第12話 危険な因子

 拳大の大きさで、明らかに金属で出来たその物体は、とても危険な香りがしていた。

 手榴弾・・初めて見るが、一般的なパイナップル状の物とは少し形が違う。

 

「手榴弾なんて、どうしたんだよ、それ」


「うん、この屋敷の地下にね、結構あるんだ。手榴弾だけじゃない、他にも地雷やら砲弾やら」


「それって、警察に届けた方がいいんじゃないか? なんなら自衛隊の爆弾処理班みたいなところろか」


「真一、どうしてこの屋敷にこれほど物騒なものがあるのか、不思議じゃない?」


「いや、もう全部不思議だよ! お前、本当に何か知らないのか?」


「僕だって解らない事だらけだよ。だからね、色々検証しなきゃいけない。どうして僕たち二人だけに、この現象が起こったのか、とかね」


 たしかにそうだ。

 人類全体に起こった現象であれば、世間はもっと大騒ぎする。

 今のところ、ここにいる二人にしか、この巨大化現象は起こっていない。

 だから、その巨大化の発生原因と、その範囲を早急に調べる必要がある、優はそう思っていた。


「それで、その手榴弾で何を調べるんだよ」


「さっき真一は、蝋燭の火に手を当てたね。それであれくらい大きくなる、それは火災の火でも、身体を大きくする機能があるってことだよね。でも思い出してみて、僕たちが巨人化した時、僕は真一よりももっと大きくなっていた、それはどうして?」


「そりゃ・・・・優の方が巨大化の・・・・才能があるとか?」


「なんだよ巨大化の才能って・・あんまり嬉しくないよ、それ。僕はね、こう考えている。この間の爆発の時、その爆発の威力を大きく受けた方が、より大きくなるんじゃないかって」


「・・・・まさかと思うけど、お前、その手榴弾を爆発させようと・・してねえよな」


「そうだよ、そのまさかだよ」


「やめろって! 死んじまうよ、な、考えなおせって!」


「いずれにしても、ここではやらないよ」


「そういう事言ってんじゃねえって!」


「でも、早く調べる必要があるよ」


「どうして?」


「・・・・だって、この能力を持っているのが、本当に僕たち二人だって保証は無いんだから」


「・・・・お前」


 真一は、優が自分よりも冷静に、そして深く物事をとらえていることに、ただ驚いた・・・・さっきまであんなに天然なヤツだったのに。

 それでも、優の言う通りだ。

 この間は、ただ大きくなっただけだったが、あれを自由にコントロール出来て、それが自分たち以外の人間にも作用するとしたら、この力を早く制御出来た人間が最終的に勝つという事になる。もちろん逆も然りで、別の人間がこの力を自由にコントロールしてしまえば、巨大化した人間が街を崩壊させかねない。

 それは、あらゆるテロを含めて、極めて危険な因子である。

 

「大丈夫、これは僕だけで背負うから。真一は見ていて」


「ダメだ! お前だけにそんな事させられっかよ!」


「・・・・大丈夫だから、きっと」


「きっとでやるなよ! そんな危ない事!」


「証人が要る、でも内田さんは帰ってしまった。だから、ここには真一しかいない。もし失敗したら、君は別の方法を模索してほしい」


「お前、いい加減にしないと、殴るぞ!」


 真一は本気で怒っていた。それは、自身の保身のためではない。親友の危険なこのゲームを止めさせたいという気持ちからである。

 しかし、優は真一の想いとは裏腹に、手榴弾を持って走り出した。


「優!」


 真一は、とても嫌な予感がしていた。

 恐らく優は、屋内では爆発によって損害が出ることを恐れて、外でそれを実行しようとしている。

 だから、優よりも早く自分は外に出る必要があるのだと。

 真一は走った、とにかく全力で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る