第43話 誕生「ブルーインパルス」
≪こちらデルタ3、巨大化した十文字候補生が、現在対象生命体と対峙しています≫
上空を飛行中の戦闘機は、真一が巨大化したことでその火力攻撃を一旦停止し、戦闘の観測に徹していた。
真一は、ミサイルに撃たれた衝撃で少しぼんやりとした頭の中であっても、目の前にあの巨獣がこちらをめがけて突進してきている事だけははっきりと理解出来ていた。
そして、自分の近傍に、バイクを停めてこちらを見ている三島美津保の姿を確認すると、真一の意識は完全に覚醒状態となった。
あの怪獣を倒さなければならない、しかし、場所はここではない、と。
≪十文字候補生が・・・・大きくジャンプしました≫
それは、高速道路の森林地帯から離れようと、実に直線的な発想と言えた。真一は走って移動するより大きく飛んで跳ねた方が街を壊さずに済むと考えたようだ。
「あのバカ!」
美津保は、真一の取った行動が、自分を怪獣の脅威から遠ざけようとの判断だと悟り、一言つぶやいたのである。
しかし、光子tえ大ジャンプを繰り返すことで、怪獣と真一の距離は素早く縮まって行く。
≪対象生命体と十文字候補生、接触≫
怪獣の両腕が真一を真っ二つにでもせんと大きく振りかぶって勢いよく下ろされた。
苦痛で顔が歪む真一。
体長差では若干真一が大きいものの、相手は怪獣、パワーでは到底勝てそうもない。
そして、真一はこの怪獣から強い敵意が向けられている事を理解した。
そう、先ほどまでゆっくりと街を破壊していた怪獣が、自分に対しては激しく怒り狂って居るように感じられた。
彼は、そここそがこの戦いの勝機だと理解するのである。
「なんだあの巨人は?」「怪獣の仲間じゃないの?」
市民も、ようやくこの巨人が怪獣を倒すという使命を帯びた正義の味方であることを理解し始めた。
それは真一の行いからではなく、剥き出しとなって向かってくる怪獣側の敵意にあった。
それを見ていた幼い少年が「ガンバレ」と叫んだことで、沼津市民の多くはこの巨人を応援し始める。
「見なさい十文字君、市民はあんたの味方に付いたわよ」
美津保の表情にようやく笑顔が戻ったが、楽観には程遠い状況である。
怪獣の猛攻撃が、真一の肩部に入ってしまうのである。
「十文字!」
思わず美津保が叫んでしまう。後から彼の本名を叫んでしまった事を後悔しつつ、では一体なんと呼んだら良いのかも見当がつかない。
この時、美津保の中に一つの閃きがあった。それは先ほどの青い閃光だ。
「ブルー・インパルス!」
何も考えず、彼女はそう叫んでしまった。
しかし、それが伝播して、最初に反応したのは地元の子供たちである。
「がんばれーブルーインパルス!」「負けるなーブルーインパルス」
それは昭和の子供たちがヒーローを応援する姿に似ていた。
大人達は、この絶望的な状況にあって、子供たちの声援に勇気をもらったような気がしていた。
そして、「ブルーインパルス」の声援は、大人と子供の差もなく、次々と伝播していった。
「見てごらん、みんなあんたを応援しているんだから!」
美津保の瞳に、また涙が溢れて来た。怪獣への恐怖が市民を一つにしたようにさえ感じられる。
しかし、当の真一はそれどころではない状況に追い込まれていた。
既にその体は傷だらけで、出血も危険な領域に入っていたのである。
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