応援コメント

すべてのエピソードへの応援コメント

  • 第1話への応援コメント

    文芸部へのご参加、ありがとうございます。
    「まだ、何も始まってはいない。」という静かな語り出しから、行き先も目印もない不穏な「動き」の中に放り込まれる。具体的で生々しい現実の描写を排した、この抽象的で張り詰めた世界観の心地よさに、冒頭からじわりと引き込まれました。

    ■ 全体を読んでの感想
    まるで抽象画のような、何かが秘められているけれど、それをどう受け取るかは見る人次第、というような作品だと感じました。
    私にはそれが何なのか、正解があるのか分かりませんでしたが、ただ、何もない空間、周囲の者に邪魔されない時間の中を、ゆっくり一歩ずつ前に進んでいたはずなのに、気が付くとそれは空白の中に溶けて、それを見ていた、この文章を読んでいた私という現実に戻された。そんな感覚だけが私を支配しました。

    ■ お題「省略法」の活用について
    本作では、テーマである「省略法」が、単なる文章の引き算を超えて、物語(あるいは詩)の空間そのものを「空白」によって形作るための、極めて洗練されたシステムとして使われていました。

    ・【主語や『世界の設定(名詞)』の徹底した省略】
    「何か」「そこ」「私」といった代名詞を中心に構成され、具体的な風景や登場人物の属性が徹底して「省略」されています。この徹底的な引き算があるからこそ、読者は特定の誰かの物語としてではなく、自分自身の「いま、ここにある自意識」をダイレクトに作品に重ね合わせることができ、言葉が内側に染み込んでいく感覚がより劇的に際立っていたように思います。

    ・【動きの理由や『行き先』の省略】
    なぜ動き始めなければならなかったのか、どこへ向かっているのかという「理由や結末」があえて一切語られず「省略」されています。この静かな引き算によって、最後にすべてが消え去って「読者自身」にピントが戻ってきたときの衝撃が、より一層引き立つ見事な構成になっていると感じました。

    ■ 最後に
    省略法という技法を、情報を隠すためではなく、語らないことで「読者自身の存在」を作品の最後のピースとして浮かび上がらせるための、知的な行間として使いこなされた素晴らしい作品をありがとうございました。
    また部室にて、あなたの紡ぐ、五感に静かに染み入る美しい物語に出会えるのを心より楽しみにしております。