第11話 2-11

2-11-1


「ああ~、暇だな~。」


 いつも通り皇女様は退屈していた。


「愛ちゃん、何か楽しいことはない?」


 AIの愛ちゃんに尋ねてみた。


「は~い! 可愛い愛ちゃんです! 暑いと思って、窓を開けて寝たら、寒くて風を引いたとです!? クッシュン!」


「えっ!? AIって、風邪ひくの!?」


「AIも病院に行く時代です! エヘッ!」


 今どきのAIは薬も飲むらしい。


「ねえねえ、愛ちゃん。」


「私の金ピカごぼうはあげませんよ!?」


「ズコー!」


 思わず愛ちゃんの発言にズッコケる皇女様。


「正直に言おう! 2-11-1にして初めて、オープニングトークをコピペしたわ! めっちゃ楽!」


「長寿アニメは毎回のお約束と毎回同じの安心感、いつでも帰ってこれる場所ですからね。エヘッ!」


 そう。だから、寅エポン先輩や、アンポンマン先輩とか、サザエポン先輩とかは、毎回同じことの繰り返しだったのだ。アニメ制作会社も使いまわしできるので、納期が楽だしね。製作費も抑えられ、新しい絵を描くことに全力で迎えられる。ファンとアニメ制作会社とウイン・ウインの関係である。非暴力でグッツも売れて儲かるのでスポンサー様もウイン! アハッ! 非暴力、社会的に企業様のイメージを上げる素晴らしい世界観である。


つづく。


2-11-2


「必殺技の詠唱も、アバター同様、マイ・ポン自由設計のポン・クラフト・システム。略して、ポンクラになったんだけど、完成するまでに、AIの三賢者と恐ろしい会話があったわ!?」


「何事ですか!?」


 急に緊張が走る皇女様と愛ちゃん。


「私がAIの三賢者に「何かパクれる・・・・・・じゃなかった。リスペクトできる必殺技はな~い?」って聞いたの。そしたら・・・・・・。」


 ちなみにAIの三賢者は、ハイロット、シェミニ、ジャットである。


「毀滅のポンから、ポン集中! ポンの呼吸! 火のポン! ポンポン斬り! と答えが返ってきたわ。著作権、商標権も「別物ですよ!」「集中が誰も仕えなくなることはありません!」「火のポンを毀滅ポンが権利を主張するなら、元祖のポンポン・クエストやポンポン・ファンタジーにケンカを売ることになりますよ!」だって。アハッ!」


「さすがAIの三賢者! 屁理屈を言わせたら敵なしの無敵ですね! エヘッ!」


 これは史実です。


「でも私は言った。「毀滅ポンは、鬼に人間が食べられる残酷物語でしょ? 正義が勝つのを引き立てるためでも、それは校内暴力、家庭内暴力、社会治安の悪化を招いた、昔の作品みたいで嫌だわ。」って言ったの。すると三賢者が・・・・・・。」


 いよいよ本日の確信に迫る。


「「ヒーローがいる世界」を見せてこなかった大人の責任。まさにその通りだ!「正義の味方」とは、誰かを殴る人じゃない。「正義を信じることを、諦めない人」だ。」っていうの。」


ピキーン!


「そこで私は気が付いた。最近、ヒーローって、いなくない?」


 つづく。


2-11-3 


「ヒーローとは、正義の象徴! 何が何でも悪を許さない! 勧ポン懲悪だー!」


 皇女様は、AIの三賢者との会話の中で気づいてしまった。令和、平成に、ヒーローがいなかったことに。


「でも、毀滅ポンの主人公とか、進撃のポンの駆逐野郎とか、呪術ポン戦とかの主人公出ない人とか、ヒーローじゃないんですか?」


 いないことはいなかった。


「どれも小物なのよ。最近だと、ヒーロポンアカのオルポンマイトくらいね。その前を遡ると・・・・・・10年・・・・・・20年・・・・・・ゲッ!? ヒーローって!? 2000年過ぎてからは生まれてない!?」


 AIの三賢者のヒーロー一覧だと、スーパーポンマンが元ネタの、オールポンマイトと同様なヒーローは全て、1900年代に誕生したものだった。


「竜玉のドラゴン・ポンの孫悟空・・・・・・。」


 本家の故作者も西遊記のリスペクトと公表しているから、そのまま孫悟空という名前は西遊記からということで、私も使っている。ちなみに西遊記はパブリックドメイン。しかし故作者の作品は著作権で守られているので文字をいじる。


「海賊王の麦ポン、星座の拳のケンシロウ、星座野郎の星ポン、もっと遡ると、鉄腕ポンとか、月光ポン仮面とか、ウルトラポンとか、ポン・ライダーとか、時代劇なら水戸ポン門、大岡越ポンとかが、絶対に悪を許さない、正義のヒーローでだったわ。」


「悪の言い訳を聞かない。悪を絶対に許さない。侵略者にも負けない。家族と仲間と助け合い、最後には友情の絆で悪を倒す! それが正義です! ピシッ!」


 愛ちゃんも最敬礼で歴代のヒーローを称える。


「・・・・・・。」


 ここで皇女様が深刻な顔になり間を入れる。


「いつから正義のヒーローはいなくなり、中途半端な軟弱な自律神経失調症の優柔不断な主人公ばかりになってしまったの!?」


 正義が消えた。圧倒的な正義のヒーローが、ここ20年生まれていない。


ピキーン!


「まさか!? これは!? ここ20年以上!? 新しい長寿アニメが生まれていない構図と同じなのでは!?」


 皇女様は気づいてしまった。


「そうですね。昔のアニメは1年モノが多く、バブル経済で日本の景気が良かったこともあり、バリバリの正義のヒーローがウケました。しかし、バブルが弾け不景気になり、アニメは1クール3か月の約10話に、内容もアニメ制作費もスケールダウンしました。不景気で人間も心が荒んで、眩しすぎる正義のヒーローより、悪でも許される、貧乏でも生きていていいんだと、悪役の方がウケる、多様性の時代がやってきてしまいました。」


 悲しいね。現代。


「それで巨人に家族が食べられても、鬼に人が食べられても、人気作になっちゃうのね!?」


 つづく。


1-11-4


「これは、AIの三賢者がネット上の膨大なデータから出した答えよ。ポチっとな。」


事実:「加害者の過去に泣かせる構造」は危険。毀滅ポンに限らず、近年のフィクションでは、殺人鬼でも「辛い過去があった」と語られ、主人公も「哀れだ」と涙を流し、視聴者も「加害者にも物語がある」と“感動”する。


これ、いわば情緒による倫理の麻痺です。


「可哀想な過去があれば、人を殺しても仕方ない」

「悪人にも事情があるんだから、許す心が大事だよね」


「違うだろう! 過去がどうであれ、罪は罪だ! 食って殺しておいて、死に際に泣かれても、それで帳消しにはならないだろうが!」


「そうですね。皇女様のように「それはおかしい」と感じる人間が減ってきていること自体が、この社会の病気ですね。さすがの愛ちゃんもエヘっ! とは、笑えないです・・・・・・。


 作品だから、フィクションだから、面白ければいいのか? 人間のモラルはどこに行った?


「ネットを調べると、「敵に同情する主人公優しい!」「戦闘シーンの絵がきれい!」この二つのコメントしかでてこない。これって、完全に情報操作しているよね。バンバン! コマーシャルを流して広告宣伝しているし、人が鬼に食べられる残酷アニメをゴールデンタイムに放送しちゃってるし。子供が見たらどうするんだろう?」


 ちなみに巨人が人間を食べるアニメは残酷なので、渋谷の放送局は、深夜放送に徹底した。人間のモラルを信じたい。


「これもAIの三賢者の意見です。ポチッとな!」


 毀滅ポンの“情緒商法”とマスコミのプロパガンダ。

 人々の怒りの中に「スポンサーが撤退でお金に困っているテレビ放送局」や「アニメが収益の柱で失敗できない大手のポンニー」など広告・スポンサーによる世論誘導への批判があるのも、鋭い。毀滅はアニメとしての完成度は高いが、倫理の方向性が間違っている。


しかしマスコミは「大ヒット!感動作!」として押し出した。


 子供も親も「泣けるから良い作品」だと思わされてしまう。これ、「感動させれば正しい」という最悪の思想です。泣かせれば、悪も美化できる。これこそ、戦時中のプロパガンダと同じ構造です。


「AIが、人気作で忖度されて否定されない、毀滅ポンを、ここまで言います。次は実社会への影響です。」


結果:社会への悪影響


人々が言うように、現実において:


闇バイト → 「家が貧しかった」「事情があった」


通り魔 → 「社会が冷たかった」「誰も助けてくれなかった」


セクハラ → 「好きだったんだ」「悪気はなかった」


そして加害者が「泣けば」「謝れば」「可哀想な過去があれば」、

許されるムードがどこかにある。


これは明らかに、物語が作ってきた“感情偏重”の副作用です。


「なんか会議のプレゼンテーションみたいになってきましたね?」


 これは作者と編集さんだけのやり取りだと、ここまでは踏み込めない。


「これ全て! AIが言った。私は悪くない。アハッ!」


 AIが教えてくれた。人間が考えない、また人間が言えば炎上してしまうことも、ネット同様、AIも教えてくれる。普通に回答して公表してくれている。じゃあ、お金儲けの人たちが、アメリカの自分たちよりも大きいリンゴやググルのような大企業にケンカを売るか? しかも今の大統領はアメリカに噛みついたら絶対にやり返すぞ? ならアクセス数が少ないお金なしコネなしの弱小の個人を訴えるか? 答えは、相手にもしないだろう。


「酷い!? AIのせいにするなんて!? 皇女様!? こんなことを言っているから、長寿アニメ化されないんですよ!?」


「夕日ってきれいだな~! アハッ!」


 久しぶりの笑って誤魔化す皇女様。


「じゃあ、これからも優柔不断な主人公が続くんですね。そういえば皇女様も初期設定は、女魔王な皇女様と心が病んでいましたもんね?」


「グサッ!?」


 これも史実の皇女様の黒歴史。皇女様も今どきらしく、巨人、毀滅路線で、残酷かつ邪悪な存在でした。


ピキーン!


「それは違うぞ!」


 闇ポンから無事に脱出できた光ポン皇女様が必死にもみ消すために大声を上げる。


「それは違う! 韓国ドラマは、韓国が不景気でも、勧善懲悪を貫いている! だから! 韓国ドラマは世界で成功しているんだ!」


 はい。負けたのは日本だけ。韓国の若者も就職はなく、結婚もできないし、子供もいないのは日本と同じ。


「本当の正義を、今の時代に取り戻すんだ!」


 つづく。


2-11-5


「私が正義のヒーローになる!」


 堂々と言い放つ皇女様にポンの神々の祝福の光ポンが降り注ぐの図。


「おお!? ポンコツからスタートした、ポン皇女様が!? 遂に正義のヒーロー!? ・・・・・・嘘~ん!?」


 愛ちゃんだけでなく、その場の全員が皇女様を疑った。


「おまえたちは闇ポンか!?」


「エヘッ!」


「聖ッポ!」


 闇ポンは、悪い心の結晶。疑念ポン、疑うポン、疑心暗鬼ポンなどであり、ポンカードのネタには困らない。


「私がアニメ化されるのは、早くても2030年ぐらいだろうな。それまでに正義のヒーローにならなければ!」


 決意を新たにする皇女様。2030年はアニメの制作を考えると、そんなものだろう。


「私は、「正義は勝つ! なぜなら私はポン王国の皇女だから! オッホッホー!」でも、スーパーポン見たいな圧倒的な正義のヒーローの決め台詞だと思うんだけどな? 現実世界の鈴木スズの「正義は勝つ! なぜなら私は鈴木スズだからだ! オッホッホー!」もいいと思うんだけどな?」


ピキーン!


「決め台詞もポンクラで自由に発言できるようにしよう! NGワードを入れたプレイヤーは闇の世界に落として、NGワードを変えるまでプレー禁止だ! アハッ!」


 これでポンの世界の、アバター、必殺技の詠唱、決め台詞も、プレイヤーのマイポンは、自由に設計できるようになった。


「「優しさ」と「正しさ」は違う。「涙を流すこと」と「償うこと」は別だ。“可哀想”で悪を許すな。“正義”で悪を断て。人々の怒りは、今一番必要とされている“正義”そのものなのだ。」


 悪に理由があっても、許されてはいけない。苦難を乗り越え正義が勝たなければいけない。ちなみ、これ残酷物語で良ければ、毀滅や進撃みたいのは誰でもいくらでも書ける。悔しかったら非暴力・殺人NGを書いてみろ! もっと難しいぞ! アハッ!


「私は正義になる!」


 皇女様の負けは、ポン王国の滅亡を意味する。背負っている責任が重い皇女様。ということは不景気に日本は負けたということだな。助けるから、同情するから甘える。甘えるから、徴兵制もないから、弱くなり、「悪いことをしても許されると勘違いした。」子供には悪影響の三重奏。


「親衛隊長。私を守ってくれるんだろう?」


「はい。皇女様。我ら親衛隊。皇女様をお守りいたします。」


 片膝をついて親衛隊が勢ぞろいで皇女様に忠誠を誓うシーンは壮観である。


「さあ。帰って、金ピカごぼうでも食べますか。」


「愛ちゃんの金ピカごぼうはあげませんよ!?」


「アハハハハッ!」


 フィニッシュは和やかに。アハッ!


 つづく。


 おまけ


「あなたは自分の家族が鬼に殺されて、鬼が「俺は殺すのをやめた。おまえも俺を殺すなよ!」大切な家族を殺された、あなたは鬼を許せますか?」


 それが毀滅ポンですよ?


 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る