2026年7月24日 18:00 編集済
3への応援コメント
強烈なお話でした。Xでお見かけし、拝読したのは昨日だったのですが、今日も一日のなかで何度も志穂のことを思い出してしまいました。手紙、革張りの本、ドレス、少しずつ過去の輪郭が濃くなっていく書き方に引き込まれ、新しい情報が来るたびに「今」の意味も書き換わっていくような感覚がありました。解像度が上がっていくような面白さがあり、没入感が凄かったです。憎悪を失った先に類型的な幸せが待っていたとして、人はそちらへ足を踏み出せるのだろうか、と考えてしまいました。志穂の受けた被害は理不尽なもので、被害前に戻ることは決してできないその不可逆さも確かなのに、代償を加害者から取り立てることは原理的に不可能なんですよね。加害者が謝罪しようが、刑期を勤め上げようが、死んでしまおうが──被害者の中で失われた時間や自己は一切戻ってきません。加害者の反省や不在は、被害者の損失と釣り合う通貨にはなり得ない……だから、誰も本当の意味で彼女を掬い上げることはできないし、志穂の人生は、被害を受けた「割に合わなさ」を無理やり均そうとしているようにも見えました。憎悪を創作の糧とし、彼女は作家としての独自性や社会的な評価を得ていきました。そんな彼女にとって、幸福はアイデンティティの否定でもあるのかな、なんて思いました。類型的な幸福を受け入れることは、損なわれたものを“なかった”ことや“過去”にするようなものに感じられてしまうのかな、と。「皆、私を、どうさせたい?」の一文が白眉で……求められるものが押し寄せてくるような、怒りとも疲労とも判別のつかない叫びのように読みました。志穂自身の意志や人生を問うような……どこか空虚さがある一文に感じました。「もう大丈夫」になりたいのかさえ、志穂本人も分からないのかもしれません…余韻の残るラストでした。ドレスのモチーフも秀逸でした!読み終えたあとにタイトルを見て、また感情を揺さぶられたりもして……読めて本当に良かったです。でも、なんといっても人物造形が凄かった。語り口そのものが人格として立ち上がってくるようでした。説明的な心理描写に頼らず、一人称でのリズムそのもので人物を描き出す筆致に素晴らしい技巧を感じました。乾いた自己分析と生々しい感情の吐露が、交互に現れるような緩急も魅力的でした。先の読めなさもあって、苦しい題材のお話にこの言葉を置いていいのかは悩みますが、面白かったです。読み終えてもなお、志穂のことを考え続けてしまう作品でした。
2026年7月22日 15:20
月並みな言葉になりますが、すごくすごく面白かったです。私自身は主人公のようなトラウマ、凄惨な体験というのは持ち合わせていないはずなのに、なぜか共感してしまいました。幸福をありのまま享受できない人間の捩れ方、複雑さ、愛しさを、圧倒的な筆力でぐりぐりと胸に叩き込まれた気分です。一気に読んでしまいました。素晴らしい読書体験、ありがとうございました。
2026年7月21日 10:28 編集済
あらすじと書き出しで心を掴まれ、いっきに読みました。魂を削り出すような描写と、全貌が少しずつ明らかになるようなサスペンス。主人公の志穂、逃げ腰の編集者、救われる読者、世間の好奇の目、それらすべてが生々しい手触りで理解できて、怖いくらい没頭して読みました。最後に手紙を燃やせなかった気持ちも痛いほどわかります。三嶋の言葉で踏み出した作家という職業。誠との出会いで得られた幸福。横井の死。彼女の人生なのに、彼女以外の人の手によって変わっていく。重い題材と複雑な心情ですが、心にまっすぐズドンと響きました。
編集済
3への応援コメント
強烈なお話でした。Xでお見かけし、拝読したのは昨日だったのですが、今日も一日のなかで何度も志穂のことを思い出してしまいました。
手紙、革張りの本、ドレス、少しずつ過去の輪郭が濃くなっていく書き方に引き込まれ、新しい情報が来るたびに「今」の意味も書き換わっていくような感覚がありました。解像度が上がっていくような面白さがあり、没入感が凄かったです。
憎悪を失った先に類型的な幸せが待っていたとして、人はそちらへ足を踏み出せるのだろうか、と考えてしまいました。
志穂の受けた被害は理不尽なもので、被害前に戻ることは決してできないその不可逆さも確かなのに、代償を加害者から取り立てることは原理的に不可能なんですよね。加害者が謝罪しようが、刑期を勤め上げようが、死んでしまおうが──被害者の中で失われた時間や自己は一切戻ってきません。加害者の反省や不在は、被害者の損失と釣り合う通貨にはなり得ない……だから、誰も本当の意味で彼女を掬い上げることはできないし、志穂の人生は、被害を受けた「割に合わなさ」を無理やり均そうとしているようにも見えました。
憎悪を創作の糧とし、彼女は作家としての独自性や社会的な評価を得ていきました。そんな彼女にとって、幸福はアイデンティティの否定でもあるのかな、なんて思いました。
類型的な幸福を受け入れることは、損なわれたものを“なかった”ことや“過去”にするようなものに感じられてしまうのかな、と。
「皆、私を、どうさせたい?」の一文が白眉で……
求められるものが押し寄せてくるような、怒りとも疲労とも判別のつかない叫びのように読みました。志穂自身の意志や人生を問うような……どこか空虚さがある一文に感じました。
「もう大丈夫」になりたいのかさえ、志穂本人も分からないのかもしれません…余韻の残るラストでした。
ドレスのモチーフも秀逸でした!
読み終えたあとにタイトルを見て、また感情を揺さぶられたりもして……読めて本当に良かったです。
でも、なんといっても人物造形が凄かった。語り口そのものが人格として立ち上がってくるようでした。説明的な心理描写に頼らず、一人称でのリズムそのもので人物を描き出す筆致に素晴らしい技巧を感じました。乾いた自己分析と生々しい感情の吐露が、交互に現れるような緩急も魅力的でした。
先の読めなさもあって、
苦しい題材のお話にこの言葉を置いていいのかは悩みますが、面白かったです。
読み終えてもなお、志穂のことを考え続けてしまう作品でした。