなかったら、今すぐこれから言うものを用意しろ」
いきなりの脅迫電話に
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