第23話 二度あることは三度ある

 電車に乗って最寄り駅まで帰ってきた。なんだかんだでもう午後四時かー。何かをするには微妙な時間帯だな。いつも通りお散歩するしかないか。


 改札を抜け、家までの道を歩く。駅から遠ざかり住宅街になるにつれ人がだんだんいなくなる。するとちょっと先に見知った後ろ姿を見かけた。二階堂さんだ。


 このままだと俺の方がやや歩くの速いから追いつくな。かといってノロノロ歩くのも変だし。同じマンションに住んでるのに挨拶しないのも感じ悪い気がしちゃう。


 横をスッて抜けるか? あたかも気づいてませんよという風に。いやでもなんか変な感じだしな。うーむ。


 そんな風にうんうん考えてたら二階堂さんが振り向いた。



「ストーカーかと思ったらあなたですか」

「一本道だからしょうがな――」



 瞬間感じる大きな魔力の存在。間違いなくこの近くにPIが来る。それも雑魚じゃないやつが。



(マリ。来ますよ)

「変身」



 本日三度目の変身だ。白いドレスに白い手袋、白いハイソックスに白いパンプスと、全身真っ白コーデに身を包む。それにしても一日で三回は過去最高記録なんじゃないか?


 二階堂さんは目を白黒させている。まあ無理もないんだけどのんびりできる状況じゃない。



「そ、その格好はなんですかいきなり!」

「とっととここから逃げて」

「は、はあ?」

「早く!」



 二階堂さんが駆けだした直後、目の前の空間が歪み始める。明らかに空間の歪みが大きい。これは出てくるPIも相当大きそうで嫌になるな。


 PIが現れる瞬間を狙ってビームを放つ。どうやら相手も考えることは同じだったようで、相手の魔力と相殺しあった。溜めの時間がなかったとはいえマジか。あたり一面に砂埃が舞い上がる。


 煙が晴れると、PIの姿があらわになった。いくつもの足が生えている巨大な緑のトカゲ。一言でいうならそんな感じだ。


 いやでもほんとデカいな。バスぐらいはあるんじゃないか? そんなことを考えながら手に魔力を集中させる。次は相殺させない。真正面からぶち抜く。



「マリちゃんビーム!」



 トカゲも口に魔力を集めてブレスのようにして発射してくる。もう一回力比べだ。激キモ爬虫類もどきが! 俺をなめるなよ! さらに魔力を込める。



「オラァ!」



 ブレスを飲み込んで、俺のビームがトカゲの体を貫いた。あわれトカゲは爆発四散。

 これでまた街に平和が訪れた。ふう。



(マリ! 右後ろ!!)



 反射的に魔力を操作し、右手でガードを固める。強い衝撃。そのままぶっ飛ばされ、ブロック塀に突っ込む直前で何とか受け身を取る。


 右手がジンジンする。久しぶりにいいのもらったな。折れてはないだろうけど、あざくらいにはなりそう。シロいなかったらヤバかったかも。



「今のニ反応すんノ? ナにオマエ?」



 そういって現れたのは仮面をつけた長身の男。軽く二メートルは超えているように見える。全身真っ黒の服装をしているのも不審だが、もっと変なところがある。


 この男から。生き物であれPIであれ、通常はわずかでも魔力を垂れ流しているはずなのに。あそこまで接近を許したのも魔力を検知できなかったからだ。


 警戒度をグンと上げる。あの攻撃の威力でそもそもの魔力を持っていないってのは考えにくい。技術か能力かは定かじゃないが、魔力を隠すことができるんだろう。



「コのあたりでズっとオレたちノ邪魔をシてたノはオマエ?」



 黒のっぽが話しかけてくる。俺ねえ……。



「そうだと言ったら?」

「ソれなら話が早い。オマエを殺しテ終わリ」

「おおこわいこわい」


 間髪入れずに腕を振るってきた。のけぞるようにして避ける。こいつ手が長いから結構距離感気を付けた方がいいな。


 バックステップを踏みながら、黒のっぽに向かって魔弾を数発撃ち込む。


 まっすぐ飛んで行った魔弾は黒のっぽの手によってはじかれる。うーん。真正面からだと有効打にはならなさそうだ。


 おとなしく近距離戦に持ち込んだ方がよさそう。手足長いから超近距離なら俺の方が戦いやすそうだし。



(シロ。魔弾の制御頼む。一個はフラッシュで)

(わかりました)



 コイツ相手に情報を出したくないから、いったんシロのことは隠す。さっきって言ってたし、コイツが集団で動いているならできるだけ手札は隠しておきたい。


 もう一度魔弾を周囲に浮かべ、黒のっぽに向かって撃つ。



「ソれはさっキ見タぞ!」



 黒のっぽが同じように叩き落そうとする。魔弾の影に隠れるようにして距離を詰め、一つの魔弾を相手に当たる手前で無理やり拡散させる。



「ガァッ」



 動揺。その隙に魔力を込めた左ストレートをぶち込む。


 浅い手ごたえ。あいつ上手いな。自分から後ろに跳んでダメージを軽減した。



「オマエ! ヨくもこのオレに傷をつけたナァ!」



 全く効いてないわけじゃないけど、まだまだピンピンしてんな。打撃で倒せるかもちょっと怪しい。うーん。どうにかしてビームを撃てる状況まで持ち込みたいな。


 間髪入れず黒のっぽに肉薄してインファイトを仕掛ける。右フック。ジャブ。ジャブ。ジャブ。とにかく前に詰める。



「グッ……! ガッ……! コのっ……!」



 押してる感じはするんだけど効いてんのかこれ? 殴ってる感触が変だ。水がパンパンに入った袋みたい。これ人間じゃないな?


 足払いが飛んでくる。ジャンプしてかわす。その瞬間黒のっぽの胸元が裂け、ものすごい勢いで何かが飛び出してきた。


 これ避けんの無理だな。タイミングも悪い。腕をクロスし、魔力を固めてガードの体制を取る。


 金属同士がぶつかったかのような轟音。そのまま後ろに吹き飛ばされる。腕いってぇ~。


 そのままやられっぱなしってのも面白くない。吹き飛ばされながら右手に魔力を収束させ、相手の顔面へビームを放つ。いつもより細く収束させ威力に重きを置いた。


 予測しにくいタイミングだったからか、見事直撃。ビームは仮面を貫き、黒のっぽの顔面は爆散した。


 電柱の側面に着地し、地面に降りる。ちょっとずれてたら出っ張ってるとこに刺さってたかも。あぶね~。



(マリ。まだ終わってませんよ)

(まあそんな簡単にはいかないか)



 頭部を失った黒のっぽが立ち上がった。その胸からはだらんと真っ黒の腕のようなものが垂れ下がっている。


 うーんやっぱり人じゃなさそうだ。人型のPIってこと? 初めて見たな。でもPIならよかった。これで迷いなく殺せる。


 手足を狙ってビームをやたらめったら撃つ。収束させればちゃんと効くっぽいし、頭潰しても死なないならとりあえず手足をもいだ方がいいだろ。


 黒のっぽは機敏に動いて的を絞らせないようにしている。あんまり俺をなめるなよ。


 逃げ先を予測してビームをぶち込む。黒のっぽの右腕に当たり爆散する。あと三回でだるまの完成だ。


 この状況を嫌ったか、俺に向かって胸元の手が射出された。そんな使い方もできるんだ。落ち着いてビームで撃ち落とす。



(これ嫌な予感するんだけど)

(私もです)

(わざわざ自分の一部を切り離してまでやることが時間稼ぎ?)



 普通ならそんなことに払うリソースじゃないし、戦ってる感じコイツバカじゃないんだよな。できればこの予感が外れてくれ。その方が楽だから。


 黒のっぽの首、右肩、胸元がうぞうぞとうごめく。幾本もの触手が絡み合い失った部分を形成する。ウワー最悪だ。


 瞬く間に戦闘前の状態に戻ってしまった。違うのは仮面がなくなったせいで、触手をねじったような醜悪な顔面があらわになっていることぐらいだ。


 案の定再生能力持ちか。嫌な予感が的中しちゃったな。しょうがない。いくらでもやりようはあるし切り替えていくか。



「オレをコこまデコケにシやがッテ! ゼッたイ殺しテやルぞ化け物メェ!」

「鏡見て言えやタコ」



 さあ、第二ラウンドだ。

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