第14話


メアリーは、城の部屋に差し込む朝日の光で目を覚ました。前日のできごとは遠い記憶のように思えたが、心の中ではまだ響いていた――楽しさ、笑い声、庭園の散歩、そして一時的とはいえ自由を感じたあの瞬間の感覚。しかし今日、彼女を包むのはもっと重い心配だった。ローズが背後にいる――その確信が、心を蝕み、周囲のあらゆる音や影に警戒心を募らせていた。彼女は、一瞬たりとも気を抜くことはできなかった。


伸びをしながら、使用人たちがいつもの元気な様子で部屋に入ってきた。最初の頃なら、必ずメアリーの顔に笑みを引き出すほどの活気だった。


「おはようございます、メアリー!」と、エステファニが明るく声をかけた。「よく眠れましたか?」


「ええ…よく眠れました。」メアリーは答えたが、微笑みはかすかで、ほとんど消えかかっていた。


二人の使用人は互いに目を合わせ、メアリーの憂いを帯びた表情に気づいた。


「どうしたのですか、奥様?」と、リーナが穏やかに尋ねる。


メアリーは少しためらった。何もないと答えようとしたが、使用人たちはそれを受け入れず、さらに促した。ため息をつき、メアリーは心を開いた。


「嫌な夢を見たの…そして、誰も私のことを好きではない気がするの。みんな私を利用しているだけ…」声は震え、不安でいっぱいだった。


リーナは眉をわずかにひそめ、慰めの言葉を探した。


「うーん…その気持ちは分かります。とても辛いですよね。でも、奥様、人生では誰にでも好かれることはできません。大切なのは、自分が幸せであることに集中することです。いつか、あなたのありのままを好きになってくれる人が現れます。」


メアリーは胸の奥に温かさを感じ、かすかに微笑んだ。


「ありがとう…本当に。」


使用人たちは、彼女が少しずつ落ち着きを取り戻しているのを感じ、慎重に積まれた手紙を手渡した。メアリーは手をわずかに震わせながらそれを受け取り、送り主を見て心臓が早鐘のように打った――それは父からの手紙だった。


「今日、彼は城に来ましたが、王子は訪問を許さなかったのです」エステファニが小さな声で説明した。「彼が見たところでは、結婚式の間に口論があり、リスクを冒したくなかったようです。」


メアリーは眉をひそめ、困惑と苛立ちを感じた。なぜ父はそうするのか?なぜ、自分が最も助けを必要とした時に何もしなかった父が、今さら近づこうとするのか?


重いため息をつき、メアリーは最初の手紙を開いた。どの言葉も前のものより空虚で、形式的で、家族に戻るよう促す内容ばかりだった。義務や出席の必要を思い出させ、彼女の人生は彼らの支配下にあることを示唆していた。それは、もし従えば自分の自由は制限され続けるという、巧妙な操作のように感じられた。


メアリーは手紙を横に投げ、表情を固くした。


「全部、嘘だ…」と小さくつぶやき、内に湧き上がる決意を感じた。「戻らない。もう、誰にも利用されない。」


彼女は立ち上がり、深く息を吸い、開いた窓を見つめた。穏やかな風が少しの涼しさを運んできたが、心のざわつきは消えなかった。危険は依然として潜み、ローズは依然として彼女の人生に影を落としていた。しかしその瞬間、メアリーは自分自身に静かな誓いを立てた――誰の操り人形にもならない。家族にも、ローズにも、誰にも。


城内は静かだったが、メアリーはその平穏が一時的であることを理解していた。朝が進むにつれ、彼女は次に取るべき行動を慎重に計画し始めた。自分を守り、人生を一歩ずつ取り戻すために――誰にも裏切られないように、誰にも頼らずに。

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