第20話 香




 かおり

 武器職人。

 三十五歳女性。

 少しウェーブがかった赤銅色の短髪。

 銀色の柳が刺繍された漆黒の作務衣を好んで着る。

 力強い目。

 色黒で骨太の体格のよい長身。

 嘉月かづきは香の兄である光夜こうやの友であったことから、幼い頃より嘉月とは親しくしている。

 香が十五歳、嘉月が二十五歳の時に嘉月の巨大な斧を創り、無くされては困るとなかば強引に位置把握できる魔法を嘉月の巨大な斧にかけるも、一度もその魔法を発動させたことがない。




「兄貴から嘉月と一緒に凶暴化した狐太刀こだちの処分をするって、伝書魔法鳩が知らせに来てくれたけど。いや。大丈夫なのは分かっているけど。嘉月も一緒だし。あの兄貴も頼りなさそうに見えていざという時はちゃんとやるし。いや。しでかす時は盛大にしでかすけど………いや。使わないよ。位置把握できる魔法は使わない。あれは、嘉月に巨大な斧を失くした探してほしいって頼まれた時に使うつもりでかけた魔法だしね。だって、あれは。嘉月の巨大な斧は私が初めて創った武器なわけだし。そりゃあ思い入れはひとしおって言うか。さ。ね。強引に位置把握できる魔法をかけてもおかしくはない、よね」


 武器製造小屋から少し離れた休憩所にて。

 丸太の椅子に座って一枚板のテーブルに顔を突っ伏していた香。顔を横に向けては、伝書魔法鳩を放つか否か、眉根を寄せて考えたのであった。











 平屋ほどの大きさで横に倒した漆黒の円筒状の建物が三段連なる上に、大きさが不揃いの球体、三角錐、立方体の小さな建物が置かれて、全体的に薔薇の蔓が巻きつけられている古暮こぐれの家にて。


(これも種の影響なのかな。見たこともない女性の映像が流れて来た………そうだよ。私はあの人の巨大な斧に位置情報が分かるように魔法をかけたことはない。種が保存している記憶が私の脳に直接流し込んできている?)


 転移できる魔法陣を解いて目を瞑った古暮。空に浮く移動式空中椅子に身体を沈めたまま、古暮自身を調べるための魔法陣を展開したのであった。


(もう、さっさと浸食してくれても構わないんだけど)











(2026.8.18)



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