カッターナイフの先払いへの応援コメント
文芸部へのご参加、ありがとうございます。
「おぢと行くミシュランなんかより彼氏と食べるカップ麺が美味い」という、SNSで見かけるような俗っぽい二元論を「二日絶食すればどちらも最高になる」と独自の理屈で一刀両断する冒頭から、一気に「わたし」という語り手の脳内に引きずり込まれました。痛烈な切れ味と、どこか哲学的な歪みを帯びた、極めて濃厚な物語体験でした。
■ 全体を読んでの感想
お墓の前でカッターナイフを突きつけて泣き崩れる「まりかさん」と、それを「器物損壊」「石の方が強いとじゃんけんで学ばなかったのか」と極めてドライに突き放す主人公の視線のギャップが対照法的な際立ちを見せていますね。
しかし、そんな冷徹に見える主人公が、ラストではまりかさんの手を包み、カッターの刃を己の腕へと沈める。痛みを通じてまりかさんの嗚咽を止め、彼女の瞳のなかに「わたしだけが映っている」という絶対的な関係性を構築してしまう。この、一見すると狂気でありながら、主人公にとっては計算通りの「未来への投資」であるという着地は、不気味さや恐ろしさを超えてもはや美しさを感じました。
■ お題「省略法」の活用について
本作では、テーマである「省略法」が、語り手の独特なキャラクター性と、ラストの鮮烈な余韻を際立たせるために、極めて効果的に使われていますね。
・【お兄さんの『死の真相や背景』の省略】
みんなに好かれ、善良だったお兄さんが「なぜ死んでしまったのか(轢いたトラック、という言葉は出てきますが)」、そしてまりかさんとお兄さんが「どんな関係だったのか」という具体的なエピソードが徹底して省略されています。この背景の引き算によって、読者は余計なノイズに気を取られることなく、今お墓の前で対峙している「まりかさんとわたし」の、ひりつくような精神的・肉体的な接触だけに100%集中することができました。
・【ラストシーンのその後に続く『関係性』の省略】
「あなたの痛みで買う未来が、すこし楽しみだ。」という、あまりにも美しく不穏な一文でバツンと物語が終わる省略法。傷を共有した二人がこの後どうなっていくのか、どんな「未来」が訪れるのかをあえて書かない。この大きな余白が残されることで、流れ落ちる血の赤さと、静寂の中に響く「トク、トク」という脈拍の音だけがいつまでも鳴り響くような、深い余韻が刻まれるように感じました。
■ 最後に
省略法という技法を、これ以上ないほどソリッドで、かつロマンチック?な「狂気の余白」として使いこなされた素晴らしい名作をありがとうございました。
また部室にて、あなたの紡ぐ、鋭利で知的な言葉たちに出会えるのをしみじみと楽しみにしております。
作者からの返信
お世話になっております!
またお会いできて嬉しいです。
割と自分本位に書きすぎてしまい、少し後悔と恥ずかしさを感じていたところだったのですが、相変わらず丁寧に読み解いていただけて救われました。本当に励みになります。
素敵な企画をありがとうございました。
またお会いできるのを、心より楽しみにしております🌱
編集済
カッターナイフの先払いへの応援コメント
いつも別作品陰ながら拝読させていただいてます。レビューもさせていただきましたが短編もすごく面白かったです。
初読時はサイコパス文学として読んでいたのですが、タグの「GL」を見て脳内がひっくり返りました。冒頭の「彼女」って、もしかしてまりかさんのことでしょうか?
やたらと凝視していますし、さすがに好意がなければ自分の腕を切らせたりしないですよね。ずっと片想いしていてだからこそ世俗の二元論をおじゃんにして、兄の葬儀でも泣かなかった(あるいは、まりかしか見ていなかった)…?
あるいは、主人公自身にリスカ痕があるということは、実は昔は主人公も感情な狂う側にいて、何かしらの理由で感情を封印した過去があって、だからこそ、彼女を救いたくなってここから恋が始まる…?
考えれば考えるほどわからなくて考察しがいがあり楽しいです。
作者からの返信
すらまっぱぎーさん
いつもお読みいただき、そしてコメントやレビューまでありがとうございます‼︎
アダムやハチ公とはテイストかなり違うので裸を覗かれたような気持ちで少し恥ずかしいです🫠
しかもめちゃくちゃ丁寧に読んでいただいて…
考察はお任せします、私自身実は文学よりも映画オタクなので余白がある方が好きなんですよね…エンタメとしては微妙かもですが笑
冒頭の「彼女」はまりかです‼︎