中華時代劇の効用

坂崎文明

第1話 ある中華時代劇の教訓

「飛騨君、沖縄はどうだった?」


 声の主は、東京都町田市の白鷺しらさぎデータサイエンス大学付属小、中、高等部の校長である薬師御言やくしみことである。

 長い黒髪、切れ長の目、八頭身のすらっと長い美脚に黒色のミニスカスーツ姿ではなくて、ロングスカートになっていた。

 中等部一年生の橘怜たちばなれいの沖縄の実家の調査から帰還した、スーツ姿の飛騨亜礼先生は応接室の椅子に腰掛けている。

 隣には何故かメガネ先生もいる。

 本名は服部信三郎というのだが、何となく昔からメガネを掛けてるからか、メガネ先生と呼ばれている。


「いろいろと、途方もない話を聞きましたが、少し整理してからお話しします」


 飛騨先生はハンカチで汗をいた。

 疲れが顔ににじんでいた。

 アイスコーヒーを一口飲んで、ようやく落ち着いたようだ。

 もう少し休ませてから、話そうかと薬師御言は思った。

 もう九月後半だと言うのに暑い。


「メガネ君、そういえば、『薬害調査官 飛騨亜礼』の小説投稿サイト『作家でたまごご飯』への投稿、ありがとうね」


「薬師校長、それ、何年前の話ですか」


「あれは確か、2019年、某T4ブルーファージウィルスのパンデミックがあった時期だから、もう6年ぐらい前の話かな。まあ、ちょっと思い出したので、お礼、言ってみた」


 薬師御言は前職の『厚労省秘密査察部』時代の棘のような物が鳴りをひそめて、今でも美人ではあるが、落ち着いた雰囲気に変わってた。


「メガネ君、このドラマ面白いでしょう?」


 薬師御言は応接室ソファーに座ったけど、昼過ぎに再放送されてる中華時代劇のドラマに見入っていた。


「ああ、『真如伝〜紫禁城で涙に暮れる復讐の王紀』ですか。僕も観てますよ。でも、このドラマ、皇帝の描写が凄過ぎすぎて、某中国の書記長の怒りを買って、中国では放送禁止になってるようですね」


 メガネ先生はこういうドラマとか映画が大好きなようである。


「まあ、仕方ないかな。ドラマだから誇張も多いし。某書記長は皇帝を目指していたのに、中国の不動産バブルが弾けて、失われた100年とかになりそうで失脚して、今、生きてるのかどうかさえ分からなくなってるじゃない」


「確かに。だけど、このドラマの皇帝陛下もエゲツないというか、政治的に台頭されては困る臣下の妃嬪ひひんに、子宝の薬だと言って、避妊薬飲ませてるし、皇后は自分の邪魔になりそうなきさきに、避妊薬の入ってる腕輪をプレゼントして、毎日つけなさいと言ってるし、後宮の妃嬪のサバイバルは大変だと思いました」


「でも、メガネ君、某T4ブルーファージウィルスのパンデミックだって、あれは厚労省の人口統計ではただの風邪で、某お注射で日本人が八十万人以上亡くなってるのよ。米国ではドランク大統領の任命したRFケネスJr厚生長官により某お注射は全廃されて、医療関係者が逮捕され、裁判沙汰になってるし。大騒動になってるのよ」


 元『厚労省秘密査察部』なので詳しすぎる。


「まあ、テレビで洗脳すれば、日本人など簡単に騙せると思ってた政権与党は選挙でボロ負けして、厚労大臣も落選し、日本人も少しは目覚めてるのかもしれませんね」


 メガネ先生は希望的予想でそう言ったが、現実はどうなのか定かではない。

 飛騨先生は相変わらず無言である。

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