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  • 第1話 腐魚剣 天秤棒への応援コメント

    拝読いたしました。感想をお伝えします。

    「現在のゼー・シュトラッセ(酒場シーン)」に「一年前の回想」を組み込む入れ子構造になっていますね。
    外枠は断定を避ける二人称視点で、「あなた」の心情にまで踏み込んでいる点が特徴だと思います。
    ふらっと街にやってきたような臨場感がありました。
    内枠は複数のキャラクターの心情・行動を追う三人称神視点だと思います。
    まるで映画でも見ているような立体感があってよかったです。

    冒頭の外枠だけで、どんな物語が展開されるか明確なため、読者は迷わず読み進められると思います。
    短編小説として理想的な導入だと感じました。

    作者様の文章力・描写力の高さにおどろかされました。
    数え上げればきりがありませんが、序盤では次の描写が印象に残っています。

    ――腐臭の源は、浜に並べられたいくつもの樽だ。
    樽には何百匹もの魚が詰め込まれ、初夏の日差しに晒されていた。
    近寄れば、鼻が曲がりそうな腐敗臭が漂い、樽の周囲には、何十匹もの蝿が飛び回っていた。

    頭に浮かんだ映像を書き取るだけでは視覚に偏りがちだと思います。
    しかしこの描写では嗅覚や触覚も刺激され、最後の「何十匹もの蝿が飛び回っていた。」では手で払い除けたくなったくらいの強烈なリアルさがありました。

    ウェブ小説を読んでいてしばしば感じることがあります。
    とりわけ文章力の高い方に多いのですが、始めから終わりまで全力投球されています。
    中盤あたりから読むのに疲れて、文章力の高さがかえってノイズになっている点が惜しいと思います。
    ところが作者様は硬質な言葉が中心になりながらも、緩急自在でとても読みやすかったです。
    このような感想をもったのは作者様がはじめてです。

    海沿いの街の背景や、地域特有の政治・宗教もわかりやすく示す一方で、ジゴロウとアトリウスの決闘では疾走感のある文体へと切り替わります。この書き分けが見事でした。

    内枠の物語が終わり、酒場に戻り、読者の違和感に触れる場面があります。

    ――そもそも、この話には欠落が多い。
    禁令が解除されたからといって、街がたちまち元どおりになるはずはない。職を失い、街を離れた漁師もいただろう。リー商会は、その後どうなったのか。

    二重構造の利点がうまく使われていて、心地よいカタルシスがありました。
    物語の魅せ方が上手ですね。

    以上になります。
    お伝えしたいことが多く長文になってしまいました。
    素敵な作品に巡り会えたこと感謝申し上げます。
    今後のご執筆活動を陰ながら応援しております。