世界を救った青い衝撃 ~ ただ大きくなるだけの人ヒーロー ~

独立国家の作り方

ブルーインパルス

第1話 ヒーロー

「もう、頭をあげてください、先島さきしま2佐にさ


 ブルーインパルスの飛行隊長、先島2佐は、今深々と頭を下げ、感謝の気持ちを伝えようとしていた。

 宮城県は東松島に、航空自衛隊松島基地が所在する。

 ここは、ブルーインパルスで有名な「第11飛行隊」の基地として知名度は高い。

 そんな基地の一角に、華々しい曲芸飛行チームとはおおよそ無縁のように思われる整備隊があった。

 それが「第4航空団 整備補給群整備隊」である。

 ここの整備隊長をしている十文字 真一じゅうもんじ しんいちは、見た目はどこにでも居そうな典型的な中年男性と言える。

 そんな50歳を目前にした十文字隊長の元に、まさに航空自衛隊のアイドル集団のトップ、ブルーインパルスの飛行隊長が訪れていたのである。


「いえ、十文字2佐にさ(2等空佐)、私は・・・・私は・・」


 その飛行隊長は、この冴えない中年男、十文字2佐に頭を下げ、その瞳には一杯の涙で溢れていた。


「・・・・先島2佐、あなたは防大(防衛大学校)出身のエリートだ。将来の空自を背負って立つお人、私みたいな階級だけ先行したおっさんに、どうか頭なんて下げないでくださいよ」


「あなたの、その英雄的行為を、国民は誰も知らない。私にはそれが悔しくて・・」


 十文字は、そんな温かい言葉をもらってもなお、複雑な表情を浮かべていた。

 飛行隊長の先島2佐と、この冴えない中年男十文字2佐は、自衛隊が初対面ではなかった。

 先島2佐がまだ中学生の頃、この二人は偶然に出会っていたのである。


「さ、今日は飛行隊長の見送りの日、花道じゃないですか。私もこうして先島2佐と同じ基地で勤務出来て、本当に嬉しかった」


「十文字さん・・」


 先島はそうつぶやくと、十文字の手を強く握りしめ、何度も頷いた。


「特別整備隊に何かあれば、私はいつでも飛んできますから! 絶対ですよ」


「ああ、ありがとう。先島君も、お元気で」


 周囲の目は、異様である。

 そもそも、この「特別整備隊」などと言う部署は、正式な編制としてどこにも記録が無いのである。

 基地の、本当に隅に追いやられたこの部署には、空自の整備関係者だけではなく、あらゆる職種職域から故障者を集めた秘密の部署である。

 要するに、手の付けられない暴れん坊や、クセの強い隊員、メンタルが落ちてリハビリが必要な人間が集められ、作業が忙しい部署へ手伝いを回すような、基地の「なんでも屋」的な扱いを受けている。

 そんな謎の組織の隊長が2等空佐である事も、この基地の謎の一つである。

 2等空佐・・軍隊で言うところの中佐である。

 軍隊では将軍の下に大佐、中佐、少佐と続くが、まさにこの2佐と言う階級は、佐官クラスの上からに2番目と言う高さである。

 

 そしてこの 十文字 真一には絶対の秘密がある。


 それは組織内では公然とされるものの、人々の記憶からはもう忘れ去られようとしている。

 十文字に、先島と初めて出会った時の記憶が鮮明に蘇る。

 先島は、彼の足元で泣きながら震える当時まだ少年と呼べる年齢であった。

 

 破壊された町、火の手が人々を襲う中、彼はそこに居たのである。

 十文字はそれを見つけ、そっと自分の足元に居た小さい彼を手で拾い上げると、火災の収まった地域へと運んだ。


「お願いします、母が、まだ母が家の中に!」


 少年は、自分の危険よりも、猛火に焼かれる母の事が心配であった。

 十文字は、その一言を聞いて、すぐさま元の場所に目をやると、彼の家であろう建物は火災で激しく燃えていた。

 それでも、家の屋根を手で払いのけ、中で倒れていた母親を上から摘まみ上げると、少年と同じ場所へと運び、去っていったのである。

 

「お兄さん、ありがとうございました! あなたは僕の、生涯のヒーローです! この御恩は、この御恩は絶対に忘れません! 本当に、本当にどうもありがとうございました!」


 絞り出すように叫ぶ少年は、その異様な巨体の正体が人間であることを理解した。

 体長50mはあったろうか。


 そう、彼は今、巨人によって助られたのである。

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