第3話

2割のいつでも逃げてやるぜこの健脚でという猜疑心、8割の信用とともに僕がここに至るまでの経緯を質疑応答に交えながら真となるように伝え終える。


まぁ途中から裏表ともに宇宙猫になっていた自信があるので2割の猜疑心なんて飛んで行ったのだけどね。


例えば田舎の村の自室にいて、TVなる絵を動かす魔道具を見ていたって伝えたところ、「それって普通にTVだろ?」とハルさんからの言葉が飛び出したり。わざわざそんな言い回しするってTVが貴重なほどの田舎だったのかな、的な反応をレイナさんから返されたり。ロウさんに至っては腕組んで頷きだしてよくわからなかったりした。


転移したってことを伝えてみたときは、「魔送ジャック(か)(ね)」みたいに3人そろって普通にあるみたいな反応を返された。だからこちらから「魔送ジャックって?」と尋ねてみるとどうやら、TVの放送局の魔素に介入して特定の地域や家庭の放送を乗っ取り、TVを媒介に魔法を発動させる方法があるらしい。


おそろしや異世界。


でも現実問題、TV側も高度暗号化アルゴリズムなるものを用い対策することが定められており、超一流の中でも上澄みとされる人間が生涯を通じジャックを試み続けて一度でも成功したら運いいなその犯罪者って話題になるレベルの珍事らしい。


小生の転移は宝くじの億当選か何かでございやしょうか


そこからはむしろ億当選者と遭遇したかのように興味を持った3人組から、相次いで質問を受け、無事に僕は戸籍登録もされないような未発達の田舎からの遭難者扱いを獲得することができた。


「にしても魔送ジャックの被害者と出会うなんて、なんかの物語の始まりみたいだよな!」


ハルさんが明るく笑ってくれるのは実際問題、僕のようなタイプにはありがたい。こういうとき一人になると弱いのが小生の悪いところ・・・まぁふざけずいうと、僕には異世界転移は恐ろしすぎて現在進行形で悪いほうばかり想像してたから、こういう明るい人ってのは本当に救いに感じる。


でも主人公体質なら程よいソーシャルディスタンスは欲しいところでもございます。やっぱりトラブルって怖いから・・・あれ?でも当事者たる僕もある意味主人公的立場では?・・・・・考えるのやめよう。


「とりあえず、私たちも町に帰るところだったし同行で良さそうね。」


そういって最初にあったころよりも柔らかい顔でレイナさんが方針を伝えてくれる。


「せやな、魔送ジャック被害者ってんなら、行政が対応してくれはるし。」


ロウさんが耳寄りな情報を・・・よりもしゃべり方が想定外過ぎますやん。一瞬宇宙猫復活したぞ。


「それに町までもさっきの様子見るに無意識にだろうけど、移動速度上昇系の魔法は使えてそうだったしな。さっきの速度で走れば町まで30分もかからないぞ!」


そうハルさんが教えてくれるが、小生が魔法?使った覚えはないがさっきの異常な速度ならまだ1時間は継続できそうな感じがするから大丈夫だろう。


「ただ、イメージ発動になってる感じの魔力の散り方だったし、行政での手続き後には一度教習受けたほうが今後のためだと思うかな」


レイナさんがそう付け加えてくれる。


「だからさっき200mくらいに近づいてから声かけたけど、1km前時点で声は索敵範囲に届いてたのよね。ただイメージで発動してる代償に耳まで魔力で覆ってて、干渉するために近づく必要があったのよね。」


とも続けて教えてくれる。なるほど、なるほど?つまり本能的に僕は魔法を望んだ形で発動してるけど効率悪いし、迷惑だから、学ぼうねってことか。

もしこれがこの世界ではおもらしレベルの大人がやると恥ずかしい事柄だったら、ショックなんだけど。


「田舎で生まれて暮らし続けてる人や、子供のころにはみんなそんなもんやさかい。」


そういってニサっと笑い教えてくれるロウさん、なんか大型犬を彷彿としてきたぞ。


「とにかく、街行ってからだな!」


というわけで、同行どころか仲良く町まで行くことになりました。


時速60kmでも魔法を使えば密閉型のイヤホンのように会話を聞き、高品質コンデンサーマイクかのような声を送ることができるらしい。


・・・前世でほしかった。

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