正直に言うと、グロテスクなホラーや捕食・同化といった要素が前面に出てくる作品は苦手なのですが、それでも読み終えた後、思ったより長く頭に残りました。
単なるショック演出じゃなく、この作品が描いているのは人間の内側にある「加害性」や「歪んだ愛情」で、そこに妙な説得力がありました。
望月の過去。いじめられていた日織を助けた、という話だけ聞けば美談に見えます。でも実際には、「守る側」に立つことで優越感や支配欲を満たしていた。善意の皮をかぶった打算みたいなものが生々しくて、「優しさ」と「支配」がどれだけ近いところにあるかを突きつけてきます。しかもその歪みは大人になっても消えない。恋愛という形に姿を変えて続いていくんですよね。
日織は怪異ではあるけれど、単純に「恐ろしい存在」というより、望月の内面を極端な形で体現したものとして読みました。望月が相手を支配したいという欲を持っていたとすれば、日織のそれは「完全に取り込んで一体化する」という究極の形です。方向は同じで、程度がまるで違う。その対比があるから、物語全体に一貫した不気味さが漂うんだと思います。
終盤は、悲劇というより因果応報に近い読後感でした。望月は過去を悔やんではいるけれど、自分の本質と正面から向き合ったかというと、そうは言い切れない。どこかで自己正当化を続けていた。だからこそ最後に「捕食され、同化される」という形で、かつて自分が他者に対して作り上げていた関係性をそのまま反転させられます。その構図に、作者の意図を感じました。
鏡のモチーフも効いていました。日織たちが鏡を嫌う理由は作中で説明されますが、それは「本来の自分を直視できない存在」の比喩でもあると思います。望月も同じです。自分の過去や内面を正面から見ることを、ずっと避けてきた人物だから。ある意味、彼もまた"鏡を避ける側"にいたんじゃないでしょうか。
恋愛の描かれ方も印象に残っています。この作品で恋愛は救済になりません。依存や支配、あるいは自己肯定の手段として機能している。望月にとって日織は「守る対象」であると同時に「自分の価値を証明してくれる存在」で、日織にとって望月は「永遠に所有する対象」です。極端な関係性ではあるけれど、現実の人間関係に潜む危うさを誇張したものとして読むと、妙に生々しいんですよね。
結末で望月は、捕食されながらも日織への愛を肯定し、自分の罪を受け入れるような境地に至ります。でもそれが救いなのか完全な敗北なのかは、はっきり示されない。その曖昧さが余韻を強くしていて、「愛とは何か」「人間とは何か」という問いだけが残ります。
表層の恐怖の奥に人間の本質に迫ろうとする意志が感じられます。恐ろしいけど目が離せない……その力が、この作品の核心なんじゃないかと思いました。
望月さんの描く世界の奥深さが伝わる作品だと思います。
「罪滅ぼし」のつもりが「共食い」の予感。
カマキリの捕食動画を恍惚と眺める彼女を「天使」と呼べる主人公の、崖っぷちなポジティブさに拍手喝采です。
かつての「支配者」が今や「餌」候補という皮肉な展開に、ゾワゾワが止まりません。
次は動物園ではなく、昆虫館デートで彼女の本性を確かめてほしいです。
作者からの返信
コメント有難うございます。
そうなんです!ついヒロインの方に目が行きがちですが、主人公の価値観がかなり一般とずれている点を読み取ってくださって有難うございます。
確かに昆虫館でデートすれば正体が早く分かりそうですね!
はじめまして! Xから参りましたm(_ _)m
最初はちょっと不穏な恋愛ものかなと思っていたのに、読み進めるほどに違和感が積み重なっていって、気づいた時には完全に逃げ場のない恐怖に包まれていました!
ひおりんの可愛さと異常性のギャップが本当に強烈で、最後まで「信じたい気持ち」と「おかしい」という感覚の間で揺さぶられ続けました💦
千歳さんの過去の罪と現在の状況が重なっていく展開もとても印象的で、ただ怖いだけじゃなくて、どこか切なさが残るのが凄く好きです!
読み終わったあともしばらく余韻が消えませんでした。こんなにも引き込まれる物語をありがとうございました!
作者からの返信
牛河さん、素敵なレビュー―とコメントをありがとうございます!
とても短い物語ですので、読み飛ばされていく感じかなと思っていたのですが、本作に盛り込んだキャラクターの心理、ドラマやエンタメ性を見出してくださって、作者としては本当に嬉しい限りです! 書いてよかったと思いました。
こちらこそ本当に有難うございました!
編集済
多分、愛していたというのは本当なんだろう。
その愛し方が、人間とはあまりに違うだけで……
ただグロいだけじゃない、ある意味では悲恋だ。
作者からの返信
最後まで読んで下さり、有難うございました。
幼心にカマキリの結婚が可哀想だなって思っていて。自分の身を犠牲にして子孫を残すオスの姿に何とも言えない気持ちになったことがありました。
そうですね。彼らにしたらこれが愛のカタチ。主人公にとっては因果応報エンドになりましたが、ヒロインは主人公を愛しているので、お互いの着地点がここにあったという感じですね。
深い所まで読み取っていただき、素晴らしいレビューも有難うございました!
ま、真島君……!!
返事を、返事をしてくれ……!!
作者からの返信
アゲハチョウさんの臨場感あふれるコメントに、真島さんを一部モデルにした方も喜ばれると思います。(勝手に人をモデルにするなって感じなんですけどね)こうやって短文コメント入れてくださって、楽しんでもらっている感じが伝わってきて私もすごく嬉しいです。ありがとうございます!
編集済
あ、あぁ……!!
ひおりんが、百足……!?
作者からの返信
そうなんですよ!苗字のいわれはここにありましたね…。
ナビの次は真島くんが消えた……
作者からの返信
真島さん大ピンチなんですよ。推理役&ナビゲーターでもあるので、真島さんがいないのは相当な痛手ですよね。
な、ナビが!?
作者からの返信
ここに来てナビぶっ壊れです。ただ、エンジンはまだ生きているのでエンジンに一縷の望みを託します!あとはスマホと…!
本当に罪が贖わられればいいんだけど……
作者からの返信
いじめはもちろん加害者が一番悪いし、絶対にやっちゃいけないんですけど、主人公の場合はタチが悪いというか、それを利用して卑怯なんですよね。ただ、子どもの頃から時間も経って反省している部分がどこまで許されるのか。難しい問題だなって書いてて思いましたね。
ばあちゃんに挨拶。ドキドキ……
作者からの返信
両親すっ飛ばしてばあちゃんに挨拶からして、両親と不仲なんじゃないかって疑うレベルなんですが、主人公はついていってしまうのですよ…。
カマキリの共食い……
なんでそんなモノを……?
作者からの返信
コメントと素晴らしいレビューをありがとうございます! いきなり衝撃的なシーンですみません(笑)さぞや驚かれたかと思います。この時点で普通の男性は逃げていくと思うんですけどね…(汗)
拡散してきます。
私の身体が壊れる前に。
っていう冗談はさておいて……怖いな!?いや、怖いな!?
うぅ震える!!素晴らしい作品をありがとうございます!!お互い新作を楽しみましょう!!
作者からの返信
コメントありがとうございました。おこのみさんが震えるほど怖かったとのことで、大変だったけど書いて良かったなと思いました!そして、巻き込まれ風の怖いレビューもすごく嬉しかったです。ありがとうございます!自分もですが、ほとんどの方はお仕事に行きながら投稿しておられると思うので、大変だと思います。でも、体を壊すことなく、無理する前にしっかり休養を取って、体調の良い状態で作品を書けるようにお互い頑張りましょうね。ありがとうございました!
レビューを書こうと読み返していたんですが、何度拝読しても面白いです!!
祝い歌。
勘のいい人なら気付くくらいの絶妙な塩梅(私は気付けませんでした!笑)と不気味な響きが恐怖を引き立てていて好きです!
声に出して読みたくなりました。
千歳くんは自分の身に起きている事を罰ではなく愛だと考えを改めましたが、第三者には因果応報にしか見えなさそうなのがなんとも切ないですね……。
作者からの返信
素晴らしいレビューとコメントありがとうございます!
歌人の方からあの不気味な歌を好きだと言っていただき、物語も面白いと言っていただけてとても嬉しいです。
そうですね。人は幼い時にビックリするほど残酷だったりするんですが、千歳くんは大人になって罪悪感に苦しめられながらの因果応報でしたね。
この小説は読んだ方の厄が落ちて、もれなく幸せになれるように気持ちを込めて書いております。
片喰さんにますますの幸せが訪れますように!
完結お疲れ様でした。
まさか望月さんがホラーを書くとは予想していませんでした。
和のホラー、しかも虫を扱うとなれば、怖さ倍増ですね。
ぞくっとしつつこういう終わり方もありですね。
作者からの返信
水無月さんコメントありがとうございます!私は陰の者で元々の性格が暗く、大学出たての頃はホラーや陰のある作品書いてたんですね。今作は、仕事中に突然アイディアが降りてきて家に帰ってバーッと書いた感じです。ぞくっとしていただけて嬉しかったです!異動でバタバタしてますが、またお伺いしますのでよろしくお願いします☺️☺️
ほのぼの和風ファンタジーがお上手なのは知ってましたが、こ、これは…ていうか主人公のお名前が…子供のころって卑しく生々しい虚栄心がありますよね。大人になっていくと少しずつ理性で押さえたり克服していきますが、消えずに残っている後悔と懺悔と…そこに付け入る虫の怪異。いやはや背筋が凍りました。でも切ない。面白かったです。
作者からの返信
ちづさん、お忙しい中読んでいただいて素晴らしいレビューまでありがとうございます!陰の者ゆえか性格も暗くて陰のある作品や怖いの好きなんですよー。そうなんです!さすがちづさん。子どもってビックリするほど残酷だったり相手の気持ち分からなかったりしますからねー。そうそう!大きくなると社会性を獲得しますよね。望月の抱える劣等感や、謝罪も逃げもせず彼女を幸せにすることで全部清算しようとする自分勝手な性格を読み取って理解してくださってありがとうございます。嬉しいです☺️異動の隙を見てまたお邪魔しますね。続きが楽しみです😊😊
かつて支配していた弱虫の少女と再会し恋人として同棲を始める展開に得体の知れない不気味さを感じましたが、鏡を極端に避けたりカマキリが共食いする動画を恍惚と眺めていたりする日織の奇行が望月の視点を通じて冷ややかに伝わってきましたし、過去の罪悪感を清算するために彼女を幸せにしようとする望月の心理もどこか危ういですね笑
作者からの返信
コメントありがとうございます。つい日織の異常行動に目が行きがちですが、おっしゃる通り望月の性格も歪曲しててずれてるんです。そうなんです、謝罪も逃げもせずに幸せにすることでなかったことにして自己完結しようとする彼の自分勝手さがあるんです。汲みとっていただいてすごく嬉しかったです。さすがでございました!
ねっとり絡みつくでも重すぎない心理描写に吸い込まれます。
鏡を嫌がる伏線が興味を増幅する。
そして不気味なスマホの画像。
彼の罪悪感が見せる幻影なのか、物語を引っ張る構成力。
素晴らしい第1話でした✨️
作者からの返信
ギルさん、応援ありがとうございます!温かいご感想もとてもうれしいです。ホラーは、好きな人とそうでない人にはっきり分かれるジャンルだと思うので、怖さに耐えて読みに来てくださったことがうれしいです。ヒロインは優しさもあるのですが、どこかぶっ飛んでるので、そのズレを恐ろしく感じていただけたのでしたら幸いです。私もたまに姫様読みにお邪魔してます。連載が始まって間もないイメージがありましたけれど、第一部が完結し、お話が進んできてうれしいですね。いいねボタンを押してピンポンダッシュのように去っていって申し訳ありません。次回はコメントを書きたいと思います!
真島さんが黒幕だと思ってたら違った
作者からの返信
コメントありがとうございます。真島さんと市村くんは偽善者だった望月くんを変えてくれた本当にいい友人なので、黒幕びっくりです(笑) でも面白いですね。仲間の裏切り。次回作の参考にさせていただきます!
望月くんが抱く罪悪感から恋愛の沼に引きずり込まれる予兆が良きですね。ひおりんすでにやばそうなんですが。
作者からの返信
コメントありがとうございます。恋愛感情の中に醜いものも混ぜてみました。恋愛って、綺麗なものばかりじゃないですよね。ひおりんの変貌をお楽しみいただけますと幸いです。
⑧3月29日(日) 雷雨 ――【最終投稿】【手記メモ(自動送信):詳細不明】への応援コメント
遅ればせながら読了。
じわりじわりと押し寄せる不穏さ、怖さが、『スマホの自動投稿』という設定によって、最高に生かされてると思いました。
『祝い歌』の意味にもゾクリ……😱
市村くん、どうかご無事で(←きっと無理)😅
作者からの返信
なおさん、お忙しい中読みに来てくださってありがとうございました!怖いかどうか心配してたのですが、怖がっていただけてうれしいです😊😊
市村くんと真島さんどうでしたか? 市村くんは友達思いで優しさと冷静さ両方持ってるタイプ、頭脳派の真島さんは面倒見の良さと育ちの良さが出てるタイプで楽しく書かせていただきました。歪んだ幼少時代を送っていた主人公を変えてくれたこの2人の親友、とても気に入っております🍀✨
市村くんも真島さんも小説への情熱があるので、何とか生還して、かちかち言いながら西洋ファンタジー&ミステリーを書いてくれてるはず…!
厄払いの願いも込めて書いた小説なので、日常生活の嫌なこととか、心身の不調とか、百足一族に食べられてバサッと落ちますように。
ありがとうございました😊😊!