第3話 寝取り好きのチャラい先輩←俺。
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最近は他人の家でコップを使う事に抵抗ある人が多い。だからハジメは家に買い置きしている缶ジュースを彼女に渡す、これなら誰でも飲みやすいだろうと。
「カケルが童貞だから、付き合い始めた時、私がリードしてあげたらなって……。だからサクッと、処女奪って欲しいんだけど……」
受け取り、呪難はモジモジと顔を真っ赤にして答える。クオンの口調を真似て、人間らしい仕草を再現している。
「あぁ、なるほど? 童貞が彼女作る前に風俗で練習してくるみたいな話だな……。でも俺は力になれねぇかも……。だって俺、童貞だし……。他の奴に頼んだ方が――」
ハジメはレイプはしたいが、警察には捕まりたくない。だから無理やりにならない様に気を付けている。
クオンが後から喚かない様に、あくまで自分は受け身の演技をしようと心掛けていた。
しかし――。
「ド、ドド、童貞……!?」
驚く呪難。何か妙に食い気味だ。演技を忘れてそうで怖いと、ハジメは少し焦る。関りの少ない彼の立場なら、クオンの違和感に気づけなくて当然。
だけど普段関りのある人物なら、違和感に気づき憑依の可能性も考えるかも知れない。
「まぁ理想が高すぎて、よく振られるんだよ……。だからヤリチン先輩にエッチを教えて貰えるって期待してたなら、ゴメンな。無理やり手を出す気はねぇし、恋愛の悩みくらいなら男視点で教えてやるから、今日は――」
あくまで自分から手は出そうとしてないと、ハジメが暗に言うが、呪難に「童貞ノ方ガ良イ……! 凄ク……! 凄ク!」と遮られた。
どうやら呪難は独占欲が強い方らしい。やたらと童貞をプラス要素として考えている。というか見た目がチャラい所為で、勝手に非童貞だと思っていらしい。
思わぬ朗報でテンション爆上がりしている様子だ。「…………ッ」勢いで抱き着かれ、豊満な胸を押し付けられたハジメは一瞬息が止まる、これを今から好きに揉めるのかと。
「えっと……、何か、さっきから妙にテンション高くない? どうかしたの?」
肩を掴み少し距離を取りつつ、ハジメは戸惑う。
「…………ッ!」
演技を忘れている事も気づいたのか、ハッとする呪難。どう誤魔化せばいいだろうとアワアワと焦り、目を泳がせる。
「……もしかして童貞好きだったりする? そういえばカケルも童貞っぽいもんな」
仕方ないので助け船を出す。禍津神も慌てるんだなと可愛く思いつつ、ハジメは少し苦笑した。
「……私、童貞、好き」
親指を立て、頬から汗を流しながら呪難は話を合わせた。
「何でカタコト!?」
流石に突っ込む。ちゃんとクオンの演技しろと、焦りつつハジメは軽く受け流した。
「ま、まぁ……、いっか。クオンが良いなら、セックスしてみようぜ? 俺も童貞卒業したいし……」
ハジメはクオンに優しく抱き付く。
片手で彼女の尻を揉みつつ、「ずっとヤリたいと思ってたんだよ。最高だろ、お前。白い肌。尻と胸がデカくて、足もムッチリしていてさぁ。エロ過ぎるって、マジで」と耳元で囁いた。
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勝手に動く体で、クオンは焦り苦しんでいた。
彼女としては処女はカケルに捧げたい。男が清楚な女を求めている事は知っている。それならカケルに喜んで欲しい。
処女と童貞で結ばれて、結婚して、子供を作る。幸せな家庭を作る。そんな夢が彼女にはあるのだ。
そもそもよく知らない男に体を許すなんて、考えられなかった。でも体が言う事を聞かない。自分の意思に反して服を脱ぎ始めてしまう。
その動きを止める術がクオンにはなかった。
――助けて。
彼女は心の中でカケルに助けを求めた。
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「お兄ちゃん。何か良い事でもあったの~?」
大きくも小さくもない平凡な一軒家のリビング。黒髪の少女――ヒヨリが、コップに牛乳を注ぎながら尋ねる。
まだ風呂から上がったばかりなのだろう。髪が濡れており、首にタオルを掛けている。そして妖艶な印象は薄い。
中背で胸は大きく、兄と違い顔立ちも非常に整っている。
――が、ゴクゴクと喉を鳴らし豪快に牛乳を飲む様が妙に親父臭い。色気もへったくれもない。
「まぁな! もう時期、俺にも春がくるかも知れん!」
今にも踊り出しそうなウキウキした笑顔。浮かれ気分で気持ちが悪いくらい顔を綻ばせていた。
「お兄ちゃんみたいなフツメンが、クオンちゃんみたいな美少女に相手される訳ないじゃん……」
ハンッと鼻で笑い、ヒヨリはコップを流し台に片付ける。
「いーや口説き落としてみせるね、俺は。青春を掴み取って見せる!」
放課後に良い感じの雰囲気になった事で、舞い上がっている。だが「…………とは言ったものの、おかしいな」と折り畳みの携帯を見つけ首を傾げるカケル。
「…………? どうかしたの?」
ぽたぽたと水滴が落ちる髪を、タオルで再度拭く。床に落ちた水滴を踏みながら、ヒヨリはカケルに近づきヒョイッと隙を突いて携帯を奪う。
「……クオンちゃんとのメール? 30分くらい返信が着てないね? いつも速攻返信なのに」
連絡のやり取りを確認すると、「やっぱり脈なしかぁ……」と、ヒヨリは携帯をカケルの手に戻した。
「な! ち、ちげーよ! 多分あれだよ……。今日は体調が悪いって言ってたから、それで返事が遅くなってるだけだろ、きっと……!」
肩に掛けていた鞄を横に置きながら、ソファに座るカケル。まだ返信はないのかと、ソワソワしながら携帯をチラ見していた。
「彼氏の家だったりして~。今頃エッチな事してるかもよぉ?」
隣に腰を降ろし、ヒヨリは揶揄う。
「ハッ! 彼氏? あの男嫌いが? ないない。俺が一番仲が良いんだし、本人もそう言ってたから間違いない」
何も分かってないなと、鼻で笑う。カケルは半年前の男嫌いを拗らせていたクオンの姿を知っている。どう考えても気安く彼氏を作るタイプではなかった。
「ピュアだなぁ。大人しい子とか、下ネタ嫌いの潔癖女って真っ先に処女を卒業してるもんだよ? 下ネタに冷めた態度取る女は、『あ。コイツ非処女だな』って思って間違いない。まぁ男には分からない話だろうけど~」
髪の毛を乾かす事なく、ポテチの袋を開ける。パリパリと音を立て、ヒヨリは隣の兄を小馬鹿にする様な視線を向けた。
「ふざけんな! クオンだけは絶対そんなんじゃねぇよ! 多分マジで男と手を繋いだ事ないタイプなんだって! 俺には分かる!」
差し出された袋に手を突っ込み、カケルは不貞腐れた様にポテチを掴んで食べる。
「きめぇ~。女に理想押し付けるタイプかよぉ」
お転婆なヒヨリにとって、女らしさというのは苦手な言葉だった。頻繁に周囲から女らしさを持てと呆れられる彼女は辟易している、理想の押し付けてくる人達に。
「わりィかよ! 女も男に男らしさを求める事あんだろ!? 金とか頼り甲斐とか!」
お互い様だと、カケルは溜息交じりに携帯を弄り、メールの受信を待った。思春期の彼には、返信が遅いというだけの事が不安だった。
だが仕方がないかも知れない。クオンは群を抜いて容姿が整っているのだ。そんな彼女と少し近い距離というだけで男なら期待して当たり前。
僅かに嫌われただけでも、一大事といっていいほど辛いものがある。
「まぁ言いたい事は分かるよ? 男も女もお互い理想押し付け合ってるのかもとは、私も思う……。ただなぁ……、お兄ちゃんは金も頼り甲斐もないからなぁ……」
別に悪意はない。ただ事実として言った。ヒヨリが常日頃から苦手としているのは、『らしさ』を押し付ける人ほど、自分は『らしくない』という事。
彼女から見て、兄は『男らしくない』。だったら女に『女らしさ』を求めるのはおかしいじゃないかと当然思ってしまう訳だ。
「止めてくれ……、普通に効いちゃうから、それ……」
自覚は多少なりともあるらしい。あまり男らしくなくて、女々しい部分があるとは自分でも思っているのだろう。
そもそもカケルの恋愛観は乙女みたいに純情で、男らしさとは無縁。モテる男みたいな余裕がなく、目の前の惚れた女に一直線。
仮に好きな子が他の男に取られたら、顔見る度に劣等感を抱き気不味くなるタイプだ。目を逸らして離れようとする。彼は典型的な非モテ男っぽい性格だった。
「……でもまぁ。応援はしてるよ? クオンちゃん、めっちゃくちゃ可愛いもんね。あんな美人が義理の姉になるなら私も嬉しいし」
本音を言えば妹は兄が好きだった、異性として。でもこの気持ちは忌避されるものだと胸に仕舞い込んでいる。
応援する事もやぶさかでない。嘘ではない。好きだからこそ、兄の幸せを一番に考えてしまうのだ。
そもそも兄に恋した時点で成就なんて諦めている。だからせめて、邪魔をせず応援する良い妹として、ずっと近くに居たかった。
「よし……。何か不安だし、今週中に告白する……!」
クオンと同様、そろそろ告白しようと意を決したカケル。それに「今週中って……。明日にでも告白してきなよ、気が変わんない内にさ……」と呆れ、ヒヨリは溜息を吐いた。
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カケルが家で呑気に談笑していた時――。
「うぉぉ♡ 何だこれぇ、きもちいぃ~♡」
ハジメはクオンの初めてを奪っていた。
クオンは体中を舐め回され、中〇しをされまくり、子供を産む約束までしてしまう。
挙げ句、行為の最中に呪難に体の主導権を渡された時、自ら動かしてしまった。快感に抗えず、行為を楽しんでしまったのだ。
半日以上続けた行為から解放され、就寝したのは――午前8時頃。学校の生徒が登校している時間帯だった。
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〈あとがき〉
「続きが気になる!」
と思ってくれた人は【★】してくれると嬉しいです!
モチベが上がります!!
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