第12話 妹と彼女②
放課後がやってきた。いや、やってきてしまったという方が最適か。
昼休み、糸さんと約束した妹、叶愛と会わせてほしいというもの。
どういう意図があるのか全く分からないけど、とりあえず今俺が願うことは何事もなく終わって欲しいということだ。
なんだか今日の糸さん怖いし。
叶愛には彼女に会って欲しい、と伝えてある。先週二人の間であったことを話しているから何となく察してくれたのだろう。
二つ返事で了承してくれた。それになんだか向こうも乗り気らしい。
本当、変なことにならないといいけど。
「行きますよ。幹くん」
「大丈夫なんですか?友達がこっちを見てますけど」
「先週までそんなの関係なく私を連れて行ってましたよね?」
「……」
それを言われたら何も言えないな。この3ヶ月間俺は彼女のことを何も考えず嫉妬ばかりしてヤンデレしてて……それを止め……
「止めなくていいですよ?」
「でも……」
「幹くんに何か文句を言う筋合いがあるとお思いですか?」
「無い…ですね」
「早く行きましょう」
叶愛との約束の場所は学校近くにある個室のある喫茶店。喫茶店に個室があるのはびっくりだが、叶愛は友達と行ったことがあるらしい。
「ここですね」
「分かりました。早く行きましょう」
念の為叶愛に連絡してみると既に入っているらしい。
俺と糸さんは店員さんに名前を伝え、叶愛のいる個室へと案内してもらう。
部屋に着くと叶愛はスマホをいじりながら待っていた。そして俺と糸さんの姿を確認すると少しニヤッと笑って立ち上がる。
「こんにちは、私幹也の妹の叶愛です。よろしお願いします、兄さんを振った彼女さん?」
瞬間、この個室の中が冷蔵庫のように凍りついたような気がした。
何この愚妹は入室早々爆弾を投下してるの?
馬鹿なの?いや、馬鹿だな。妹にこんな汚い言葉は使いたくないけれど流石に冗談がすぎる。
今の状態の糸さんにそんなこと言ったら一体何をしでかすか。
「ふふ、面白い冗談を言う妹さんですね幹くん?」
ヤバい、顔は笑っているけど目は笑ってない。
これは『あなたは妹に私のことを何と説明したのですか?後で覚悟しておいて下さいね?』の目だ。
ごめん妹よ。兄さんは今日無事に帰れるか分からない。
「叶愛さんでしたね?敬語は不要ですよ。今回は同じ目線から話し合いたいと思っていますので」
「なら振った彼女さんも」
「振ってません」
二人の間にビリビリ、否バリバリの雷が見えているのは俺だけだろうか。
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