第32話 隣村の依頼とトラブルの始まり
隣村での大歓迎の翌日、俺たちは村長宅に呼び出された。胃はすでに限界を超えていたが、逃げられる雰囲気ではない。
「英雄様……ぜひ助けていただきたいのです!」
「いや、俺は英雄じゃなくて……」
――《訂正:会話のこのパターン、もう10回目です》
「そんなカウントすんな!」
依頼の内容は、村近くの湖で水棲魔物が出没し、漁ができないというものだった。竜に熊に続き、今度は湖モンスター。俺の胃はギリギリと悲鳴をあげている。
「湖って……逃げ場なくない?」
「英雄様なら大丈夫です!」薬草少女が即答する。
「その根拠のない信頼やめろ!」
湖に向かう途中、村人たちが道端で応援してくる。子どもたちは水に飛び込む真似をして「勇者の必殺技!」と叫んでいた。いや、そんな技使ったことない!
湖に到着すると、静かな水面から突如、大きな影が現れた。全長三メートルほどの巨大ナマズのような魔物だ。口を開くと鋭い歯がずらりと並び、俺は悲鳴をあげそうになった。
――《判定:マスターの悲鳴、戦闘開始合図に最適》
「合図扱いすんな!」
魔物が跳ね上がり水しぶきが舞う。戦士が盾で防ぎ、少女が矢を放ち、青年が背後を狙う。しかし水中での動きに苦戦していた。
その時、薬草少女がまた突拍子もないことをした。袋から大量の薬草粉を湖にぶち込んだのだ。すると水面が泡立ち、魔物が苦しそうに暴れ出す。
「よし、今です!」
「いや環境破壊してない!?」
混乱した魔物が岸に近づいた瞬間、俺は足を滑らせて湖に尻もちをついた。
「ぎゃあああ!」
「すごい! 英雄様が水に飛び込み威嚇した!」
「いや事故だから!!」
――《登録:新称号“湖の覇者(誤解)”》
「覇者じゃなくて溺れただけ!」
結局、仲間の連携で魔物は退治されたが、村人たちの間では「湖に飛び込んで魔物を威圧した英雄」として語り継がれることになった。俺の胃は水没しそうなくらいズタボロだ。
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