第4話:お口の中が、答えでいっぱい
康太の顔から血の気が引いている。
さすがに桜子はいたたまれなくなった。
「……典子……もう、やめなさ……」
そのか細い制止の言葉を、典子は涼やかな視線で遮って、何か落とし物を探すような動きで、康太の前に膝をついた。
「え……。何を止めたらいいんですか?」
そう言って彼女は、康太の下半身に顔を近づけ、その太ももに手を触れていた。
その瞳は、もうメガネというフィルターを必要としていない。
ガラスのように冷たく、全てを見透かしている。
「かわいそうですよ。二人の前で、康太先輩が自分の答えに詰まっていたら」
桜子は「それは、あなたが変な質問するから!」と声を少し強くして言ったが、典子は気にしていなかった。
それどころか「康太先輩、ひどいですよ。……勇気を出さない男の人のせいで、こんなものを見せられている、あたしと桜子先輩のこと。かわいそうだと思いませんか?」と、睨むような目で康太を凝視した。
「康太が……ひどいって……?」
「はい。女の子を二人前にして、自分の気持ちをはっきり言わないことの意味、彼にわからせないと」
典子がその指を、康太のジーンズのジッパーにかけた。そしてそれを引き下げていく。
しかも抵抗の意思を失った彼の下着を開いて、そこに隠れていた雄の象徴を、薄暗い照明の下に生々しく姿を現させた。
それは桜子が今まで見たこともないくらい、猛々しい熱量と生命力に満ちていた。
典子は「うわ……大変ですねぇ……」と、自身の黒いボブを片手でかき上げ、唇を彼の先端へと近づけていった。
生温かい唇が先端を包み込んだ瞬間、康太の背中が弓なりにしなった。
「うっ……あ……」
彼の口から漏れる、苦痛とも快感ともつかない呻き声が、静まり返った室内に響き渡った。
桜子は「の、典子さん」と顔を覆った。
典子の頭が、少しずつリズムを作っていく。
わざと立てられるような水音と、康太の荒い息遣いが、部屋の空気を満たしていく。
桜子は自分の呼吸もまた、彼らのリズムに同調するように、浅く速くなっていることに気づいた。
──体が、熱い。
自分の意思とは無関係に、股の間が疼き始めていた。
典子は行為の最中も、しばしば桜子の顔に視線を向けた。
その瞳はまるで桜子の反応を観察し、分析しているかのようだった。
康太の手が虚空を掴むように、ソファの背を掻きむしる。もう限界が近いのだと、誰の目にも明らかだった。
典子は一度、唇を離すと、軽く乱れた息で桜子に向かって言った。
「お口で言えないなら、別の方法で出してもらうしかないんですよね……」
「……なにを」
ようやく絞り出した桜子の声は、自分でも驚くほど、潤んで震えていた。
「康太先輩、もうすぐみたいです。……桜子先輩にも、答えが出るところ、見せてあげなくちゃ、ですね? 先輩、ちゃんとできるよね?」
典子はそう言うと、再び彼の猛りを含んだ。
そして、これまで以上にわざとらしい音を立てながら、彼の熱を扱き上げていく。
「あ……っ、典子……もう、だめだ……っ!」
それまで典子に触れることを拒んでいた彼が、その頭を両手で掴んだ。
そして絶叫に近い声と共に、その身が痙攣し始めた。典子は、そこへ深く頭を沈める。
数秒の硬直の後、彼は、まるで糸が切れた人形のように、ぐったりとソファに沈み込んだ。
典子は、おしぼりを開封して唇を拭うと、ゆっくり立ち上がった。
「お口の中が、答えでいっぱいになっちゃいました」
彼女は放心状態の康太と、凍り付いたままの桜子を交互に見やると、こともなげに言った。
「これが彼の答えだったんですね。桜子先輩……納得しました?」
桜子は、熱い息を整えられない康太と、喉を鳴らした典子を見て、ただ青ざめていた。
「納得できていないお顔ですね? じゃあ……もう一度、彼に答えを出させてあげましょうか。夜もまだこれからですし……、あたしの部屋だったら、ここからすぐですよ?」
彼女のメガネは、彼の熱気でまだ少し曇っていた。
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