海の底のきらきら
@nana-yorihara
第1話 布団の海
泳げないわたしたちの間で、海に潜るのが流行ったことがあった。息を止めて深く深く潜り、底にある珍しいものを取ってくる遊び。目を開けたまま青い青い世界に進んでいったら、その日一日のいやなことぜんぶを忘れられる気がした。
「あったよ」
ハツくんはいつも、わたしが探しているものを見つけてきてくれた。
「ほら、真珠のネックレス。欲しいって言ってたでしょ」
パジャマの上から、首にかける仕草をしてくれる。
「わあ、ありがとう。とってもきれい」
わたしもそれが見える体で、ちょっとおおげさに喜んでみせる。
「じゃあお礼に、エンゼルフィッシュを捕まえてくるね」
「うん、いってらっしゃい」
エンゼルフィッシュなんて図鑑でしか見たことないけど、エンゼルが天使のことだっていうのは、お父さんに教えてもらっていた。わたしたちの海には、何だっているし手に入れられる。わたしとハツくんだけの海は、お布団でできたうそっこの海だった。
「マナ、ハツくん。ごそごそしたら羽毛が傷むでしょ。おとなしくねんねしなさい」
遊んでいるとたいていお母さんが来て叱られたけど、しばらくしたらわたしたちはまた遊びの続きをした。二人とも幼稚園では友達がいない一人っ子だったから、遊び相手に飢えていたんだと思う。
お絵描きと空想とお姫様ごっこと人形遊びが好きなところがいっしょで、わたしとハツくんはテレパシーに似たもので通じあっていた。叔母ちゃんがハツくんを連れてきた夜は、晩ご飯もそこそこに夢中になって遊んだ。
そして、どちらかが飽きてしまったら、手をつないで眠った。恋人同士みたいだった。
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