第36話 死にゲー廃人、特訓する
それから俺の六日間は一瞬で過ぎ去っていった。
二日目は残ったボスを視界がない状態で撃破した。
正直、守護の巨兵と守護の槍兵以上に面倒な敵は出てこなかった。
コメント欄は俺の視界無しクリアに盛り上がっていたようだが、俺にとっては別に驚くことでもない。
そもそも俺は何度もボスを撃破しており、ボスの行動モーションは全て暗記している。
言うならば予習をしているのだ。
初見の問題はなく、咄嗟の判断の練習にはなっていない。
それならどうやって咄嗟の判断を練習するのか。
それはAIではなく人間の相手をするだけである。
六日目。俺はいつものようにソウルリングⅣに潜っていた。
「とりあえずこれで五十連勝か?」
俺は双剣を鞘に納めて、一息つく。
ソウルリングⅣにはPVE以外にも対人のPVPが存在する。
俺はそのPVPで配信のリスナーを呼び、目隠しの訓練をしていた。
rock:目隠しに負けた…
トルエン:まぁ廃人相手なら仕方ない
うぃきっど:それな。廃人が対人で負けたこと見たことないし
あーく:遠距離からこっそり魔法を撃っても避けられるとか、どうすればいいねん
対人戦はやはり参考になる。
自分の想定外の攻撃や状況になることが多い。
その時の対応力や判断力がかなり培われる。
中にはかなり距離が離れたところからスナイパーのように魔法を放ってくるプレイヤーもいた。
そういった放たれた魔術の威力や種類などから距離を推測し、そこに一気に距離を詰めて倒すだけである。
その時はコメント欄からチーターだの見えているだの言われたが、そう言われても俺はしっかり計算しているのだから仕方ない。
リュック:そもそも廃人はどうして目隠しなんてしてるんだ?
こさん:いつもなら一周で企画は終わるのに今回は何かガチってない?
「エクリプスで倒したい敵がいるんだよ」
ろうにん:倒したい敵?
arklight:廃人でも倒せない敵とかいるの?
www:MMOならレベル不足とかならまぁ分からなくもないけど
「ヒュブリスっていう傲慢の大罪と呼ばれるモンスターだ」
ふーど:誰だそいつ?
廃人推し:知らないのか? エクリプスの絶対倒せない最強モンスターだ
rrrrrrrrr:聞いたことある。まだ倒せないエンドコンテンツなんだろ?
appp1e:今の最強プレイヤーでも倒せないらしいしな
「そいつが真っ暗なところにいてさ。視界が全くないんだよ。だから死にゲーで練習しようと思って」
リンダ:いいね
ばぼ:七つの大罪だぞ? 最近始めたような初心者が倒せるわけないだろw
qooo:死にゲーだけの奴が適当言ってて草なんよ
ソウル:うおw
いつものリスナーは肯定的なコメントが多いが、ここ一週間は否定的なコメントも稀に見つかった。
今まではそんなことなかったのに、急にどうしてだろうか。
そう思って俺は配信画面を見つめる。
「えっ、今、同接3千人も見てくれてるのか」
するとそこには同接三千の文字があった。
死にゲー配信者としては異例の数字だろう。
視聴者数順で見ると、俺の次は同接150人のVチューバ―。
それでも十分凄いのだが、まさか自分が3千人も見てくれているとは思ってもいなかった。
それなら否定的なコメントがあるのも納得がいく。
「なんでこんなに人が多いんだ?」
まちゃぽ:今SNSで廃人が話題になってるからな
うぉりあ:目隠しで死にゲー全ボスクリアに目隠しで対人戦五十連勝。これに惹かれない人いないだろ?
アープ:全ボス撃破の動画が急上昇に上がってたからそこから来た人が多いんじゃない?
「急上昇⁉」
俺は思わず声を上げてしまう。
動画に関しては俺は詳しくない。というかほぼ知らない。
前に、昔からのファンだという人が無償でいいから編集させてくれとSNSでDMをくれたのだ。
流石に無償も申し訳ないので利益を7:3で分配するようにして、動画の管理を頼んでいる。
他の編集者の利益がどれくらいか分からないため、これがかなり酷い割合だったら申し訳ない。
ただ編集をしてくれている方も特に何も言ってきていないのでそのままの関係が二年ぐらい続いていた。
「今度自分の動画でも見るか」
俺は自分の動画を見ることはあまりない。
編集さんから確認の連絡は来るため、最初は確認していたのだが面倒になって最近は適当に返事をしていた。
もちろん俺が編集さんの実力を信頼しているというのもある。
(今度、エクリプスのデータも送ってみようかな?)
エクリプスは配信はしていないが、念のためにデータは保存してある。
彷徨う騎士やヴェノムサーペントはもちろん、使徒のクエストもある。
もしヒュブリスを倒せたならさらに話題になるのではないだろうか。
(まぁ編集さん次第だな。死にゲー以外興味ないかもしれないし)
俺はそう結論付けて目の前の死にゲーに集中する。
「そろそろラストにしようかな。最後に相手してくれる人はいないか?」
俺がそうコメント欄に尋ねるとコメント欄は一気に静かになった。
ふぶき:誰かいないのか?
aiueo:まぁ五十連勝見たらだれも挙手しないよな
arkraid:戦っても勝てないの目に見えてるしな
最初は誰もが挙手してくれていたのだが、二十連勝をしたあたりから参加者が一気に減った。
もちろん来たばかりの人はやりたいとコメントしてくれてる人もいるが、せっかくなら昔からのリスナーと戦いたい。
そう思いながらコメント欄を見ていると、
さなだけい:はい! やりたいです!
「おっ、じゃあ、さなだけいさんと戦おうかな」
このリスナーは俺も記憶に残っている。
昔から毎回配信に来てくれている古参の方である。
そして数分も経てば、さなだけいが俺の世界に訪れた。
金髪の好青年で、装備もしっかりとした重装備であり、俺が想像していた容姿とは少し違った。
昔からの死にゲーオタクだと思っていたため、全裸装備かネタ装備を想像していたのだが、本気で俺に勝ちに来ているようだ。
すると、さなだけいは俺に微笑みながら言った。
「お久しぶりです、師匠」
「ん?」
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