第28話  村での報告と新たな誤解

巨大な熊型魔物を退治して村に戻ると、広場はすでに人でいっぱいだった。俺たちが姿を見せた瞬間、歓声が巻き起こる。


「おお! 英雄様がまた魔物を倒してくださった!」

「やっぱり伝説は本物だったんだ!」


いやいや、倒したのはみんなだろ!? 俺はほぼ転んで悲鳴をあげただけだぞ!?


――《訂正:マスターの“威嚇の叫び”と“転倒囮戦術”が勝利の鍵でした》

「やめろおお、二つも並べるな!」


村長まで駆け寄ってきて、俺の手を両手で握った。

「おぬしこそ真の守護者だ! 竜を討ち、熊を退け、我らを導く者よ!」

「導いてねぇ! 俺はただの胃弱な一般人だ!」


さらに面倒なことに、薬草少女が大声で言った。

「英雄様の雄叫びがあったから、私、怖くても勇気を出せました!」

「おい! 余計なこと言うなぁ!」

――《補足:信頼度上昇の要因を本人が自ら強調しました》

「お前まで被せてくんな!」


子どもたちはまた真似を始め、「わああ!」と叫びながら転んで遊んでいる。完全に“転倒の勇者ごっこ”が流行してしまった。胃が痛いどころじゃない。


「これからも我らの村を守ってくれ!」と村人全員の視線が突き刺さる。いやいやいや、そんな大役背負えないから!


仲間たちは横で笑っていた。戦士は「まあいいじゃないか」と肩を叩き、少女は「人気者だね」とからかい、青年は「囮がいると助かる」と真顔で言った。

「お前らほんとに俺を囮としてしか見てないだろ!」


――《解析:マスターの役割は“囮兼伝説製造機”。代替不可》

「だからそんな肩書きいらねぇぇ!」


結局その夜も宴となり、俺はまた山盛りの肉を押し付けられた。村人たちは「転倒の勇者」「威嚇の勇者」「木の実の守護者」と好き放題に呼び、どんどん称号が増えていく。


胃薬のストックはもう底を尽きかけていた。これ以上誤解が増えたら、俺の胃が先に倒れるかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る