第25話 もう・・・・精一杯で

 突然、木蓮がデッサン会をしたいと言い出した。

 こんな緊迫した状態で、一体何を言っているのかと真一は思ったが、予想に反し優は快諾した。

 

「おい、なんでOKなんてしたんだよ」


 そう言いつつ、ちゃんと服を脱ぎ始める真一を見て、優は「真面目なんだな」と笑ってしまった。

 

「真一、内田さんは絶対に帰さないとダメだと思う。そして、僕たちはもうこれでお別れになるかもしれない」


「それって・・・・」


「うん、司法が動いた時点で彼女が言う通り、亡命でもしない限り永遠に逃げる羽目になる。仮に亡命したって、行った先でバラバラに解剖されてしまうかもしれない。だったら、投降する際に、僕たちの気持ちや意見をしっかり通せるようにしないと、なんだよ」


「どうやって」


「僕に任せて。考えがあるから。でもその前に、お世話になった内田さんにはお礼をしないとね」


「お礼・・・・あ、これがか。そう言う・・・・こんなんでお礼になるのか? 小汚い男子高校生の裸なんて」


「まあ、人によっては価値があるみたいだよ」


「・・・・へー」


 真一は、まだまだ自分には知らない世界があるんだと思いつつ、相変わらず綺麗な体をしたヤツだな、と優の裸体を眺めた。

 

「わ、準備出来たんだ」


「おう! チャッチャと描いてくれよな!」


「寒いと思って、暖炉に火を入れておいたよ」


「サンキュー!」


 真一がそう言い終わる前に、木蓮は急に上着を脱ぎ始めた。


「どうした? 未だ暑くは無いと思うんだが」


「違うの・・・・私もね、二人の仲間になりたくて・・・・」


 木蓮は、上着の次に、ブラウスのボタンを外し始めた。そして、遂にはスカートのファスナーに手をかける。


「おい、何やってんだよ! 女子が男子の前で・・・・おい優、何とか言ってやってくれよ!」


「・・・・いいよ内田さん、僕は受け入れてあげる」


「ちょっ、優! お前、何言って・・・・」


 真一と優がそう言い合っている間に、木蓮はもうすっかり裸になってしまっていた。

 彼女は今日、少しだけ悪い子になってみたかった。

 良家のお嬢様が絶対にしないような事を、今日だけはしてみたい。

 そんな女子の気持ちなど知る由もなく、真一は目の前に突如現れた白く美しい女子の裸に・・・・興奮していた。

 なんと言っても思春期真盛りの男子高校生である。

 既に鼻息も荒く、顔はまるで「ガリガリ君」のように豹変していた。

 そして、となりの優を見ると、それは何事も無かったかのように平然としている。真一には、それが妙に大人びて見えた。


「綺麗だよ、内田さん」


「フフフ、ありがとう神崎君。ねえ、これで私たち、本当の仲間だよね。全部見せちゃっただんから、責任取ってよね」


 そう言う木蓮の笑顔が真一には眩しく見えた。

 思い切って全部見せた、と言うわりに、どこかまだ恥ずかしそうに身体を捻る仕草が、なんだかエロいと感じられるし、そもそも女性の裸を真一は人生で初めて見たのだから。

 木蓮の身体は、少し細目で、それでいて意外とバストやヒップのラインが美しく突出していた。

 困ったもので、真一の方はもう男性の性が臨界に達してしまい、前屈みになっていた。

 ところが優の方を見ると、あれれ? いつもと一緒である。


「あー、真一君ってば、私の身体を見て興奮してくれたの? ありがとう、それって、私を生き物目線で異性として見てくれたんだよね」


 そりゃそうです! 異性です、異性の中の異性ですー!!! と真一は思いつつ、一切の変化を見せない優の・・・・それはそれで、逆に失礼ではないかとさえ思えた。


「そっか、優君は、私じゃダメなんだね・・・・もしかしてだけど・・やっぱり真一君じゃなきゃ、ダメなのかな?」


 笑いなが興味津々に聞く木蓮に、苦笑いで返す優。真一は木蓮の言っていることがよく解らなかった。

 それでも優は、「そんな事ないよ、緊張しているだけ」といい、木蓮に笑顔を返した。


「ねえ、これからは私の事を木蓮って呼んでよ。私も優君と真一君って名前で呼ぶから」


「どうして?」


「だって、私たち、本当の同志になったんだから」


 そして、木蓮は、男子二人の手を取り、三人で輪になると誓を立てた。

 それは、彼女にとって初めての親友であり同士である。

 真一は、男女が裸で手を取り合うこの状況がもう・・・・精一杯で、それどころでは無かった。

 一人前屈みの真一と、ニコニコしている優、そんな二人に挟まれて、恥ずかしそうにしながら満面の笑みを浮かべる木蓮は今、最高の気分であった。

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