第2話   次に新しいエピソードを作成ww

【トイレのアンパンマン】


港町にあるもうひとつの我が家は

築年数不明のぼろ家、いえいえ

よく言えば古民家なんだけれども

トイレはリフォームされて間もないので

まだまだ綺麗なのである。


ドアを開けると

勝手にトイレの蓋がほらほらって開くやつ。

ね、いいでしょう。

・・・い、いいよねぇ。


でもね。これって停電したら

結局自分で開けるっちゃろうもん。


しかし。

蓋開けるの間に合わんくらい

厳しいときがわたしにもそろそろ来つつある時を思うと

やっぱ、気の利いたものに違いない・・・

とかなんとか考えながら

便座に座ると、目に入る。


アンパンマンの、落書き。


ドアの裏側で、

座ったときちょうど目線に入るあたりに、


アンパンマンが自分のほっぺたをちぎって

小さなこどもに差し出している・・・

そんなシーンの漫画が、

素朴な鉛筆書きで描かれている。


実はこの古民家は、

一階部分をカフェとして、賃貸している。


カフェにはいろんなお客さんが来るみたいだから、

きっとお客さんのこどもが、描いたのね。

可愛いもんだ。

下手ウマみたいな子供っぽいタッチが

漆喰調の壁の雰囲気にも、合ってなくもないし。

オーケーオーケー。


しかし。

よくよくトイレの壁を見回すと、

このアンパンマンが、

上下左右、あらゆる箇所に登場。


はい、こどもでは到底手の届かない、

高いところにも。


よくみると、とぐろを巻いたナニカの絵も。

か、可愛いといえば可愛いような・・・

・・・・・・・・。


結果、なんか味がある

トイレになっているということにする、

こころの広い大家でいよう。


そもそも、アンパンマンの落書きって、

こどもだけが好んでするものではないのだなと、

狭いトイレの中の熱さで滝汗たらしながら

しみじみ理解できた氣がする、


まだまだ暑い、

秋の初めの午後也。

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